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【有識者検討会・9月29日 FIRM、卸連、クレコン・木村社長のヒアリング・発言要旨(その1)】

公開日時 2022/09/30 05:52
厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」の第2回が9月29日開催された。この日は、再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)、日本医薬品卸売業連合会(卸連)、クレコンリサーチ&コンサルティングの木村仁社長から業界の現状と課題についてヒアリングした。本誌は、ヒアリングの内容について、発言要旨を公表する。

遠藤座長:皆様こんにちは。本日もどうぞよろしくお願いします。本日の議題は業界の現状と課題に係る関係団体とヒアリングということで前回と同様だ。本日は2つの関係団体と企業からの参考人をお呼びしている。前回同様皆様のご発言をお聞きし、その構成員の皆様との間のディスカッションをしたい。最初に再生医療イノベーションフォーラムからお願いしたい。

【再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)畠賢一郎代表理事会長】

本日はこのような機会を頂戴いたしまして誠にありがとうございます。FIRM会長の畠です。早速始めたいと思います。再生医療等製品はこれまでの医薬品と保存の面も多々ございますので本日は再生の特徴などの説明を交えながら、製品化含めた現状と課題、また将来像について説明する。

それでは資料の2ページをご覧ください。改めて再生医療等製品の特徴を紹介させていただき、その次に再生医療等製品の価格に関する現在の課題とあるべき姿を申し述べる。また最後に成長戦略としての再生医療等製品と産業がもたらす将来についても言及していきたい。

3ページをご覧ください。これまでの医薬品は低分子医薬品や抗体薬などバイオ医薬品が主流だったが、近年科学技術の進歩により、細胞、ウイルス、遺伝子などで治療ができる疾患がわかってきた。さらに一部の疾患は治癒に至る可能性があることがわかっている。図の赤枠が再生医療等製品ではあるが、遺伝子治療や細胞治療を含む複数のモダリティを包含しており、これらの治療法はこれまでイノベーションの積み重ねによって成り立っている。我々の再生医療等製品は既存の医薬品では治療困難な領域の疾患に対して新たな治療手段を提供することができる新たなモダリティであると考えている。

4ページをご覧ください。前のページでもご説明したが、再生医療等製品に含まれるものは再生医療、細胞治療と遺伝子治療に大別される。しかしながら、この分類の中でも極めて多様なモダリティが存在することも本領域の特徴だ。したがって再生医療等製品として課題を一括で論ずることができないケースもあり、これまでに得られた知見に基づき、論点を整理した上で、この多様性を踏まえた検討を行う必要もある。

2007年に自家培養表皮が重症熱傷で承認されてから現在までに17品目が上市された。スライドの製品名に下線を引いた8品目は、直近2年で承認されたものだ。今後、種々の製品上市が期待される。なお現時点ではES細胞やiPS細胞のように種々の細胞に分化できる多能性幹細胞を用いた製品は開発段階にあり、いまだ上市に至っていない。

5ページをご覧ください。このスライドでは遺伝子細胞、遺伝子細胞治療、細胞治療といった再生医療等製品のオリジネーターを低分子、抗体および核酸医薬品と比較した結果を示した。低分子医薬品では製薬企業は多いが、抗体や核酸ではその割合が減少し、赤やオレンジ示すバイオベンチャーでアカデミアが増えている。さらに再生医療等製品ではベンチャーやアカデミアが起源である割合がさらに高いことも分かる。前ページに示した日本で上市された17の再生医療等製品の起源は全てアカデミア、ベンチャー企業となっている。

6ページを御覧ください。山中先生のノーベル賞受賞以来、我が国において再生医療の基礎分野に国からの継続的な支援をいただいている。その結果として多能性幹細胞を用いた世界の臨床試験の状況を見ると、2021年の日本における臨床試験数は米国、中国に次いで3位。iPS細胞に限れば引き続き1位となっている。また米国をはじめ国際的に臨床試験数は増加傾向である。

7ページ目をご覧ください。少し前のデータだが、近年iPS細胞研究の国際的な特許出願数は増加傾向にあり、累積出願数で日本は米国に次いで2位となっている。

8ページをご覧ください。インパクトファクターの高い論文数でも再生医療研究の論文は増加しており、特にiPS細胞に関する内容が増えている。その中でも日本は米国に次ぐ論文数となっている。また、健康4分野における論文数のシェアは平均6.6%ではありますが、再生細胞医療、遺伝子治療では8.7%と日本の研究力の高さをうかがうことができる。

ここまで4枚のスライドで示したように再生医療等製品の候補となるものはバイオベンチャーやアカデミアが起源となっており、臨床開発も進捗している。また、iPS細胞中心に特許出願や投稿論文数からは日本のポテンシャルが示されている。従って再生医療等製品を国民の皆様に継続して届けるためには、引き続き国内外でアカデミーやベンチャー企業を有する開発候補品を日本および海外での上市に繋げるための産官の取り組みが重要となる。その際、我々メーカーの共同研究開発や、伴走支援が必要であることはもちろんでありますが、国からの支援も必要だ。

すでにアカデミア、ベンチャーから製薬企業への橋渡し推進政策をはじめ、各種政策を行っていただいておりますがそれ以外にも研究開発環境の整備等の支援が必要と考える。例えばAMEDの創薬ベンチャーエコシステム強化事業は、令和3年6月に閣議決定されたワクチン開発生産体制強化戦略に基づき、500億円の補正予算が措置された。感染症対策に限定することなく再生医療に関するベンチャー支援も必要ではないかと考えている。

