ファイザー・五十嵐社長 MRとSME連携でエンゲージメント向上 顧客ニーズ定期確認で人員配置を進化
公開日時 2025/05/07 04:52
フ

ァイザーの五十嵐啓朗代表取締役社長は本誌インタビューに応じ、医療者や患者を中心に据えた「価値提供体制の進化」に全社で取り組む考えを強調した。具体的には、MR(HR・ヘルスケア リプレゼンタティブと社内で呼称)に加え、サブジェクトマターエキスパート(SME)と呼ばれる専門部隊として、キーアカウントマネジャー(KAM)、オンライン顧客対応窓口、自治体や行政機関に情報提供する部隊、メディカルなどが“ワンチーム”で連携し、顧客エンゲージメントの向上に努めるというもの。五十嵐社長は、「ミッションごとに顧客ニーズが満たされているかを定期的に確認し、人員や配置を進化させる」と説明。また、MR活動の生産性向上にむけて、すでに“レコメンデーションエンジン”を導入し、「ROIを継続的に検証している」と述べ、「(成果の)アルゴリズムを進化させるサイクルに入った」と語り、デジタルやAI活用の更なる発展に強い期待感を寄せた。
五十嵐社長は就任以来、パーパス経営や人財育成と並行して「時代にあったチームによる価値提供体制の進化」に取り組む姿勢を鮮明にしている。特にグローバルで定めた“Purpose Blueprint” に刻んだ「年間10億人の生活を変える」(2027年目標)を達成するため、価値提供体制の進化と顧客エンゲージメントの向上は、昨今のデジタル・AI時代において重要なミッションの一つに位置づけている。
◎「MRと専門部隊が時代の流れに応じ、どんどん変化し、連携しながら成果につなげていく」
「MRと専門部隊が時代の流れに応じ、どんどん変化し、連携し合いながら成果につなげていく体制をとっている」-五十嵐社長は強調する。続けて専門部隊のイメージについて、「いわゆる大きな施設を担当するキーアカウントマネージャー(KAM)的な役割、自社ワクチン等を通じて行政機関・地方自治体に情報提供する役割、それからバーチャルで電話を含めて顧客対応する部隊、さらに講演会等々の企画や診断率向上など専門性の高い仕事をする本社事業部所属の部隊、さらにはメディカルが独立性を担保・維持しながら存在しており、これらの有機的連携をさらに進化させる」と説明する。特に、人員配置の考え方では、「ミッションごとに顧客ニーズを満たしているかを定期的に確認しながら、時代にあわせて進化させていくことが望ましい」との見解を披露してくれた。さらに、MRと専門部隊(Subject Matter Expert:SME)との連携についても、「エンゲージメントを常に高める活動をしている」と評価した。
◎“レコメンデーションエンジン”導入で「しっかりとROIが出てきている」
MR活動の生産性向上では、医師など医療者の行動履歴や嗜好を分析し、それに合った情報やコンテンツを提案する“レコメンデーションエンジン”を導入した。五十嵐社長は、「しっかりと顧客に価値を届ける活動をやっている」と強調。「社内もデータを中心に経営の意思決定をするカルチャーがしっかり根付いており、その観点で、このレコメンデーションエンジンは、しっかりとROIが出てきている。現場の視点を中心にツールの開発やサポートができていると思う」と自信をのぞかせた。
このほかMR活動の効率化の観点でも、「生成AIを活用したチャットボットなど様々な効率化を、実行または導入の検討というような形になっている」と述べ、こちらも進化の途上にあるとした。
◎「リーダーシップの重要性」に言及 Growth Gigs グローバル公募制「自律的成長に貢献」

五十嵐社長は、業界トップ水準の組織能力の開発として、「成果を創出する力を徹底的に高めたい」とのスタンスを一貫して強調する。本誌とのインタビューでも、「コロナ禍以降、デジタルやAIで社会も変わり、顧客ニーズも変わった」と述べながら、「テクノロジーの活用も最後はヒトだ。様々なプロセスを会社がセットアップしたとしても、最後はヒトが判断をしながらやっていくことだと思う」と指摘。「だからこそ成果にこだわり、自分で考えて、何が成果に一番直結するかを判断し、いろんなものを活用して仕事をする。それが個人の力であり、組織の力だと思っている」と語ってくれた。
五十嵐社長は「リーダーシップの重要性」にも言及する。同社には“Growth Conversation”や“Growth Gigs”といった制度がある、Growth Conversationは、社員一人ひとりが自身のキャリアや成長に特化して上司と部下の間で“One on Oneミーティング”を行う。上司は部下の自律性を尊重し、それを伴走する役割を担う。一方、Growth Gigsは、業務の2~3割の時間を使って、患者貢献や企業貢献を目的に、自分の成長のために他部署もしくは他国を含めて短期間アサイメントすることができるというもの。「日本の社員であっても、例えばワクチンで途上国の人たちに貢献する施策を考えるみたいなところに手を挙げて参加する」というイメージだという。グローバルの原則公募制で、五十嵐社長は、「自己実現につながる制度として使われており、社員の自律的な成長に貢献していると思う」と話してくれた。
このほかにも、様々な部門を経験する「ジグザグキャリア」といったパスも用意されており、「いろいろな部門を幅広く経験しながら、視野、視座を広げて、広い意味で患者さんに貢献していく。そういう人材を育てようという仕組みだ」と紹介してくれた。