Active-T ”Patient-Centricity”の実装を検討する分科会設置 企業活動のジレンマや定義など1年かけ議論
公開日時 2026/02/16 04:52

武田薬品OBが立ち上げた会員制ビジネスコミュニティ「Active-T」は2月14日の定期総会で、「Patient-Centricityの実装を検討する分科会」の設置を発表した。分科会長にはアステラス製薬出身の鈴木幸也氏(メッドビーストラット代表取締役社長)が就任。患者の医療ニーズが多様化する中で、製薬・ヘルスケア産業界としてのPatient-Centricityの立ち位置やジレンマ、経営者と社員のコミットメントなどをテーマに、今後1年をかけて議論し、ホワイトペーパーを作成する。分科会のメンバーは、武田薬品、アステラス製薬のMR・マーケティング経験者、外資系企業のメディカル・マーケットアクセス経験者、そしてビジネスインサイトの専門家の計6人で構成され、毎月1回程度の頻度で分科会を開催する。
「患者さんを中心に据えること。それは誰もが賛成する理念でありながら、現場では多くのジレンマを抱えている」―。この日の定期総会では、新たに発足する分科会メンバー6氏によるパネルディスカッションが開催された。
◎鈴木分科会長 「売上と患者」、「開発と患者」をどう繋げれば良いか議論したい
分科会発足を提起した鈴木幸也氏は、「Patient-Centricityはもはやバズワードだ。知らない人がいないくらいの言葉だが、定義がズレているように感じる」と指摘。製薬会社の業務に落とし込むにしても、「売上と患者」、「開発と患者」をどう繋げれば良いかを一度議論する必要があるのではないかと問題提起した。
◎縣直樹氏 「科学の価値と患者さんの人生の価値をつないでいく」
ファイザーなど外資系企業でメディカル部門等を経験し、分科会メンバーとなった縣直樹氏(メッドビーストラット取締役副社長)は、「世に出した医薬品が必要とする医師や患者さんに正しく認識されないというのは、製薬側の怠慢であって罪ではないか」と指摘。「我々の最終的なゴールは薬事承認を得ることだけでなく、患者さんに医薬品が届き、人生を支える治療薬になることだ」との見解を披露した。さらに、患者に届ける医薬品情報については、「患者さんの不安や希望に寄り添う言葉に翻訳がきちんとなされていない」と述べ、「科学の価値と患者さんの人生の価値をつないでいくことを皆さんと一緒に考えていきたい」と今後の議論に期待を寄せた。
◎吉田順氏 Patient-Centricityの”ジレンマ”「伝え方を間違うと(医師の)取り方が違う」

武田薬品でMRやマーケティングを経験して分科会メンバーとなった吉田順氏(一般社団法人横浜在宅医療推進会理事)は、Patient-Centricityの実装における”ジレンマ”に言及。自身の経験から、「製品の分かりやすさを出すために、このメッセージで医師に伝えてきてくださいとMRにお願いしてきたが、果たして全ての患者さんにあてはまるだろうかと感じた」と振り返った。一方、医師への副作用情報の提供について、「(情報の)伝え方を間違うと(医師の)取り方が違う」と指摘。「医師同士で情報が伝わってしまうと信用度にも影響する」と語り、製薬企業としての立ち位置にジレンマを感じたと明かしてくれた。さらに、医師側が抱く興味と患者との関係にもジレンマを感じたと紹介した。
◎山本藍子氏 「患者さんの治療に貢献することが使命だと腑に落ちた。目から鱗が落ちた」
アステラス製薬でマーケティング等を経験して分科会メンバーとなった山本藍子氏(A-CONNEX代表取締役)は、「薬を売ることが自分の仕事だと思っていたが、その後、勤めた外資系企業で“ペーシェント・フォーカス”という言葉に出会い、患者さんの治療に貢献することが使命だと腑に落ちた。目から鱗が落ちた」と回顧。一方で、事業評価する中で希少がんや小児疾患の薬剤開発を断念する場面を経験したことや、逆に「(患者さんに)ここまでするのか」と思うような“Patient-Centricity過ぎる”ことも経験したと語り、ジレンマを感じることもあったと振り返った。
◎西川勇人氏 「現在進行形で起こっていることであり、いま課題感を持っている」
武田薬品で営業・マーケティング等を経験して分科会メンバーとなった西川勇人氏(Lifescan Japan代表取締役社長)は、自身が経験した製品回収や出荷停止を踏まえ、「本当に必要とされている患者さんや医療者に製品が届かないことによる問題について身をもって感じた」と述べた。その上で、「当時は報告書を全て読んで、何が原因で再発防止をどうするか経営層に報告した」と説明。これまでの活動を振り返りながら、「MRとして行ってきたプロモーション活動に加えて、一つひとつの製品のサプライチェーンを考え、届け切ることの重要性を再認識する機会になった。この問題は現在進行形で起こっていることであり、いま課題感を持っている」と語ってくれた。
◎佐々木岳氏 「理念で言葉にするだけではなく、実践として現場に下ろし実装する」

ビジネスインサイトの専門家として分科会メンバーとなった佐々木岳氏(シードプランニング専務執行役員)は、Patient-Centricityについて経営者は、「理念で言葉にするだけではなくて、それを実践として、現場に下ろして実装していくことが重要だ」と強調した。一方でマーケティングの立場でみると、「こうすれば、もっと患者さんのアドヒアランスが高まる。もっと良いアウトカムにつながっていくという発想を持つことがある」としながらも、「社内では、マーケティングはマーケティング、メディカルはメディカルというように、それぞれの組織の温度感でやってしまうことがあるので、やはりトップのコミットメントがないと組織の中でPatient-Centricityを実装していくことは出来ないのではないか」と述べた。