9ページをご覧ください。ここからは再生医療等製品の医療への貢献について紹介する。このスライドは他に治療のない白血病の患者さんに遺伝子治療を行った結果、治療後10年経っても白血病が再発しなかった事例を紹介している。従来の低分子医薬品による治療と比較すると、1回の投与で長期にわたる効果が期待できるともに、中には疾患が治癒する可能性を有するものもある。

10ページ目をご覧ください。このスライドは別の製品の例ですが、患者ご自身の軟骨細胞培養し患部に移植することにより、治療前には痛みで歩行に支障があった方が歩行できるようになり、その効果が長期にわたり持続している。この製品の場合、市販後調査を通じて医師の手技向上を図り、さらに治療効果が上がることも分かってきた。

11ページをごらんください。スライドは、国民に提供しうる再生医療等製品の価値を改めて示した。細胞治療によって、例えば重症熱傷などこれまで治療できなかった患者9人の治療が可能になった。また、遺伝子治療やCAR-T細胞治療を含め、少ない投与回数で脊髄損傷や難治性がんの治療、さらにはいくらかの希少疾患に対して、新たな治療方法を提供できるようになった。これらの結果をもって、医療負担や医療費の差、総額削減など多様な社会的価値をもたらす可能性があると考えている。

12ページをご覧ください。先のスライドでは再生医療等製品のモダリティの多様性についてご紹介したが、このスライドでは再生医療の産業構造の多様性を示す。再生医療等製品を患者さんに届けるためにはアカデミア多くの周辺産業との連携が必要になっている。低分子薬品では研究開発から製造までを追う製薬企業が担う垂直統合型の産業構造が主流でしたが再生医療等製品については、多くのステークホルダーが変わる水平分業型の産業構造へ変革が生じている。アカデミアやベンチャーが見つけた創薬の種を製薬企業やベンチャー企業が開発し、それを独自の流通の仕組みで患者にお届けするが、場合によっては製造過程も製造受託機関、これはCMO、CDMOに委託するケースもあり、それらの過程を周辺産業がサポートすることもある。ここまでがアカデミア発で多様性を有する再生医療等製品ならではの特徴だ。

13ページをご覧ください。5枚のスライドで再生医療等製品の価格に関する現在の課題とFIRMが考える再生医療等製品の製品価格のあるべき姿についてご紹介する。

14ページをご覧ください。ここでは再生医療等製品の研究開発サイクルを示す。製薬メーカーはご存知通り患者に新規治療法を提供するために、まず研究開発投資を行う。臨床試験で有効性、安全性が検証できて初めてその治療方法を患者にお届けできるわけだが、再生医療等製品の場合には、専用の新規製造設備投資をすることもある。開発した製品の価値に見合う評価をしていただくとともに、それが適切に維持されることで製薬メーカーは投資を回収し始めて、次の研究開発投資ができる。しかし現在は再生医療等製品を複数上市しているメーカーでも、日本国内では次の研究開発投資に回すほどの利益を出せてないケースがほとんどだ。健全な研究サイクルが構築されなければ国内外のメーカーが日本においてサステナブルに患者に新規治療を提供できなかったり、提供する価値が海外と比較して遅くなったり、いわゆるドラッグ・ロスやドラッグ・ラグを生じ、国益を損なう恐れもある。イノベーティブな治療を患者に届け、社会に新たな価値を継続的に提供するためにはこのサイクルを回し続ける必要があると考えている。

15ページをご覧ください。このスライドでは2014年以降に欧米で承認された再生医療等製品の国内における開発承認状況を示している。引用データにより多少の差はあるが、欧米既承認品の50~60%は我が国で開発されていなかった。我が国で開発のない再生医療等製品についてドラッグ・ロスなのか、単なる開発ラグなのか、またその製品の臨床的な重要性も含めて定期的に調査を継続する必要があるが、少なくとも現在未開発の製品が多いことは事実だ。

16ページをご覧ください。このスライドは再生医療等製品の海外価格との比較を示している。欧米で上市済の6製品を比較したところ、いずれ製品においても日本の価格が一番低く設定されていた。また、昨今の円安を考えると、格差は現実にはさらに拡大しているものと推察される。海外から見て日本市場に魅力がなければ日本における開発優先度を下げることが考えられる。特に再生医療分野ではベンチャーが自ら開発するケースもあり、後述する日本の薬事規制とあわせ、日本進出を希望する海外ベンチャーには大きな問題となっている可能性がある。

加えて日本のメーカーから見ても、日本の価格を参照して海外で値付けをされる現状を踏まえれば日本の製品価格が低いことも海外展開時に問題なるかと思う。特に日本発のベンチャーは、国内開発を先行せざるを得ないケースもあり、日本におけるビジネス環境や海外展開の課題を解決しなければ再生医療研究への投資が無駄になる。これら事態を避けるために再生医療等製品の価格算定の仕組みを見直すとともに、薬事規制を含めた日本の課題を解決し日本市場の魅力を取り戻す必要があると考える。

17ページをご覧ください。このスライドに示す通り、製造で求められる品質、製造、輸送、流通設備、人材育成、患者の規模、実施できる医療機関、特許など多くの面で再生等製品は既存の医薬品と異なっている。例えば低分子医薬では1ロットで数万から数十万を製造でき、生活習慣病などを患者数の多い疾患が対象となり、かつ長期間投与など前提となりますが、一方で、再生医療等製品では、大量生産できず、スケールメリットが得がたく、製造施設、設備機器の転用が極めて困難だ。また希少疾患を含め対象疾患は比較的少なく、自家細胞製品は個別化医療となる。さらに術式を伴うものについては医療機関の先生方の理解が必要であり、市場拡大に大きく影響を受けるものもある。また生きた細胞を用いるため有効期限は極めて短く、それに伴い、流通も温度管理専用の対応が必要となる。

