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製薬協 革新的新薬の「迅速導入評価制度」を提案 ドラッグ・ラグのエビデンス求める声相次ぐ 中医協

公開日時 2023/07/06 06:13
日本製薬工業協会(製薬協)の上野裕明会長は7月5日の中医協薬価専門部会で、ドラッグ・ラグ/ロス対策として、革新的な医薬品を国内に迅速に導入した場合の薬価上の評価として、「迅速導入評価制度」を提案した。あわせて、現行の新薬創出等加算に代わる、シンプルに薬価を維持する新たな制度も提案した。ドラッグ・ラグ/ロスに対しては、診療・支払各側からエビデンスを求める声が数多くあがった。予見可能性の高さを求める製薬業界に対し、診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、予見可能性を高めることは「ドラッグ・ラグ/ロスの解決に必ずしも結びつくものではない」と断ずる場面もあった。

◎革新的新薬迅速導入と薬価維維持「2つの仕組みセットで導入を」

「基本的にはドラッグ・ラグ/ロスを生じている理由は、各品目によって異なるが、大きくは薬事制度、そして薬価制度によるものだ。薬価制度についての解決方法で重要な点は、革新的新薬を日本に迅速に導入する仕組みと、革新的新薬の薬価を維持する仕組み、この2つの仕組みをセットで取り入れる必要がある」-。製薬協の上野会長は、こう述べ、理解を求めた。

提案したのは、革新的な医薬品を国内に迅速導入した場合の薬価上の評価として、「迅速導入評価制度」の創設だ。収載時の価格設定として、革新性が高く、類似薬の選定が困難な場合には臨床的位置づけなど医療実態を考慮した柔軟な類似薬を選定し、収載後には薬価を維持するというもの。ただし、ガイドラインで臨床上の位置づけが明確になった場合には薬価を見直すとした。これにより、モダリティが低分化合物から抗体、さらには核酸医薬、再生・細胞医療などとシフトする中で、「多様化する革新的医薬品の特性に応じた柔軟な価格評価にも将来的にはつながっていくものと考える」と上野会長は説明した。

あわせて、現行の新薬創出等加算に代わり、実勢価改定から除外してシンプルに薬価を維持する「患者アクセス促進・薬価維持制度」も提案した。「少なくとも現行の新薬創出等加算に加え、迅速導入評価制度の該当品」を対象とすることを求めた。上野会長は、「医薬品の価値が一定期間維持され、予見性が高まること、また日本の知的財産権を尊重する国であるというメッセージとなり、革新的新薬のアクセス促進につながることが期待される」と述べた。

欧州製薬団体連合会(EFPIA Japan)の岩屋孝彦会長も、国際共同治験などを実施し、欧米に遅れることなく日本で上市した場合を評価する「迅速導入加算(仮称)」の創設を提案。
先駆的医薬品や国内に適切な比較薬がない新薬、参照可能な外国価格がない新薬などを対象とすることを提案した。

◎ドラッグ・ラグ「英語情報の発信が解決策では」 診療側・長島委員

ドラッグ・ラグ/ロスを前提として製薬業界が主張する中で、この日の中医協では、ドラッグ・ラグ、ドラッグ・ロスの原因や内容如何を問う声があがり、エビデンスに基づく議論を求める声が相次いだ。

診療側の長島委員は、「ドラッグ・ラグ/ロスは、医療現場においても大きな課題である一方、なぜ起こるのか。どうすれば解決するのか、十分な分析がされていないと考えている」と指摘した。「例えば、日本に拠点のない海外のベンチャー企業は、日本の薬事承認や薬価制度に関する英語の情報が少ないため、十分な理解に至っていないことが大きな原因の一つであり、日本から英語の情報を発信することが解決策になり得ると聞いている」と続け、「ドラッグ・ラグ/ロスの原因が、薬事承認や研究開発支援体制の問題なのか、薬価制度の問題なのか。深堀できるデータに基づいての議論が必要だが、そのようなデータの提示は可能か」と質した。

これに対し、製薬協の上野会長は、「基本的には各社の判断によるところが大きいが、もう一段踏み込んで分類することは可能ではないかと想定しており、これから追求していきたい」と述べるにとどめた。

