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地域医療連携推進法人 相次ぐ“断念” 政省令に不満の声も

公開日時 2017/04/03 03:51

4月2日から施行された“地域医療連携推進法人”だが、当初設立を目指していた医療機関が相次いで断念し、滑り出しとしては暗雲が立ち込めたものとなった。当初から名乗りをあげていた董仙会 恵寿総合病院(石川県七尾市)がこの日までに、地域医療連携推進法人を申請しないことを決めた。社会医療法人博愛会相良病院(鹿児島県鹿児島市)と医療法人真栄会にいむら病院(鹿児島市)で構成する“ヘルスケアパートナーズネットワーク”も3月31日付で、申請を取り下げた。当初、地域医療連携推進法人第1号となると見られていた岡山大学病院を中心とした岡山大学メディカルセンター構想(岡山県岡山市)も、現段階では申請までこぎ着けず、検討を継続するとしている。


地域医療連携推進法人は、原則二次医療圏で、複数の医療法人と社会福祉法人など非営利法人をグループ化。ホールディングカンパニーのように複数の医療機関や社会福祉法人が傘下となる。これまで、医療は手厚い医療や看護、医療機器の充実、患者アメニティーの向上などで患者の奪い合いを演じてきた。いわば、ライバル病院として、競争の中で発展してきたと言える。しかし、高齢化のピークと人口減少がほぼ同時期にやってくる地方都市などでは、病院経営は大きな転換期を迎えている。患者数の減少が病院経営を直撃する中で、厚労省も“競争から協調へ”の流れを打ち出した。推進法人は、地域で協調をうながし、地域医療構想を実現する一つの選択肢として期待されている。推進法人内では、病床再編や医師の共同研修、医薬品の共同購入、参加法人への資金貸付などが行える。

岡山大学メディカルセンター構想は、岡山大学病院(850床)、岡山市民病院(400床)、岡山労災病院(358床)、岡山赤十字病院(500床)、岡山済生会総合病院(553床)、岡山医療センター(609床)の大規模病院6施設が医療教育や臨床研究、情報連携から連携を構築。将来的には大規模かつ質の高い医療・研究・教育事業体の構築を目指している。また、岡山市を医療産業都市にする一つの核としたい考えだ。当初から推進法人設立を宣言し、地域医療連携推進法人第一号にも名乗りをあげていたが、本誌取材に対し、岡山大学病院は、この日までに「他の医療機関から参加の返事が得られていない」と説明。いずれも本部をもつ大病院であることから、調整が難航しているとした。今後の設立時期も「可能な限り努力はするが、設立時期は未定」としている。


鹿児島市の相良病院(81床)とにいむら病院(40床)で構成する“ヘルスケアパートナーズネットワーク”はすでに、業務提携を結び、高額医療機器の共同利用や薬剤の共同購入などの取組を開始している。しかし、3月31日付で、「地域医療連携推進法人との方向性が当グループと合わず、申請を取り下げさせていただいた」との文面を公表している。


医療現場からは、具体的な運用を示した政省令への不満の声もあがっている。推進法人では、参加法人の代表者で構成される社員総会で決議を行うことになるが、“一社員一議決権”とされたことで、病院の規模や経営状況が加味されずに、参加医療法人が一律に同等となってしまうことで、リーダーシップを発揮することが難しくなる。加えて、推進法人内への出入りが自由であることや、余剰金の配当禁止なども一つのハードルとなっているという。


2016年4月実施の診療報酬改定では、急性期病院の入院患者について、重症度や在宅復帰率などを評価した。急性期病院の場合、安定経営のためには病床利用率を8割程度でキープすることが求められる。倒産する病院も出始める中で、M&Aをはじめとした医療機関の統合・再編の動きや、地域医療連携推進法人を取らない緩やかなパートナーシップ、さらには社会福祉法人への転換など異なる選択肢もある。地域医療連携推進法人の選択肢をとらずとも、地域医療のネットワーク化の流れは今後さらに加速することが予想される。
 

 

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