現状、再生医療等製品は医薬品もしくは医療機器、医療材料のいずれかのカテゴリーで価格を算定されているが、いま申し上げた医薬品との違いが現行の価格算定方式では適切に評価をされていない。このため再生医療等製品の特徴に適切に評価をされる新しい価格算定方式が必要だと考えている。

なお、規制に係る課題や標準の利活用、医療機関にかかる施設要件や適切な手技料の設定などの課題につきましては、有識者会議のスコープ外ではありますが、再生医療を日本の患者にお届けするために合わせて解決する必要があると考える。

18ページをご覧ください。再生医療等製品に関する現行の価格算定方式の課題をまとめた。第一に、再生医療等製品が医薬品、医療機器の例に分けられて算定されている。そのため再生医療等製品特有の多様なコスト構造や少ない投与回数で長期にわたる効果が期待できる製品の価値などが適切に評価できていないと考える。加えて再生等製品では、中間年改定は現時点でほとんど影響を及ぼしていないものの、欧米の価格と比較して日本の価格が低く結果として日本市場の魅力は海外と比較して相対的に低下しつつある。

再生医療等製品の算定を式のあるべき姿として、既存の算定方式に加え、医療費や社会的価値に基づいた価格算定や既存治療に対する付加価値を上市後にも反映できる仕組みを想定している。製品の多様性を大きく定量化することが難しい製品特性や価値も想定されるが、再生医療等製品独自の価格体系を作るなどで対応が可能ではないかというふうに考えている。

また医薬品と同様に一定期間価格が維持されるよう、新薬創出等加算制度の見直しも必要と考える。再生医療等製品の価値や特徴、多様なイノベーションを評価できる新算定方式の導入を進めるべきと考えており、FIRMとしても現状の課題を整理しつつ、具体案の検討を進めておりますので、引き続きご理解いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

19ページをごらんください。3枚のスライドで再生医療の将来展望について説明する。20ページをご覧ください。このスライドでは各モダリティの2020年と2030年時点でのグローバル市場規模の予測および2020年から30年の成長率を示している。赤枠で囲んだところが再生細胞医療、遺伝子治療に関するデータだ。既存の医薬品と比較して、2020年時点の市場規模が小さくあるが、10年の成長率は総じて高い結果となっている。

21ページをごらんください。再生医療等製品が上市されることで、それを支える周辺産業の市場も拡大する。再生医療は、その製造方法を一つとっても改良の余地が大きい分野だ。
臨床医が再生医療等製品を使用し、臨床現場で得た知見を製薬メーカーにフィードバックすることを起点としたり、リバーストランスレーションリサーチが機能すれば、周辺産業と製薬メーカーがプロセス改良に取り組み、新たなビジネスチャンスが生まれる。その中でベストインクラスの製品ができればグローバル製品となり、さらに市場が拡大する可能性を秘めている。

一方で先のスライドでも示したが再生医療等製品により患者が完治して、患者さん本人やサポートをされておられたご家族が社会に復帰すれば、結果として生産性が向上することも期待される。再生医療等製品の持つ社会的価値を含め、その潜在的なインパクトは大きい。

22ページをご覧ください。改めて再生医療全体の伸びしろを示す。一つはプロセス構築だ。ベストインクラスの製品の創出によるグローバル展開や、海外患者を日本に呼び込むインバウンド消費の拡大は、日本初の再生医療を世界の患者に届け、産業成長させるとともに、
国益にも資することになる。また、そのためにはリバーストランスレーショナルリサーチに資する医工連携ができる人材や、細胞培養、ベクター製造にかかる人材の育成も必要となる。

もう一つ周辺産業の発展だ。産業のプラットフォームを構築し、基盤技術の知財を確保することも日本が勝ち残る道筋だと考える。そのためには、国内基盤技術を支える周辺産業メーカーへの支援も必要だ。また国内の再生医療が進捗することで、周辺産業の国内ビジネスの機会も創出されるだけでなく、再生医療等製品のグローバル展開を通じて、周辺産業メーカー、こういった製品もアウトバウンドの可能性が広がる。このように再生医療製品のみならず周辺産業も含めた新たな市場を創出する裾野の広い産業と捉えることができる。

新しい資本主義のグランドデザイン実行計画で再生医療、細胞治療、遺伝子医療の研究開発投資に言及いただいているが、本領域では製薬メーカーによる新たな治療手段の国民の提供のみならず、CDMOを含む周辺産業への発展を通じ、国益に資するものと考える。黎明期である再生医療を成長産業としていくため、我々も引き続き国と連携して参りたいと思う。包括的協議の機会をいただければと思う。

次のページは本日のまとめでございます。大変駆け足な説明でありました。説明は以上です。ご清聴ありがとうございました。

遠藤座長:続きまして⽇本医薬品卸売業連合会から発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【⽇本医薬品卸売業連合会 鈴木賢会長】

⽇本医薬品卸売業連合会の鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。初めに、今回薬価制度と流通制度を一体的に議論できる場を設けて頂いたことに深く感謝申し上げます。

