ファーマ・インサイト アドヒアランスその2:やっぱり!アメリカ人はいい加減

公開日時 2010/03/17 04:00
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例えば、ある患者像を考えて下さい。42歳の男性、既婚で子供一人。周3-4回のペースでフィトネスクラブに通いウエートトレーニングをする元スポーツマン。健康そうであり、自覚症状は何もない。が、家族の病歴はかなり大変で、あらゆるCV疾患、糖尿病、甲状腺問題などが盛り沢山である。BMIは26前後、ウエスト86cmの準メタボ予備軍。食生活は悪くないが、肉とビールが好きで、時に我慢できなくなる傾向が強いので、気をつけないとゆくゆくリスクが高そうだ。予防対策としてサプリメントを飲んでいる。この人に薬が処方されたら、きちんと服薬できるのだろうか。Let’s check!


この図は、横軸がカレンダー、縦軸が時間で、この患者が容器から薬を出したポイントが青い点で示されているもので、一ヶ月間の服薬状況が見事に表されています。処方をもらった当日(①)の夜に家に帰って初めて薬を飲んでいますが、どうもこのとき2回容器を開けたようです。翌日朝早く家を出るので予め薬を出しておいたのかもしれません。でもその後、薬を鞄に入れることを忘れたようで、5日間のブランクが生じました(②)。その後はしばらく前朝しっかり飲んでいましたが、やはりちょこちょこ忘れたりして、それからまた別の出張かな(③)。その後もパターンはマチマチで、結局この一ヶ月のコンプライアンス率は54%でした。

 

しかし諦めるのはまだ早い!何かリマインダーが出されたとしたら、患者の行動は変わるのでしょうか? この場合、あるツールの使い方について改めて説明を受けた後、この患者の行動は下記の図のように変わりました。


横軸下部の黒く塗られている部分が週末の表示なので、どうも水曜日と金曜日にまだ何か問題がありそうですが、全体的に一定の時間帯に毎日のように服薬できるようになり、コンプライアンス率は84%に上昇しました。Good!

もう既に想像している方もいるかと思いますが、この患者は私です。「日本人よりも日本的だ」とたまに言われることもありますが、私のようないい加減なアメリカ人でも、しっかりと指導を受ければそれなりにできるんですよ!

 

上記のようなツールはMedication Event Monitoringと呼ばれています。数か月前にヨーロッパに行く機会があり、この分野で活躍しているある会社を訪問しました。そこで作られているシステムを持って帰り、今上記のように勉強している段階です。種明かしをすると、薬のボトルキャップのなかにセンサーがあり、そのビンを開く度にセンサーが起動して記録をトラッキングしていきます。定期的にそのデジタルキャップをコンピュータにつなげれば、データ通信によりWeb上で上記のようなアウトプットが見える仕組みまで完成させています。

 

海外での主な応用場面は臨床試験だそうです。効能に影響を与えるようなことがあれば、質の悪い症例パターンとそうでないパターンをしっかりと把握して分析することができます。ここ数年間は、医療介入プログラムでも利用されることが多くなってきています。マーケターの視点で面白いと思うのは、たとえば上市後の薬剤であれば医者や薬剤師にこのようなツールを用意して患者さんに渡してもらい、定期的に結果を一緒にディスカッションするようなプログラムを作ります。可視化された材料があれば治療や服薬指導がやりやすくなり、患者さんの相談の頻度も上がるでしょう。製薬企業もWIN、患者さんもWIN、医療機関もWIN。しっかりとしたケアができ、アウトカムがよくなるはずだから、国だってWINになるはず。WIN-WINの倍ですよ!面白い話だと確信しています。

 

このシステムはまだ完ぺきではないですが、特筆すべきは患者にフォーカスしていることと、「一回掴んだ顧客をしっかりとフォローする」という他業界での常識を、製薬マーケターも持てるような時代になったこと。まだまだ手探り状態ではありますが、当社ではこのよう新しい取り組みにトライする企業を一緒に応援したいと思っています。ご意見をお待ちしています!

 

次回は、「アドヒアランスその3:1984(ブラザー) in 2010? 飲むバイオモニター」です。

 


 セミナー風景ジェフリー・シュナック(Jeffrey B. Schnack) 1967 年米国生まれ。 米国とヨーロッパの大学院で国際政治経済学修士およびMBAを取得。1990年来日。外資系コンサルティング会社にて欧米企業のアジア戦略プロジェクトを 実行。その後JR東日本初の海外子会社代表などを務める。スリーロック株式会社は2004年より、製薬企業を対象に営業・マーケティング分野のコンサル ティング及び能力開発プログラムを実施している。
スリーロックHP http://www.3rockconsulting.com 本人ブログ http://blog.3rockconsulting.com/

 

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