日本新薬・中井社長 「25年度以降再び成長軌道に乗せる」 24年度はビダーザ後発品参入影響強く
公開日時 2024/05/13 04:50
日本新薬の中井亨代表取締役社長は5月10日、2023年度決算会見で、国内医薬品事業の成長性について「後発品参入によるビダーザの減少が続く24年度が底だと考えている。レノックス・ガストー症候群に適応拡大したフィンテプラや高リスク急性骨髄性白血病治療薬ビキセオスなど新製品を早期に立ち上げることで、25年度以降、再び成長軌道に乗せていきたい」と意欲を示した。一方、海外では、提携先により第3相試験実施中のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)に対する細胞(エクソソーム)治療CAP-1002や、ビルテプソに続く自社創製の核酸医薬(エクソンスキッピング薬)の上市により成長を続けていく考えを示した。26年から27年にかけて肺動脈性肺高血圧症(PAH)治療薬ウプトラビの特許切れを迎える予定であり、5月28日に公表する24年度からの第7次中計では、パテントクリフへの対応が示される見通し。
◎23年度連結業績は2.8%増の1482億5500万円で過去最高 利益は2桁増
23年度連結業績は、売上高が前期比2.8%増の1482億5500万円と過去最高となり、各利益は2桁増となった。最主力品のDMD治療薬ビルテプソは22.2%増の175.30億円と好調を持続し、地域別内訳は、国内で6.5%増の44.07億円、米国で28.6%増の131.23億円と、特に米国で高い伸びを示した。24年度は、国内で46億円、米国で155億円の計201億円を予想する。米国ビルテプソについて中井社長は「着実に右肩上がりで成長していくと予想している」と述べた。
米国では、23年6月にサレプタ社のDMDに対する遺伝子治療薬「Elevidys」が迅速承認を取得し、ビルテプソとの競合が注目されているが、「遺伝子治療と我々のエクソンスキッピング薬はすみ分けもされているし、必要に応じて使い分けがされると考えている」と述べた。なお、サレプタ社のプレスリリースによると、遺伝子治療薬の投与対象は4~5歳の歩行可能な患者に制限されているが、現在、FDAにより年齢や歩行状態の制限を外す可否や、迅速承認から通常承認に向けた審査が行われており、審査終了目標日は24年6月21日に設定されている。
◎国内売上 ウプトラビの売上は22.5%増の129.18億円
国内ウプトラビの売上は22.5%増の129.18億円となり、24年度は154億円を予想する。また、米ジョンソン&ジョンソンによるウプトラビの海外売上に伴うロイヤリティ収入を含む工業所有権等収益は31.2%増の403.04億円となった。24年度は417億円となる見通し。なお、J&Jの24年1~3月期決算資料によると、ウプトラビの売上は、前年同期比29.2%増の4.68億ドル、うち米国で29.0%増の3.92億ドルと好調だったが、24年3月に米国で米メルクの新規作用機序のPAH治療薬「Winrevair」(ソタテルセプト)が承認されており、今後、その影響を受ける見通しだ。
22年6月に後発品が参入した血液がん治療薬ビダーザは34.9%減の103.83億円となり、24年度は48億円を見込んでいる。24年10月からの長期収載品の選定療養制度には9品目が該当するが、業績への影響は軽微にとどまる見通しという。
【連結業績 (前期比)24年度予想(前期比)】
売上高 1482億5500万円 (2.8%増)1500億円(1.2%増)
営業利益 332億9500万円(10.8%増)310億円(6.9%減)
税引前利益 336億1600万円(10.3%増)315億円(6.3%減)
親会社所有者帰属当期利益 258億5100万円(13.3%増)245億円(5.2%減)
【国内主要製品売上高(前期実績)24年度予想、億円】
ビルテプソ 175.30(143.41)201
日本 44.07(41.39)46
米国 131.23(102.01)155
ウプトラビ 129.18(105.43)154
ビダーザ 103.83(159.51)48
ガザイバ 46.95(49.04)51
トラマール・ワントラム 39.27(53.58)27
シアリス 24.99(29.38)27
エリザス 22.84(26.40)21
ザルティア 22.56(28.26)16
アドシルカ 22.55(26.49)17
デファイテリオ 22.21(25.24)23
共同販促収入 86.58(95.20)91
工業所有権等収益 403.04(307.14)417