さて、医薬品卸売り業者は全国どこでも休みなく医療機関、薬局に届けており、それらの医薬品が患者の皆様に使用されている。これにより、私達は日本の医療の一端を支えている業界であると自負している。また、医薬品の取引価格は、医療保険制度にも取引先にも大きな影響を与えるものであり、強い責任感のもとで、適正な価格形成に努めてきている。しかし、医薬品卸は薬価制度の影響を強く受ける特殊な流通の中で、長い間苦しい状況に置かれてきた。

薬価、流通、産業構造を総合的に議論していただけるこの場で、ぜひ薬価とは何か、薬価制度が流通にどのような影響を与えているか、関係者全てに望ましい制度は何か。そういうことについてご議論いただくことを切に願っている。薬価制度の影響、特殊性は、例えば、薬価は事実上、上限価格なっていること。一方、価格は交渉で決まるが、小包装か大包装か、100錠包装か、1000錠包装か、一店舗の個人薬局か、また400店舗の上場株式会社薬局か、それでおのずと変わることになっている。

このため、価格差は存在することもあるが、制度があるために必ず「薬価差」と呼ばれている。供給不足でもコスト高でも値上げができない構造である。制度のある結果として医薬品流通があること。このような状況に置かれていることをぜひご理解いただきますようお願いしたい。以上、申し上げた上で資料を説明する。

まず1ページをご覧ください。医薬品流通のあらましだ。患者の手元に医療用医薬品を届けるまでの流通過程では、製薬企業、卸、医療機関、薬局の間で自由な競争のもとで、それぞれの取引が行われている。その一方で価格形成は、公定価格制に市場競争原理を融合させた構造になっている。また、従来からの医薬品流通特有の取引慣行を改善するために、厚生労働省が定めた流通改善ガイドラインに沿って全ての流通当事者が、その取り組みを進めている。

2ページをごご覧ください。こちらは医薬品流通における医薬品卸の機能を示した。医薬品卸の基本的な使命は、いかなるときも必要なところに必要な医薬品を届けることだ。下の図に示したように、私達は約1万3000品目の医療用医薬品を、離島・山間部を含めた全国約24万件の医療機関や薬局へ日々供給している。医薬品卸は単に医薬品を配送しているだけでもない。医薬品の流通過程における医薬品卸の機能は極めて多岐にわたっている。通常考えている物流機能、商流機能をはじめ、情報提供機能や、需給調整機能、ライフライン機能など、持続的な安定供給に貢献しております。それぞれの概要について下の図に示している。

3ページをご覧ください。医薬品流通の特徴についてまとめたものだ。下の図は取扱商品の特徴、流通過程におけるニーズ、それに対する医薬品卸の対応の三つの観点で、医薬品流通の特徴を関連付けて示した。まず、取扱商品の特徴だ。ここでは生命関連性、高品質性、多種多様性、需要周期の不規則性が挙げられる。これらの特徴を持った商品を取り扱うにあたっては、その流通過程に於いて以下に示した様々なニーズが発生する。こうした医薬品特定のニーズに応えるためにも、医薬品卸が、持っている機能を複合的に駆使することで、安定的な医薬品供給を支えている。また、国民の命を守るという強い使命感のもとで流通現場の担当者一人一人がこれらの対応に臨んでいることを申し添えて頂く。

4ページをご覧ください。具体的な医薬品卸の対応の実例を3つ紹介する。1つ目は、災害パンデミック時に備え対応の実例だ。医薬品卸はいつ発生するかわからない災害に迅速に対応できるよう、日頃より支店、物流センターの免震、耐震化や非常用電源設備など、様々な投資を行い、常にその備えを強化している。これらの設備投資以外にも、新型コロナウイルス感染症に伴う医薬品供給など経験を踏まえて、今後はパンデミック時における配送体制を強化していく必要がある。

5ページをご覧ください。2つ目は、地域医療との連携の強化の実例だ。過去の災害時の経験を踏まえ、医薬品卸は、地域医療との連携を強化し、有事の際の医薬品の安定供給を通じて、地域医療を支えるために取り組んでいる。また、国、地方自治体、医師会、薬剤師会との連携強化を常に図っている。下の図は、宮城県と福岡県における実際の事例になる。

6ページをご覧ください。3つ目はジェネリック医薬品の需給調整に係る対応だ。医薬品卸は現在も数千品目を対象にして、ジェネリック医薬品の需給調整の対応に追われている。欠品、出荷調整に係る業務は、医薬品卸だけでなく、メーカーや医療機関など全ての流通当然にとって大きな負担となっている。現場担当者が、毎朝1時間から1時間半かけて取り先からの問い合わせ対応や、代替となる医薬品の情報確認に追われているような状況だ。また、民間調査会社の調査では、医薬品卸全体でこの需給調整に548億円相当のコストが費やせると試算されている。現場では対応する担当者の精神的な負担も大変大きく、単純に金額で測ることができない状況になっている。

7ページをご覧ください。医薬品卸を取りまく環境として、流通現場での業務負担増加と、医薬品卸の経営状況の二つに焦点を当てている。まず、流通現場での業務負担について。2020年以降のコロナ禍にあっては、医薬品卸は行政からの要請に応じて、コロナワクチンや、検査キットの配送に尽力している。このようなコロナ対応に関連する業務負担の大幅な増加に加え、先ほど、説明したジェネリック医薬品の需給調整にも追われており、今でも医薬品流通の現場の逼迫状況が続いている。こうした状況に追い打ちをかけるように、中間年の薬価改定実施における薬価引き下げ、右肩上がりのガソリン代、電気代の悪化が医薬品卸の収益構造の悪化に拍車をかけている。

