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【World Topics】民間主導の薬価抑制:JPMorgan余禄

公開日時 2020/01/23 04:51
JPMorgan2020が終了した。高級な順に満室となっていたホテルからも、満員御礼でも行列のできた人気レストランからも人波が引き、ふだんの10倍以上に撥ね上がっていたウーバーの料金も通常価格に戻った。

昨年のような大型M&Aの話題は聞かれなかったHealthcare Conference 2020 で、今年もっともホットな話題のひとつが大統領選挙戦で民主・共和両陣営の政策論争の焦点となると予想される薬価問題だ。

AARPが2019年9月にまとめた調査報告によると、一般に汎用されているジェネリック薬の小売価格は前年比で9.3%低下したが、ブランド薬の小売価格は8.3%上昇、特殊医薬品の小売価格は7%上昇。結果、全体として医薬品価格は4.2%上昇し、値上げ幅は同年のインフレ率の約2倍で、12年連続でインフレ率を超える上げ幅を記録した。(https://www.aarp.org/politics-society/advocacy/info-2019/prescription-drug-price-report.html)

高騰を続けるメディケアの医薬品コストは大きな社会問題となっており、連邦政府の最重要政策課題だ。薬価抑制政策が今年の大統領選挙、最大の争点のひとつとなることは間違いない。このままでは連邦政府が政策的統制手段を持って薬価引き下げに乗り出すことは確実とみられることから、薬価に対する政策統制などに警戒感を強める製薬企業や保険会社は民間主導のソリューション探しに懸命だ。

背景には、民間主導の薬価抑制ソリューションとして大いに期待されてきたPBM (Pharmacy Benefit Management)のベンチャー・ビジネス群が、医療保険大手に買収されることでビジネスモデルを変え、医薬品市場で果たすと期待された機能や役割を果たさなくなったという事実がある、と指摘されまた反省されている。

本来PBMには、患者データの分析などを駆使してペイヤー(保険者)に代わって医薬品の価格引き下げ交渉を行い、患者の薬価負担引き下げに貢献することが期待されていた。だが、実際には、保険大手に買収されたPBM各社は、価格引下げ交渉で得た差益を患者の薬価負担の軽減ではなく、より健康な保険加入者のプレミアム引下げに用いており、この点を批判されている。PBM最大手といえばExpress Script、 Caremark、 OptumRxだが、いずれも実質的には保険大手(それぞれCigna、VS Health、 United Health Group)の子会社である。

民間ソリューションの期待の新星としてJPMorgan2020 が繰り出したのはスタートアップのEQRx社(https://www.eqrx.com )である。同社は承認された医薬品と同じターゲットへのソリューションをより低価格で実現できる医薬品の研究開発を合理化・加速するというビジネスモデルを掲げ、2億ドルの資金調達を開始すると発表。一挙に業界の注目を集めている。(医療ジャーナリスト 西村由美子)
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