【World Topics】ドクターの心の鍛錬
公開日時 2016/08/01 03:50
米国シアトルの小児病院が発表したデータによれば、小児科の研修医のバーンアウト・レートは41%から70%にものぼるという。調査に当たったワシントン大学医学部のDr. Batraによれば、他の医療機関の小児科の研修医もほぼ同じ割合のバーンアウトが見られるという。
医師にとって、治療が及ばずに患者が亡くなっていくのを見ることほど 辛いことはない。いたいけない子どもの患者であればなおさらだ。ある小児科医は「患者さんは知らないのですが、小児科医はしばしば同僚とのコンファレンスで泣くんですよ」と打ち明ける。
こうしたドクターたちに心を鍛錬する機会を提供しようと医師支援プログラムを導入する病院が増えている。
UCLAのMattel Children’s Hospitalでは、国防総省が新兵教育用に開発したトレーニング・プログラムを、新人の研修医たちに実施している。
またニューヨークのMount Sainai Hospital Westでは、医師、看護師、ソーシャルワーカーなど日常的に患者と接する職種のために、がんセンターで月例ミーティングを開催し、前月の最も困難なケースの事例紹介を聞き、意見交換をする場を設けている。
話し合いを20年にわたってリードしてきているDr. Saraは「重い心を抱えて家に帰るより、この会に来て話して、吐き出してほしい」という。「オンコロジストだから頑張れ!と言われるけれども、医師も人間。辛い」のだからと。
Mattel Children’s Hospitalの小児科医は、自らの経験から研修医を支援するプログラムの必要を痛感し、同病院の精神科医と組んで、困難な事態下での自らの感情のコントロールするツールとなる方法を提供し始めた。(医療ジャーナリスト 西村由美子)