8ページをごらんください。2つ目の医薬品卸の経営状況について。調整幅2%以降の平均乖離率がおおむね一定なっている一方で、市場拡大算定の適用拡大や長期収載品の段階的価格引き下げなど、制度面での影響に加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、ここ最近の卸の経営状況は危機的な状況になっている。

先ほど話した中間年改定による薬価引き下げ、ガソリン代などの物価上昇の影響を踏まえると、今後の経営状況がさらに悪化する可能性があると危惧している。

9ページをご覧ください。薬価制度に係る課題について4つの項目を取り上げている。まず薬価制度のあり方について、2点述べさせていただく。

1つ目は、薬剤費抑制を大前提とした薬価改定が繰り返されることで、薬価が下がり続けている問題だ。下の図が示すように、上限価格である公定薬価が設定され、薬価が引き下げる仕組みの中で、類似の引き下げが医薬品卸のみならず、全ての流通当事者の経営基盤に歪みを抱えている。加えて現行の薬価制度では、ガソリン代、電気料金などが急騰した場合の対応が想定されていないことも課題と認識している。

2つ目は、薬価差です。市場実勢価格の加重平均に基づく薬価算定ルールがある限り、常に加重平均値より安く購入する取引が存在することとなって、薬価差がゼロになることはない。しかも、医療機関や薬局の通り先の属性によるバイイングパワーの違いによって、薬価差が偏在する弊害が生じている。医療保険制度における公平性維持の観点から改善を要する課題と考えている。下の図で、負のスパイラルと図示した通り継続的に薬価が低くなる状況下で、納入価での下落が常態することによって、医薬品卸の収益構造が循環的に悪化している構図が出来上がっている。この構図が医薬品の安定供給の基盤を希釈させている。

10ページをご覧ください。ここでは中間年の薬価改定をとり上げている。平成28年度の薬価制度の抜本改革に向けた基本方針において、中間年においては価格乖離の大きな品目について、薬価改定を行うこととあったが、令和3年度の薬価改定においては、改定対象品目が約7割に及ぶ結果となった。価格乖離の大きな品目を厳格に、定義した上で、それのみを対象とすべきではないだろうかと思っている。

この基本方針では、改革と合わせた今後の取り組みとして、関係者の経営実態把握、また安定的な医薬品流通の確保、流通改善を進めることが明記されている。しかしながら、これらに関しては未だ大きな進展が見られていない。

11ページをご覧ください。調整幅について2つの課題を整理した。まず社会保障費抑制の財源的な手当として薬価を引き下げる財政手法が、既定路線になっている中で、財政規律を重視する観点から、調整幅の見直しが議論されている。薬剤費を安定させるために設けられた調整幅は、医薬品卸のみならず全ての流通当事者にとって重要な役割を果たしている。仮に調整幅が引き下げになれば、医薬品の継続的な安定供給にとって、重大なリスクとなっている。

12ページをご覧ください。2つ目です。調整幅の廃止、縮小は医薬品流通現場の柔軟性、機動性を損なうリスクとなり、持続的な安定供給に致命的なダメージを及ぼしかねない。医薬品卸の視点を考えた場合に、調整幅は多面的な調整弁として機能していると考えている。下図の医薬品卸の視点で考える調整幅の意義をご覧いただきたい。離島山村の配送コストの地域差など異なる取引条件による生じる納入価のばらつきを是正すること。薬価改定による価格下落のスピードを緩和する。また、自然災害やパンデミックなどの不測の事態に備えるなどの調整幅や意義を上げている。

13ページをご覧ください。中間年薬価改定により、若干の下落スピードが加速する中で仮に調整幅がなくなった場合には、この下落スピードに拍車がかかることが危惧されている。下の図は仮に中間年の薬価改定を全品目対象で行った場合と、中間年改定を行わなかった場合のシミュレーションを示したものだ。2020年度の薬価を100とした場合、10年後の薬価は中間年の薬価改定の行われなかったときは73.5ですが、中間年の薬価改定を行うと73.5から54.0へ下落スピードが加速している。また、現在2%の調整幅がなくなった場合には、54.0から43.5にさらに加速することとなっている。

14ページをご覧いただきたいと思う。流通改善の課題について。流通改善ガイドラインに沿って取引慣行を見直すべき流通改善の取り組みを進めているものの、ガイドラインが目指すゴールに到着するまでには未だ道半ばの状況だ。医薬品卸の自助努力だけでは解決できない課題も多く残っているのが実情だ。主な課題認識を検討すべき項目を4つ整理した。

1つ目の課題は取引。川上取引における仕切価、割戻し交渉の改善について。主に検討すべき項目としましては、一次買差マイナス解消に向け、市場実勢価を踏まえた仕切り価設定をお願いしたいということ。仕切価、割戻し交渉のあり方について検討する必要があると思う。この2点を挙げております。

次に、川下取引をおける総価交渉の取引慣行の是正について。主に検討すべき事項としては、総価交渉の取引慣行から脱却を図るべく、単品単価交渉の対象拡大のためのロードマップを策定すべきではないかと思う。制度を見直すことで、単品単価交渉のさらなる拡大に繋がる仕組みを構築できないだろうか。単品単価交渉が浸透するよう、入札による契約についても、契約に至る過程の検証をしていただきたいと思う。この3つの点を挙げております。

15ページをご覧ください。同じ川下取引における頻繁な価格交渉是正についてだ。主に検討すべき項目としては、妥結価格の頻繁な変更は可能な限り回避すべきである。薬価調査の透明性を確保するためにも未妥結減算制度を形骸化させない再交渉を防止する仕組みを検討できないだろうか。この2つを挙げている。

