住友ファーマ・野村社長 赤字拡大「非常に重く受け止めている」 北米は人員削減、日本は体制スリム化
公開日時 2024/05/01 16:45
住友ファーマの野村博代表取締役社長は5月1日、オンラインで開催した「2023年度業績予想の修正、2024年度業績⾒通しに関する説明会」に臨み、23年度の営業損失が3549億円に拡大する見通しに対し、「減損が多額に発生し、当期損失(△3150億円)が予想より大幅に増加したことに私として大変申し訳なく、また非常に重く受け止めている」と強調した。その上で25年3月期業績の見通しについて、北米の人員削減を含む約1000億円以上のコストダウンと、日本についても24年度中の一段の体制スリム化など追加的な合理化を加速させ、コア営業利益の黒字化を目指すと表明した。前日の住友化学の記者会見で岩田圭一社長が持分比率の縮小などを想定したパートナリングを模索する発言をしたことについて野村社長は、「そのようなご提案があれば、非常に、前向きに一緒に検討させていただきたいというふうに考えている」と応じる姿勢を示した。
住友ファーマの修正後の23年度連結業績予想は、コア営業損失1330億円(前回1月予想1340億円の損失)、営業損失3549億円(同1560億円の損失)、親会社帰属純損失3150億円(同1410億円の損失)―で赤字幅が拡大する見込みとなっている。
野村社長はこの日の説明会で、25年3月期連結業績の見通しに触れ、売上収益3380億円(前期⽐234億円増)、コア営業利益10億円(前期⽐1340億円増)を目指し、黒字化への収益改善に取り組む決意を強調。その前提として、北⽶の基幹3製品である進⾏性前⽴腺がん治療剤「オルゴビクス」、⼦宮筋腫・⼦宮内膜症治療剤「マイフェンブリー」、過活動膀胱治療剤「ジェムテサ」の売上収益拡⼤と、日米における販管費・研究開発費の合理化に取り組む方針を掲げた。
◎北米で1000億円以上の合理化 基幹3製品の営業・マーケティング部門は削減の対象外
ただ、コア営業利益10億円必達への道のりも容易ではない。野村社長は、基幹3製品の拡販に加えて、販管費・研究開発費の合理化を強調したが、この日の説明会で示されたコスト合理化策では、その大半が北米を対象とするもので、1000億円以上のコストダウンを図る方針を明記している。野村社長は、「北米での人員削減は23年度末に1200人まで減少(23年度期首2200人)しており、24年度末までに1100人まで削減できる」と説明する。また人員削減の対象も、「基幹3製品の営業・マーケティング部門は考えていない」と述べ、製品の市場浸透に影響させない形でコストダウンを図ることが可能と見通した。このほか米国市場での認知度向上に向けて、SNSやYouTubeなどを活用して患者への情報浸透を進める方針も明示した。
◎他家iPS細胞由来細胞製品「住友ファーマとして従来のスケジュールに則って進める」
一方、研究開発費について木村徹代表取締役専務執行役員は、大塚製薬とのライセンス契約の見直しや、CNS領域の後期開発とそれに付随する組織を3月に合理化したと報告。「それだけで200数十億円のコスト削減につながっている」と説明。一方でがんや再生医療については、「上市が見込めるものとして削減することなく予算配分している」と述べた。また、前日の住友化学の記者会見で再生・細胞医薬事業について住友化学主導で事業化するとの方向が示されたことに木村専務執行役員は、DSP-1083がパーキンソン病を対象疾患に世界初の他家iPS細胞由来細胞製品として日本で24年度中に承認される可能性があると述べ、「住友化学との新会社設立もあるが、それでは時間的に全く間に合わない。住友ファーマとして従来のスケジュールに則って進めていくことになる」と強調した。
◎日本国内での一段の体制スリム化「基本的に経費削減」人員削減は盛り込んでいない
販管費・研究開発費の合理化に伴う日本での一段の体制のスリム化について野村社長は、「基本的には経費節減を24年度に相当盛り込んでいるというレベル」と述べるにとどめた。MR数については、「身の丈に合ったコスト構造」と表現しながらも、人員削減には言及しなかった。ただ、「例えば導入品や提携品でジェネリックが入ってくるタイミングなども近々もある。そういう一定の規模感をある程度見直していかなければいけないというタイミングも来ると思っているので、そういう中で総合的な観点から一段の体制のスリム化として、あらゆる選択肢の中から進めていくということになろうかと思う」との認識も披露した。
◎出資比率の縮小などにこだわらないパートナリング「案件があれば一緒に検討したい」
また、住友ファーマの持続的な成長を実現するための「最適なパートナリング」について野村社長は、「昨日の(住友化学の)岩田社長の説明で、住友ファーマを今後どう成長させていくかという中でパートナリングがあればその出資比率にこだわらないという説明だったと理解している」と述べ、すでに岩田社長との合意事項であることを明らかにした。その上で、「今後そのような案件があれば一緒に検討していきたい」と応じた。