厚科審部会 重要供給確保医薬品候補は75成分、供給不足の増産要請の運用指針 パブコメ経て告示へ
公開日時 2025/08/28 05:30

厚生労働省は8月27日の厚生科学審議会医療用医薬品迅速・安定供給部会に、薬機法等改正を踏まえ、供給確保医薬品(安定確保医薬品)を759成分、特に優先順位の高い「重要供給確保医薬品」を75成分指定することを提案した。重要供給確保医薬品は供給不足の発生を未然に防止するための措置や、供給不安発生時の増産や輸入拡大の指示について運用指針のたたき台も示された。いずれもパブリックコメントを経て再度部会に提示し、正式に決定する考え。告示として、薬機法が施行される11月20日までに周知する方針。
薬機法改正では、安定確保医薬品を“供給確保医薬品(カテゴリーA~C)”、特に優先順位の高い“重要供給確保医薬品(カテゴリーA・B)”と法令上位置付けた。改正医療法に基づき、供給確保医薬品については平時からの供給状況等の報告(平時モニタリング)、重要供給確保医薬品については、供給不足の発生を未然に防止するための措置と、供給不足発生時の製造・輸入に関する指示を行うことができることとされた。
◎供給確保医薬品候補は759成分 漏れなく選定、ワクチンや血液製剤も
この日の検討会に厚労省医政局医薬産業振興・医療情報企画課は、医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議下部組織のワーキンググループで、安定確保医薬品のリストについて見直しの議論を報告した。安定確保医薬品の選定をめぐっては、日本医学会傘下の学会に対し協力を依頼。イ)対象疾患の重篤性、ロ)代替薬・代替療法の有無、ハ)多くの患者が服用していること、ニ)製造の状況・サプライチェーンの4要素について、最新の状況への更新を行い、選定やカテゴリ分類の議論を重ねた。必要な成分について漏れなく選定する観点から、患者数等での絞り込みは行わず、基本的には全てを安定確保医薬品とした。また、前回選定時には対象外とされたワクチンや血液製剤も候補成分の対象とした。
21年に選定時の506成分のうち、見直し後は継続成分が450成分、新規成分が309成分の計759成分だった。
◎カテゴリAは36成分、カテゴリBは39成分 TS-1は新たにカテゴリBに
このうち、重要供給確保医薬品が75成分。カテゴリAとされたのは36成分。ワルファリンカリウムなど継続してカテゴリAとされた成分のほか、カテゴリBから格上げされたセフトリアキソンナトリウム水和物、乾燥BCGワクチン他ワクチンが13成分、血液製剤類が1成分(乾燥抗D(Rho)人免疫グロブリン)だった。カテゴリBとされたのは39成分。カテゴリCから昇格したテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤(TS-1)、新たに追加した黄熱ワクチン他ワクチンが6成分、エプタコグアルファ(活性型)(遺伝子組換え)他血液製剤類が9成分、アスホターゼアルファ(遺伝子組換え)他ワクチン及び血液製剤類以外の医療用医薬品が4成分となった。
◎供給不安未然防止で原薬のダブルソースや一定在庫確保 原薬や中間体求める声
供給確保医薬品のうち、品目を指定したうえで平時モニタリングを実施。生産量、在庫量、出荷量、生産計画などの報告を求める考え。一方、カテゴリA・Bに位置付けられる重要供給確保医薬品については供給不足の発生を未然に防止するための措置として、原料・材料の供給源多様化(原薬のダブルソース化)、輸送経路の複線化、一定の在庫備蓄確保などを想定し、供給不足防止措置計画の作成・届出を指示できるとした。また、供給不足が発生時の製造・輸入拡大について製造等計画の作成・届出を指示することとした。これらの規定は、関係者の事業活動に対する一定の制約を伴う場合があることから、予見可能性を高めるために措置をあらかじめ指針として定める考え。
供給不安を未然に防止する措置として求められる「一定の在庫備蓄確保」をめぐっては、製品だけでなく、原薬や中間体などを視野に入れる必要性を指摘する声もあがった。
◎感染症の医療ニーズ増減で返品や余剰在庫めぐる意見も
部会では、昨年末のインフルエンザ流行時の供給不足などを例として、供給不安時の増産をめぐる意見が出た。インフルエンザなどの感染症では急速に需要が増加する一方で、急激にピークアウトするケースも多い。医療現場から見た際の必要在庫も変動するなかで、返品も含めた意見があがった。
宮川政昭委員(日本医師会常任理事)はワクチンを引き合いに、「感染症は急速に増え、また減る場合があるなかで、在庫、そして返金という問題も潜んでいる。厚労省や業界団体も含めて議論が必要だ。安定確保医薬品については在庫を含めた管理を医療機関側も考えなければいけない問題だ」と指摘した。
原靖明委員(日本保険薬局協会 流通専門参与)は、「医薬品は決して自分たちのためではなく、患者さんのために確保している。実際、感染者があの落ちた地域もあれば、これから増えていく地域もあるので、返品をすることもある。全国的に見える化をすることが非常に重要だ」との考えを示した。
田前雅也委員(日本製薬団体連合会安定確保委員会委員長)は、「増産は当然の義務だが、感染症などでは、リードタイムが長くかかるというところをご配慮いただきたい。また、感染症は流行度合いが急速に変化する。多く作っても余った場合の対応についてもご配慮いただきたい」と要望した。