最後に医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉についてだ。主に検討すべき項目として価格交渉を委託する場合においても、委託者および受託者は、個別の取引条件を勘案した単品単価交渉を進めるよう努めるべきであると思っている。受託者においても、流通改善ガイドライン遵守の周知徹底に取り組むべきではないか。この2点を挙げております。単に表面的に単品ごと交渉すれば良いのではなく、医薬品の価値に見合った交渉や配送コストなどの取引条件を加味した交渉の共通理解を徹底すべきだ。

16ページをごらんください。最後に、今後の対応の方向について3点述べさせていただきます。

まず財政規律に偏重することなく、持続的に医薬品の安定供給を可能とする薬価制度に見直すべきだと思う。その際には自由な競争を阻害する仕組みにならないよう十分に注意すべき。なお、安定確保医薬品、不再算定品目などについては、自由競争では限界があるので、何らかの配慮が必要であると考えている。医療保険制度における公平性を維持するため、過度な薬価差偏在を解消する仕組みや、急激な物価上昇においても、適切なコスト転嫁が可能となる柔軟な価格形成の仕組み、さらに全体として適正な薬価差、適正な流通コスト負担など、公正かつ公平となるような償還価格の仕組みをぜひとも検討していきたいと考えている。

2つ目は中間年薬価改定については、慎重に対応すべきであり、調整幅などについても引き下げるべきではないと考える。3つ目は、制度を見直すことで、流通改善に向けて、当事者の行動変容を促す仕組みを構築すべきであると考える。

最後に将来を見据えた新たな展望を開くための医薬品卸の取り組みについて触れさせていただく。医薬品卸は社会経済状況の大きな変化に対応しつつ、医療の向上に貢献するため、医薬流通産業としてDX、GX等を推進し、新たな情報や付加価値の提供に努めるとしている。詳細はお手元のパンフレットをご覧いただきたい。説明は以上です。どうぞよろしくお願いいたします。

遠藤座長:どうもありがとうございました。それでは最後にクリコンリサーチ&コンサルティングからご説明をお願いしたいと思います。

【クレコンリサーチ&コンサルティング 木村仁代表取締役社長】

クレコンリサーチ&コンサルティングの木村です。本日は国際比較から見た日本の薬価制度と医薬品流通について第三者的な立場で説明する。スライド4ページをご覧ください。前回(9月22日)の有識者検討会で製薬協、PhRMA、EFPIAが意見陳述したのは、特許品の自国への投資誘引力を薬価制度でしっかり手当しないと、国家安全保障、国民へのアクセスにつながりますよ、という話がメインだったと思います。

米国のバイデン大統領は2月にムーンショット計画と呼ばれるゲノム診断を中心に、がんを半減させる政策を打ち出した。9月12日にはバイオ産業のイニシアチブ戦略という大統領令にも署名した。これはオバマ政権のときから計画されていたものだが、クリントン政権時代のインターネット戦略を彷彿させるようなもの。バイオゲノムの総合戦略を世界的に展開してイニシアチブをとっていこうという戦略だ。

これに対して日本はどうか。国家の経済成長を結びつける産業を世界に出していくというのは、ここでの話ではないかもしれないが、一つ議論に加えていただきたい。自国への投資誘引力というところは、薬価制度を改善することによって国家安全保障につながると思うが、いまバイオの世界では、先ほど再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)から話があった通り、遺伝子治療とか、細胞系の治療とかいろいろなタイプのものが出てきている。

次のページのスライドをご覧頂きたい。このスライドは9月12日にバイデン政権が発表したバイオ産業のイニシアチブ戦略だ。当然包括的に米国はバイオで世界を制そうとしている。これに対し日本はかなり遅れていると思う。低分子の医薬品と違ってバイオの製造、バイオマニファクチャリングのところで、ここでの誘致、これはmRNAも含めて、この競争に、あるいは欧米のエコシステムの中に入っていかないと、もう日本の役割がこの医薬品産業でなくなってくると危惧している。

バイオの製造というのは低分子の製造と違って付加価値だ。バイオ医薬品がどうやって保護されるかというと物質特許だけではなくて製法特許によって保護されている。昔、日本は中間型の製造モデルで付加価値を出して、経済成長遂げたように、この付加価値のある分野において、製造を全くしていない状態というのは非常に危険であると。逆転の発想で、このアジア諸国において、どうやってこの日本の経済成長に結びつけられるか、ハブ拠点を、工場の分野、製造の分野で作れるかという点で、もう負けの瀬戸際にあるのではないか。中国、台湾などに負ける瀬戸際にあるので、薬価制度とあわせて、先ほどの自国への投資誘因力というところを合わせて考えていただければ幸いだ。

米国政府もグローバル経済をパートナーとともに構築すると書いている。このままでいくと韓国、台湾にそのパートナーリングが行ってしまう可能性が非常に高い。一刻も早く先ほどFIRMから話があったように、製薬企業の工場の誘致、mRNAのワクチンの工場の誘致も含めて、あと受託開発製造企業CDMOの産業の活性化、これが中期的には非常に日本のわかれ道になると私は予測している。

次をお願いいたします。こちらが今日本の実際の実情です。スライドに示した左側のボックスが薬剤費ベースで見たときに、どういうタイプの医薬品に金が使われているかということを示した。ご覧の通り7割が新薬創出等加算品と、その他特許品だ。

