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【AHAリポート】SATURN試験 ロスバスタチンがプラーク退縮で優れる傾向示す

公開日時 2011/11/16 08:00

 

症候性冠動脈疾患患者を対象に、ロスバスタチンとアトルバスタチンの最高用量を用いた積極的な脂質低下療法を行ったところ、主要評価項目のプラーク体積率(PAV)では、両群間に有意差はみられなかったものの、両群とも減少を示し、副次評価項目の総プラーク体積(TAV)ではロスバスタチン群で有意に低下することが分かった。臨床現場で汎用されるスタチンの最高用量を用いて効果・安全性を直接比較した初めての大規模臨床試験「SATURN(Study of Coronary Atheroma by Intravascular Ultrasound : Effect of Rosuvastatin Versus Atrovastatin)」試験の結果から分かった。Cleveland Clinic Heart & Vascular InstituteのStephen J Nicholls氏が、米国・オーランドで開催されている米国心臓協会年次学術集会(AHA)2011で、11月15日に開かれた「Late-Breaking Clinical Trials」セッションで報告した。(11月15日 米国・オーランド発 望月英梨)


これまでに実施された大規模臨床試験の結果から、スタチンが心血管イベントの発生の減少に寄与することは、一貫して示されている。さらに、冠動脈血管内超音波(IVUS)をはじめとした画像診断に基づいた研究により、LDL-Cを低下し、HDLを上昇させるスタチンの効果が、プラーク容積に影響を与え、結果として動脈硬化の進展を抑制する可能性も示唆されており、今回に試験実施に至った。


試験は、症候性冠動脈疾患患者における、IVUSで測定した冠動脈プラークに対する効果をロスバスタチン40mgとアトルバスタチン80mg投与で比較することを目的に実施された。


対象は、冠動脈造影で1つ以上の血管で20%以上の狭窄がみられ、標的血管に50%以下の狭窄がみられた症候性の冠動脈疾患を有する18~75歳の高コレステロール患者とした。LDL-C値は登録前4週間以内にスタチンによる治療を受けていない患者は、LDL-C値100mg/dL以上、治療を受けている患者は80mg/dL以上を登録基準とした。北米、欧州、南アメリカ、オーストラリアの208施設から患者登録がなされた。試験期間は、2008年1月22日~2009年6月12日まで。


登録患者は、副作用とコンプライアンスを確認するために、最高用量の半量であるロスバスタチン20mg、アトルバスタチン40mgの2群にランダムに割り付け、LDL-C値116mg/日未満を目指した予備治療を2週間実施。その上で、①ロスバスタチン40mg投与群694例②アトルバスタチン80mg投与群691例――の2群にランダムに割り付け、104週間治療を実施した。試験期間中の脱落またはIVUSによる評価を継続できなかった症例は346例(25%)を除き、アトルバスタチン群519例、ロスバスタチン群520例を解析対象とした。


主要評価項目は、冠動脈血管内超音波(IVUS)を用いて評価した、長さ40mm以上の標的血管におけるPAVの変化。副次評価項目は、▽標的血管における総プラーク体積(TAV)の変化▽試験期間中の脂質、リポ蛋白値▽安全性及び忍容性。


患者背景は、年齢、合併症などで両群間に大きな差はみられなかった。スタチンの使用歴がアトルバスタチン群で61.5%(319例)、ロスバスタチン群で58.3%(303例)だった。その他、併用薬として抗血小板薬が約9割、β遮断薬が約6割だった。


◎ロスバスタチン投与でLDL-C値の有意な低下とHDL-C値の有意な上昇示す


治療開始から104週後のLDL-C値はアトルバスタチン群の70.2mg/dLに対し、ロスバスタチン群は62.6mg/dLで、ロスバスタチン群で有意に低い結果となった(p<0.001)。一方、HDL-C値は、アトルバスタチン群の48.6mg/dLに対し、ロスバスタチン群は50.4mg/dLで、にロスバスタチン群で有意高い結果となった(p=0.01)。そのほか、、LDL/HDL比は1.5、1.3(p<0.01)で、ロスバスタチン群で有意に低い結果となった。


◎ロスバスタチン群でTAVは有意に退縮


その結果、主要評価項目のPAVは、アトルバスタチン群で-0.99%[95%CI:-1.19~-0.63]、ロスバスタチン群では、-1.22%[-1.52~-0.90]で、いずれもベースライン時に比べ、有意にプラークの退縮がみられた(それぞれ、p<0.001)。ロスバスタチン群で大きく退縮する傾向がみられたものの、2群間に有意な差はみられなかった(p=0.17)。


一方、副次評価項目のTAVについては、アトルバスタチン群で-4.42mm3[-5.98~-3.26]に対し、ロスバスタチン群では-6.39mm3でいずれも、ベースライン時に比べ有意に減少し(それぞれ、p=0.01、p<0.001)、ロスバスタチン群で有意なプラークの退縮がみられた(p=0.01)。


プラークの退縮がみられた患者は、PAVを指標にみると、アトルバスタチン群で63.2%、ロスバスタチン群では68.5%で有意差はないものの、ロスバスタチン群で高い傾向がみられた(p=0.07)。一方、TAVを指標とすると、アトルバスタチン群の64.7%、ロスバスタチン群の71.3%で、有意にロスバスタチン群で高い結果となった(p=0.02)。安全性については、両群ともに有害事象の頻度は低かった。


◎Nicholls氏「これまでの臨床試験と一貫した結果」


結果を報告したNicholls氏は、同試験の結果を、LDL-C値が低下するにつれ、PAVが低下することが示された「これまでの臨床試験の結果と非常に一貫している結果」と評価した。


その上で、同試験がこれまでの大規模臨床試験の中で最も低いLDL-C値であることを紹介。さらに、結果でみられたプラークの退縮率、退縮体積は「前例がない」と述べ、「最適なLDL-CとHDL-Cに到達できる、最大用量のスタチン治療は、忍容性が高く、積極的なプラークの退縮を促進させる」と有効性を強調した。
ただし、1/3の患者にプラークの進展がみられたことから、アテローム血栓性動脈硬化症に対する追加治療を構築することが必要との認識も示した。
 

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