◎未承認薬の中には「日本で発生していない感染症、科学的根拠がないものも」

製薬協が欧米で承認されているものの国内開発未着手の医薬品が86品目とのデータを示す中で、診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「全てが国内での承認が必要で、必要性があるということか」と質した。これに対して上野会長は、「国内で承認に向けて開発したが、色々な理由で開発を中断したものや、日本で発生していないような感染症もある。科学的根拠がないものや、本当に日本でニーズがないものについては、必ずしも日本での承認が必要とは思わない。ただ、患者の人数の多寡にかかわらず、日本でアンメットニーズがある疾患については、基本的には日本で承認されるべきと考えている」と述べた。

EFPIA Japanが2018年薬価制度改革以降、日本での上市延期などの影響が出ていると説明したことに対し、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「議論の結果、日本で上市したものを含めて具体的にどのようなカテゴリーの医薬品があって、具体的にどんな課題だったのか、もしおわかりであれば教えていただきたい」と質した。これに対し、EFPIA Japanの岩屋会長は、「個社の研究開発情報について個別に把握していない」と説明。米国研究製薬工業協会(PhRMA)のシモーネ・トムセン在日執行委員会委員長は、「メルクが、肺動脈性の高血圧に関する薬の臨床第3相試験を日本でもやろうということで色々苦労があったが、それを進めようとしている」と話し、延期や中断した例には触れなかった。

◎有用性系加算の改善訴え RWD用いた間接比較による評価も 

製薬協は、有用性系加算の改善も訴えた。類似薬と直接比較が困難な場合には、リアルワールドデータ(RWD)を用いた間接比較による評価を求めた。PhRMAは有用系加算をめぐり、「患者・家族の社会生活上の有用性」を新規の加算要件として明示的にするなど、加算ポイント体系を見直すことも提案した。

診療側の長島委員は、「薬価算定時に、薬事承認時の審査報告書以外の資料も参照して評価するとなると、相応の人、時間が必要になると思わるが、薬価収載の迅速さとのバランスについて、製薬業界ではどうお考えか」と質した。製薬協の上野会長は、「私どもとしては、非臨床試験、臨床試験等を通じてある程度評価をすることが可能だと思っている。現在の承認時期、あるいは承認後の薬価収載時期を遅らせないように評価ができるようなことを考えて参りたい」と応じた。

また、「介護などの社会負担の軽減や医療費の削減など多様な社会的価値がもたらされることは歓迎しますが、製品の上市後にそのような具体的なデータが取得されたものがあれば提示をお願いしたい」と問う長島委員に対しては、「家族の生活、社会生活上の有用性というものは薬事承認で求めていないので、現時点で明確に示された事例はないと思う」と話し、このためRWDを用いた間接比較の評価を求める提案に至ったと説明した。

◎薬価予見可能性向上は「ドラッグ・ラグ/ロスの解決に必ずしも結びつくものではない」

このほか、製薬協やPhRMA、EFPIA Japanが市場拡大再算定について類似薬の共連れルール撤廃など、見直しを訴えた。特に、EFPIA Japanが“高い予見可能性”に言及する中で、診療側の長島委員は、「日本における薬事承認後、速やかな薬価収載の仕組み自体が極めて高い予見性を持つと思うが、そこはいかがか」と質した。これに対し、EFPIA Japanの岩屋会長は、「単なる期間の問題ではなく、適用というか、実際の判断も含めて、今の制度をもう少し良いわかりやすく、誰にとっても事前に想像がつく制度にしていただければと思っている」と応じた。

長島委員は、「特許期間中に薬価が下落することは、いつどれだけ下がるか予見できたとしても下落自体が問題であれば、予見性を高めることは関係ない。それ以外にも、いつどれだけ薬価が下がるかがはっきり予見できるようになれば、製薬企業としては、日本での上市の中止をより判断しやすくなるということもあり得るので、ドラッグ・ラグ/ロスの解決に必ずしも結びつくものではない」と断じた。

これに対し、薬価専門部会の終了を部会長が告げるのを遮り、EFPIA Japanの岩屋会長は、「蛇足にならないようにしたいが、予見性が高ければそれだけでイノベーションが持ち込まれるとは思っていない。一方で、予見性がないところにおいて投資がしづらいというのは極自然な企業としての企業行動だ」と理解を求め、この日の薬価専門部会は終わりを迎えた。
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