約10兆円の医薬品市場は上位20製品で16.5%占める。それぐらいの占有率があるが、その中で今のところ日本は34.5%がオリジナル企業としてのシェアがある。今後3年でこの数値が激減するだろう。一部の抗がん剤を除き、この(スライドの)青色系で示している部分はほぼ欧米のオリジナル製品に変わっていく。しばらくすると中国が出てくる。日本はオリジナルでもないこれら殆どのバイオ系製品の工場すら置いていない。輸入に頼っているという状況がさらに加速すると予想している。

一方で(スライドに示した)右のボックスをご覧ください。実際の規格品目数を示しているが、この品目数で見ると、実に55%が後発品だ。多品種少量生産という話もあったが、こちらの原料が、どこの国から来ているのかということはご覧の通り(中国、韓国)ですが、粗製品から最終品で見ると中国から半分ぐらい輸入している。原薬で見ると中国と韓国で半分だ。

もっとその恐ろしいのは、出発原料まで辿っていくとほぼ中国だ。これ紛れもない事実であり、この日本の空洞化を危惧している。日本は何かこの両サイドのバイイングパワーが極めて弱い立場にある。早くセリングパワーで売れるものを作っていかないと、外交交渉上も非常に弱い立場なる。それを制度が阻害してないかという視点で見ていく必要がある。地政学的なことも含めて制度が阻害していないかという視点が極めて重要かと思う。

ここから制度の話に入っていく。次のスライドをお願いいたします。基本的に国民皆保険、イギリスのように皆保険サービスが一般税で賄われている国もある。アメリカは公的・民間保険の両方がある。基本的に皆保険サービスが入っているヨーロッパの国々では、これはいい悪いでは全くないが。いろんな歴史的、文化的、経済的背景があって全く違うわけですけれども、処方権のあるなし、特許のあるなしで薬価制度というのは基本的には異なっているのが通常だ。

ここで着目したいのは処方権の有無等ではなく、特許の有無でどう違うかということ。基本的には特許は製薬企業が設定する。ただ、どの国も面白いことに、「その代わりに」というものが必ず存在する。ドイツの場合は上市後1年で早期有用性評価というものがあって、それがわかれ道になる。

フランスは新しく法案を通して日本のような拡大再算定を入れており、随時薬価変更できるような仕組みを導入している。何も日本だけではないということ。ただ、原則、薬価はメーカーが設定する。イギリスもギブアンドテイクの関係を契約として、日本でいう製薬協と厚生労働省の間で「VPAS」というものを締結している。後発品に関しては国それぞれ。ドイツは基本的に同種同効品の参照価格グループに組み込まれる。
フランスは日本と似ていて、特許が切れたら「何掛け」とか、置き換え率によって、その後の薬価が変わっていく。

ここで一番言いたいポイントは、そういったことよりも、日本はフランスの後発品促進策を真似ていた訳ですが、フランスと日本の大きな違いは何だと思いますか?実は、フランスとかドイツはEUに入っていれば、医薬品が足りなければEU域内で、どこからでも取ってくることができる。これが大きな違い。関税も手続きも必要ない。これを並行輸入と言いう。

日本はフランスと同じような制度を入れていたが立場が違う。日本は単一経済国家なので、自国の分をしっかり確保しなければいけないという立場の違いがある。

次のスライドを願いいたします。このイギリスとフランスとドイツを比べると非常に大きなコントラストが現れている。日本のように薬価固定、薬価の中を医療機関、薬局、卸、メーカーで自由に取り合ってくださいという国は、イギリスしかない。一方でヨーロッパ大陸側は、卸も薬局もマージンが固定されている。処方権のある病院、診療所は別だが、薬局市場はマージン率が固定されている。先ほど申し上げたように、イギリスの場合薬価が固定されていて、その間、取り分は自由ですよと言う代わりに三つの仕組みが入っている。

一つは、薬局の薬価差の返納。イギリスの場合は、皆保険サービスは国が支払いとなるので、国に直接、過剰な薬価差が生じた場合、具体的には年間8億ポンドを超えた場合には、今年9月までは、国の返済テーブルに基づいて薬価差を国に返納するという仕組みがあった。また新薬企業も実は自由に価格設定できる代わりに、年成長率2%を超えた場合に、複雑な計算式に基づいて、それぞれの新薬系製薬企業のVPASという協定に入って参加している企業は一定額の利益を製薬企業に戻さなければいけないということ。これも非常に大きな問題になっている。2%大きく上回ってしまうと、その変数変換率のイメージで普通に計算すると2022年度は、19%も返納しなければいけないと。これはあまりにも大きすぎるということでまた両者間で話し合いが行われて15%で妥結した。

ただ、こういったような業界団体と政府の間で協定を結んで、薬価は固定するけれども、別の形で返納するという仕組みがイギリスにも入っている。また後発品の部分ですが、世界で唯一、皆保険が入っている国で市場実勢化に基づく薬価改定があるのがイギリスにおける薬局の後発品市場。ただし、あまりにも低くなった場合には、薬価を変えるのではなくて医療機関が支払基金等にレセプト請求する際に、一時的に償還価格を引き上げる償還価格調整制度というものがある。

問題なのは、ここで申し上げたいポイントは、先ほど並行輸入が可能なフランスとほぼ同じ施策を日本がとってきたというところ。薬局の後発品調剤体制加算については、フランスの場合は減算もあった。あと、後発品への置き換え率によって薬価を引き下げるとか、後発品の初収載時にオリジナルの何掛けとか、そういった仕組みはほぼ日本と類似している。ただ、彼らはいくら足りなくなっても外国から取ってくることができるというそもそもの違いがあるところに、日本の難しさがあるというふうに思う。

