〈EPVS〉small vessel disease発症の指標となる可能性示唆
公開日時 2012/08/01 04:00
SPS3サブ解析の結果から
頭部MRI所見で認められる所見の1つである、“Enlarged Perivascular Spaces(EPVS)”。加齢に伴って起きる正常な脳の変化と言われてきたが、small vessel diseaseの指標となる可能性も示唆されている。カナダ・University of British Columbia(現・岩手医科大学助教)の大庭英樹氏がThe Secondary Prevention of Small Subcortical Stroke(SPS3)試験(NIH/NINDS #U01 NS38529-04A1, www.clinicaltrials.gov)のサブ解析の結果から、EPVSの臨床的意義を紹介する。EPVSに着目した、数千例の規模のラクナ梗塞 の画像解析は、同解析が初めてという。
EPVSは、一般的にMRIで認められる所見だ(写真参照)。EPVSは、加齢に伴って増加することが知られているほか、ラクナ梗塞、認知機能障 害、脳深部白質病変、CADASILとの関連性が指摘されている。一方、病理学やその病態の重要性は十分わかっていないものの、small vessel diseaseの危険因子となる可能性が指摘されている。
大庭氏らの研究グループは、SPS3試験の患者群を対象に、EPVSと、脳卒中危険因子、認知機能、頭部MRI所見との関連性を明らかにすることを目的に解析を実施した。EPVSの評価は、大脳基底核と半卵円中心におけるT2強調画像により、EPVSの数をスコア化した(表参照)。
大脳基底核 EPVSの数は高齢、高血圧、複数の梗塞と関連
対象は、北米サイトに登録された1632例のうち、MRIにてT2強調画像が有用であった1172例。平均年齢は62歳、男性は57%だった。基礎疾患 は、糖尿病が31%、高血圧症が79%、虚血性心疾患が14%、脂質異常症が57%で、脳卒中の既往が10%だった。そのほか、MRI上多発性脳梗塞を認 めた症例は16%だった。
大脳基底核と半卵円中心のEPVSの数を比較すると、半卵円中心で有意に多かった(p<0.0001)。
大脳基底核、半卵円中心、それぞれについて、EPVSのスコアと危険因子の関連を検討したところ、大脳基底核では加齢(p<0.001)、高血圧症の合併 p<0.001)、虚血性心疾患の既往(p=0.05)、症候性脳梗塞の既往(p=0.05)、腎機能障害(p<0.001)が有意な関連を認めた。
一方、半卵円中心については、加齢(p<0.001)、高血圧症の合併(p=0.05)、腎機能障害(p=0.01)が有意な関連を認めた。
大庭氏「EPVSの危険因子はラクナ梗塞と似通っている」
MRI所見とEPVSのスコアの関連について検討したところ、大脳基底核、半卵円中心ともに大脳白質病変の評価法である「ARWMC(Age Related White Matter Changesスコア)」(p<0.001、<0.001)、「Fazekasスコア」(p<0.001、<0.001)ともに有意な関連を認めた。ま た、多発性脳梗塞の有無に関しても有意な関連を認めた(p<0.001、=0.003)。
多変量解析の結果では、大脳基底核において、加齢(オッズ比(OR):1.9、95%CI:1.7-2.1)、高血圧症(OR:1.7、 1.2-2.3)、多発性脳梗塞(OR:2.4、1.7-3.4)が独立した危険因子であった。一方、半卵円中心では、加齢(OR:1.5、 1.3-1.6)のみが独立した危険因子だった。
認知機能障害の程度とEPVSの数には、大脳基底核、半卵円中心ともに、有意な相関はみられなかった(p=0.2、0.5)。
これらの結果から大庭氏は、「大脳基底核のEPVSは、半卵円中心のEPVSと比較し、より多くの脳梗塞の危険因子と関連している」と説明。一方で、認知 症との関連性も指摘されていたが、「認知機能との関連はみられなかった」と述べた。その上で、「EPVSは、ラクナ梗塞と似通った危険因子を持っているこ とから、small vessel diseaseの指標となる可能性がある」との考えを示した。