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【FOCUS 電子カルテDB構築 二次利用により臨床試験やPMSが簡便に RWD活用の最前線】

公開日時 2020/02/14 04:51
レセプト情報、DPC、調剤データ、診療情報(電子カルテ)など、リアルワールドデータ(RWD)の利活用が言われて久しい。データベース(DB)化による二次利用で、これまで見えてこなかったさまざまな課題が可視化され、医療の質や安全性の向上に寄与すると期待されているからだ。特に、臨床検査値などアウトカムデータを扱う電子カルテDBの基盤整備とその運用は、臨床研究や市販後調査など製薬企業の活動にも大きなインパクトをもたらす。そのフロントランナーが一般社団法人健康・医療・教育情報評価推進機構(HCEI)で、産業界やアカデミアでの活用を進めている。HCEI常務理事で京都大学大学院医学研究科教授の川上浩司氏による講演(1月23日開催の日本セルフケア推進協議会講演会)をもとに、RWD活用の最前線を紹介する。(富井和司)

◎アウトカムの可視化を実現するRWD-DB

2015年に設立したHCEIは全国の医療機関と連携して、レセプトやDPCを含めた電子カルテ由来診療情報の匿名加工情報データベース(RWD-DB)を構築。現在、185の医療機関と契約し、約2000万人の患者数(データ抽出済み医療機関の総数)、約3億8500億万件の病名、約6億2100万件の医薬品、約25億4000万件の検査値等の電子カルテデータを扱う。電子カルテDBとしては日本で最大と言ってもいいだろう。

わが国の医療DBは、医事課によるレセプトやDPCの請求情報によるものが主流だが、「レセプト等で研究してきてつくづく思うのは、診療で最初に発生している検査値など診断の根拠となるデータが入っていないということ。患者のアウトカムをみるために電子カルテのデータベース構築が必要」との川上氏の想いから、RWD-DBがつくられた。

電子カルテDBの構築の際、困難を極めるのが病院ごとに異なる検査値等の表記の統一化だ。同DBの場合、「1つの検査結果に100個ほどの“方言”があるが、2000ある検査結果のうち1200項目については4年かけて辞書をつくり、標準化した」(川上氏)ことで、多様な施設からのデータが1つの形式で利用可能となっている。

医療機関からの電子カルテデータの抽出は極めてシンプルで、各施設のシステムに応じた無料アプリを配布し、指定された情報以外はすべて吸い上げられ、匿名化された状態でDB内に格納される。DPCデータのように急性期に偏った抽出ではなく、また設立母体を問わず、“急慢公民”の医療機関をまんべんなく網羅しているのも、他の医療DBにない特徴といえる。

◎どの患者にどの薬を使うべきかが明らかに

RWD-DBを活用した電子カルテ情報の二次利用はかなり進んでいるが、その使われ方や実績を知れば知るほど同DBのポテンシャルには驚くほかない。特筆すべきは、システム内で患者のスクリーニングからランダム割付などを自動的に行うなど、バーチャルで臨床試験を組むことができるという点である。市販後調査(PMS)も同様だ。

例を挙げると、ある薬剤の併用有無で腎機能がどう変わっていくか、あるいは薬剤Aと薬剤Bと無治療のそれぞれで消化器症状のイベント発生率がどのように変化していくのかなど、治療群間の臨床検査値や臨床所見が一目瞭然となる。しかも、「リアルな臨床試験では通常、A対Bの比較しかできなかったが、A、B、C、Dというように複数のモダリティの比較が可能」(川上氏)という。

さらに、既存薬剤と新規薬剤の副作用の発生状況や、新規薬剤投与後の患者の背景因子別に臨床検査値を比較することも容易だ。つまり、どの患者にどの薬を使うべきかの根拠が明らかになるので、適正な薬物療法を短期間かつ高精度で確立しやすいというわけだ。実際、すでに30疾患以上で製薬企業やアカデミアがRWD-DBのデータを使った研究を実施しており、注目度の高さが伺える。

◎病院データの可視化が地域医療底上げの一助に

一方、HCEIでは電子カルテ情報を提供する医療機関に対し、“見返り”として当該施設と施設平均を比較した治療成績等に関するレポートを提供している。例えば、血糖コントロールが良好な患者の割合が施設平均を上回っているか下回っているかを図示し、改善ポイントのコメントまで付けて渡しているのだ。「RWDの一次利用例です。病院データを可視化することにより、医療の質を高めようという行動変容のきっかけになり、地域医療の底上げにも貢献できると思います」(川上氏)。
他にも、地域ごとの患者推移、医薬品処方量などを可視化したり、検査値によるグループ分けができるツールが完成間近で、完成すれば、重症患者がどの地域に多いか、その地域ではどのような薬剤が一番使われているかなども把握可能だという。

RWD-DBの使い道は多様であり、様々な可能性を秘めている。医療現場の潜在的なニーズを見極め、その使い方をデザインしていくことも、適正な薬物治療を担う製薬企業にとって今後重要になっていくと思われる。


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