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【ESC特別版】東日本大震災後の心血管疾患 発生率に疾患特有の変動パターン明らかに

公開日時 2012/08/30 12:31

 昨年3月11日に発生した東日本大震災による、短・中期的な心血管疾患(CVD)発生率への影響をレトロスペクティブ(後ろ向き)に調査した結果、脳梗塞の発生率は有意に上昇していたのに対し、頭蓋内出血の発生率に変動がみられないなど、疾患により、独特のパターンがあることも明らかになった。8月25~29日の日程で、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会議(ESC)2012のHOT LINEセッションで、東北大学の下川宏明氏が28日に報告した。(医学ライター・森永知美)下川宏明氏


これまでもノースリッジ地震や阪神・淡路大震災を含め、地震と心血管疾患との関連性を検討した研究結果が報告されてきたが、いずれも特定のCVD疾患に注目し、追跡期間や地域が限定されていた。大規模人口をベースに、主要なCVD全てに対する影響を長期的に追跡したデータはこれまでになかった。


研究グループは、地震発生から4週間前の2月11日から、発生から11週間後の6月30日までの計15週間について、宮城県の消防署12カ所で発生した2008~11年までの救急搬送記録、12万4152件を解析した。これらの消防署では、救急施設のある病院57カ所に患者を搬送する。全ての病院に常勤の医師が勤務し、37カ所(67%)には常勤の心臓専門医が勤務している。


心不全(HF)と急性冠症候群(ACS)、脳卒中、心肺停止の心血管疾患と肺炎の5疾患について調査した。年齢(75歳以上 vs 75歳未満)と、性別、居住地域(沿岸部 vs 内陸部)によるサブグループ解析も行った。なお、2011年の救急治療室での診断率を調べた結果、2008年~10年までの割合と同等であることが確認されている(2008年:56.7%、2009年:56.6%、2010年:56.2%、2011年:55.5%)。


◎下川氏 塩分の高い食生活、ストレスが心血管疾患増加に影響


解析の結果、震災直後の週次発生率は、過去3年間と比べ、全ての対象疾患で有意に増加していたことが分かった。また発生率の変動には、主に①HF、肺炎②脳卒中、心肺停止③ACS――を代表とする3種類の変動パターンがあることも判明した。


まず、HFと肺炎に見られた変動パターンは、震災直後に急激に上昇した後、ゆっくりと前年の水準に戻る。特に肺炎では前年のレベルに戻るまでに3カ月かかっていた。次に、脳卒中と心肺停止は急激に上昇した後、すぐに減少するが、震災後最大の余震が起こった時期に再度急激に上昇していた。最後にACSは、震災直後に急激に上昇し、その後急激に減少していき、3カ月目では過去3年間と比べて有意に低くなっていた。


震災前後2週間の毎日の発生率は、ACSを除く全ての疾患項目において、震災直後は過去3年間と比べて有意に上昇していた。脳卒中の発生率について、脳梗塞と頭蓋内出血とに分けてサブグループ解析したところ、脳梗塞の発生率は、震災直後と最大余震直後に有意に上昇していたのに対し、頭蓋内出血の発生率の変動は過去3年間と変わらず、有意な変化はなかった。


サブグループ解析の結果、肺炎を除いた全ての疾患の発生率が、年齢や性別、居住地域に関係なく上昇していた。肺炎は、沿岸地域の居住者で有意なリスク上昇が見られ(オッズ比(OR):1.54、95% CI: 1.06 – 2.26、p=0.023)、津波の影響がみられた。


下川氏は、日本では地震に備えた医療体制を整えてきたが、今回の震災は予想を大きく上回るものだったと説明。「医療品や生鮮食品が不足する事態に陥り、塩分の高い食生活を送らざるを得なくなった結果、高血圧や血栓症を招くことになった」と説明した。また、「身体的、精神的ストレスが交感神経系やレニン・アンギオテンシン系での活性を引き起こし、その結果、高血圧や血栓症、不整脈を招くことになり、心血管疾患の増加に繋がったのではないか」と考察した。


 

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