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臨床第1相で被験者が飛び降り死亡 エーザイ治験薬との「因果関係否定できない」 類薬の副作用に自殺企図

公開日時 2019/12/02 04:52
エーザイが抗てんかん作用を期待していた「E2082」の臨床第1相試験で20代の健常人男性が死亡した問題で、厚生労働省は11月29日、「因果関係は否定できない」とする報告書を公表した。被験者は治験終了後の今年6月、電柱から飛び降り、死亡した。治験薬の投与後、「幻覚・幻聴や不眠、異常行動」を訴えていた。類薬である同社のフィコンパ(一般名:ぺランパネル)に自殺企図の副作用があり、被験者は投与前に自殺リスクがなかったことなどから、因果関係を否定できないと判断した。一方、エーザイや、治験を実施した墨田病院に「GCP省令の規定からの重大な逸脱に該当する所見はなかった」としている。ただ、精神科医不在の体制だったことや、患者同意取得段階で文書を用いてリスクの説明を行っていなかったこともわかった。同省は、「より配慮を要する事項があった」として、近く文書で指導する方針。

◎被験者が退院後に症状を訴え

男性被験者は6月12~20日までの10日間、治験薬15mg/日の投与を受け、予定通り6月24日午前に退院した。しかし、被験者は同日の午後、再び来院する。この来院は規定外の自主的なものだった。報告書によると、顔色が青ざめ、酷く怯えた様子で、退院後帰宅したが不安感に襲われ再来院したと看護師に訴えた。入院中だった投与開始12日後(22日)から、幻視・幻聴、さらに翌日(23日)から不眠だったという。これら症状を伝えなかった理由については、「病院では様々な音が不快で、早く家に帰りたかった」などと答えたという。治験責任医師は被験者に心療内科の受診を勧めたが、頑なに拒否したとしている。治験責任医師は、幻視・幻聴を被験者が理路整然と説明するなど言動に異常がなく、眼振等の症状もなかったことから入院の必要はないと判断し、次回来院日を確認して帰宅させた。被験者はその翌日午前8時に電柱から飛び降り、死亡した。

◎うつや精神症状の既往歴なし 被験者の手記から混乱の様子が

その後の調査からは、治験薬の投与開始14日後の夜から15日にかけて記されたとみられる被験者の手記が発見された。それによると、治験投与を受けるまでうつになったことも精神症状もなかったが、「聞いたことのある音が脳内で複数重なり合う幻聴がある」、「他の形が漫画の一場面や絵画、キャラクターのロゴ等様々に見える」、「夜が来ても眠れない。体が眠っても意識が起きている感覚がある」、「自分は支離滅裂であり、壊れている感覚がある」、「自分がなくなる恐怖がある。殺してほしい」、「この状態なら自殺する」など、筆跡が乱れ、誤字も多く混乱した様子がうかがわれたという。また、診療録・看護録から、投与開始2日後から、眠気やめまいがあったこともわかっている。

一方で、事前に設定されていた既往歴はなく、スクリーニング時の自殺念慮・リスクも認められなかったという。

治験薬は、AMPA受容体に作用し、抗けいれん作用を発揮することが期待されていた。動物実験では、統合失調症や幻覚との関連を示唆する報告がある。また、同様の作用機序を有するフィコンパでは、精神神経系の副作用(不動性めまい、傾眠等)、自殺企図などの副作用が注意喚起されている。報告書ではこれらを踏まえ、「本薬と幻視・幻聴、不眠及び異常行動の因果関係は否定できない」と結論付けた。

◎重大なGCP逸脱は認めず 精神科医不在、口頭でのリスク説明など課題も

治験実施医療機関は被験者が治験に参加する際の同意取得で、治験の概要や予測される副作用について情報提供していた。また、緊急搬送先やその手順を定めるなど、緊急時の措置も講じていた。治験依頼者側も、医療機関に多くの治験の実績があり、必要な検査の実施が可能なこと、治験責任医師に中枢神経系の第1相臨床試験を含めた実績があることなどを考慮していた。そのため、報告書では、治験実施医療機関・依頼者ともに、「GCP省令の規定からの重大な逸脱に該当する所見は認められなかった」とした。

一方で、被験者が再来院した際に、「速やかに精神科の医師による診察を受けさせることが適切であった」と指摘した。投与開始13日以降の診療録、12日以降の看護記録に全く記載がないことを問題視し、「被験者の状態を医療関係者が詳細に観察すべき」とした。さらに、精神科医が含まれていなかった体制面についても、治験薬のリスクを考慮し、精神科などの体制整備を整えることが適切であったことも指摘した。

また、類薬であるフィコンパで自殺企図の副作用があることについて同意取得説明文書に記載されておらず、中枢神経薬に一般的に自殺念慮のリスクがあることを口頭で説明していた。これに対し、報告書では
入院中に症状を訴えなかったことから、「同意取得時の説明において、リスクが高いことを十分に説明できていたのか疑問」と踏み込んだ。そのうえで、「文書を用いる等、十分な説明を行い、心身の変調が生じたら速やかに申告するよう被験者に求めることが適切であった」とした。

同省は、治験依頼者に対して開発初期の治験実施に際し、重大な転機につながる恐れのある有害事象について、治験実施医療機関に十分な説明を行い、被験者に文書での情報提供を行うよう医療機関に伝達することを求める。また、有害事象に対応可能な医師などが治験に参加、もしくは連携体制で即時対応が可能であることを確認するなどの対応の必要性も指摘した。中枢神経症状を来たす可能性のある薬剤については精神科医や神経内科医を治験責任医師・分担医師に含め、家族などの関与も事前に検討することとした。治験実施医療機関に対しても同様に、被験者への文書での情報提供や、有害事象に対応する適切な連携体制の整備を求める。

この事例を踏まえ同省は、開発初期段階の治験について、治験を実施する医療機関・製薬企業に対して具体的な対応などを示す留意事項通知を近く発出する方針。

◎エーザイ 安全対策強化を進める

エーザイは同日付で、「調査結果報告を真摯に受け止め、臨床試験実施に際しての安全対策の強化を進める」とのコメントを発出した。最初に人へ投与する際の、治験実施計画の作成プロセス、臨床試験のモニタリング、臨床試験実施施設の体制整備の確認などの対策を講じるとしている。

なお、同剤をめぐっては、日米で臨床試験が実施されていたが、すでに投与は中止されており、これ以外の被験者全員の安全が確保されていることを確認しているという。

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