次のスライドをお願いいたします。先ほど申し上げたように、あまりにも価格が下がりすぎた場合には、価格譲歩制度があり、日本で言う薬価収載リストに主に後発品が載ってるパートがある。ここに関しては、申請をすれば、例えば原価を見せて申請すれば薬価は変わらないが、緊急的に薬価収載に書かれているリストは変わらないけど、薬価収載以上に償還できるという仕組みがある。それは簡単に申請もできて、それが決定したらすぐその薬価収載リストの横に緊急の償還価格が出るような仕組みがある。スライドに示したリンクに行っていただければ、薬価より高い償還価格がついている成分が散見されることが分かると思う。

次お願いいたします。ここから卸連の鈴木会長から話のあった流通部分について、これを海外から見たときどうなんだというところを少し説明させていただく。単純に申し上げて先ほど申し上げましたようにヨーロッパは並行輸入業者、これも卸だ。平均3社が間に入る。国境をまたいでですので、その間に偽薬が入ることが大変問題になっている。アメリカは一見シンプルな感じがするが、州ごとにレギュレーションが違う。大手卸であっても州ごとにレギュレーションに対応する。日本は単一のレギュレーションで、まして基本的には卸が1回しか絡まない単層構造なので、メーカーと医療機関の間に入って、需給調整や偽薬を購入防止につながっている。非常に社会的に見たら効率的なシステムであるというふうに思う。

次をお願いいたします。先ほど卸連の鈴木会長が陳述した部分だ。欧米の卸にはMSが存在しない。例えば、ハリケーンとか来たときに、褒められるのは卸でなく、卸さんが頼んでいる配送業者だ。配送業者の方が医療機関の顔がわかっている。という状況で彼らは基本的に物流センターを持って、それの差額で稼ぐ。いかに安く仕入れて、高く売るか。日本は欧米よりも社会インフラ的な側面が非常に強い。こういった機能を持つことによって、災害時に対応できるということが言えるかと思う。

次お願いいたします。基本的に欧米では製薬企業がやっているような仕事も日本は全て卸がやっている。その業務量も毎日配送する先数で見まるとアメリカより多い。これだけ業務量の違いがあるということはご承知おきいただければと思う。

次お願いいたします。これは弊社調査も結果だ。いま卸の労働時間の2割以上が出荷調整に費やされている。それを人件費換換すると548億円。私が申し上げたいのは卸にも負担が掛ってくるが、主に低薬価品を中心とする出荷調整費に関しては医療機関、病院、診療所、保険薬局でもコストや手間がかかっている。恐らく、詳しく調査してみないとわからないが、卸で548億円ですから、(医療機関や薬局では)軽く1兆円、もしかしたら2兆円レベルの予見性のない部分で負荷がかかっている可能性は高いと思う。あくまで私見ですが推察する。

次をお願いいたします。これは厚労省で調べていただかなければいけない部分なんですが、やはり日本の場合、地形的にヨーロッパと比べると地域差が大きい。また都道府県のあり方という問題もあり、1億円を卸が売上げるためにカバーしなければいけない可住地面積をみると、東京を0.7大阪は1.0とすると、軒並み地方はその3倍から4倍をカバーしなければいけない。フランスやイギリスと比べても地域差が大きい傾向がある。離島・へき地の問題はお手元の資料をご覧ください。

スライド19ページをお願いします。こういったこれ状況証拠しか揃っていないのですが、並行輸入が認められない国で薬価差内の自由な取り合いということであれば、当選きつくなってくるというのは市場の競争原理が働けば当然のことだ。いつか原価割れを起こす。一方で日本の経済力は相対的に弱回っていって、調達力のバイイングパワーがどんどん減って破綻を迎えるのは明白であると思う。

公的なエビデンスが必要だが、このままだと民間製造企業、製薬企業、民間流通企業、医薬品卸、保険医療機関が後発品だけでなく、局方品、輸液などを採算ベースで全国の患者に安定供給することはもう状況証拠から見て現実的に不可能であることは明白であるというふうに思える。エビデンスは必要ですが状況証拠から見ると不可能に見える。

それではどうすれば良いか。最後にお話させていただく。先ほどのイギリスの償還価格調整制度に当たるのが日本で言うと最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品、安定確保医薬品というところだ。東日本大震災の記録を見てもわかる通り、国家が有事になったとき、また、もし国際的な有事になった場合に、最初に必要とされる医薬品や医療製品は高額なものでなかったりする場合が多い。例えば2年前に鎮静剤の供給が不足した。たったそれだけで医療現場は大変なことになる。これが3000~5000品目と増えていっている状況というのは緊急事態であると考えており、まずできることから早くやらないと、日本は非常に危険な状態にあるというふうに考え、感じている。

ここで言う最低薬価、不採算品再算定、基礎的医薬品などのルールを決めたときと、今の状況とあってない。流通コストが考慮されてないということが言えるのではないか。他にも日本薬局方は日本独自の規格によって、海外の原薬や最終製品を輸入しづらいという状況がある。在庫偏在等を見る上でサプライチェーンの見える化システム、また一番重要なのは、米国のバイデン政権、民主党政権がああいうふうに打ち出しているように、国家として低薬価品の原料を含めた調達。また高付加価値品、イノベーション、イノベーティブなものをどうやって、そこでどうやって日本の役割を果たしていくのかという戦略を国家のトップレベルでパートナーシップ戦略を結んでいく必要があるということかと思う。

本日は細かな試案として最後に2つのことを申し上げたい。次をお願いいたします。最初の提言は、低薬価品の短期緊急対策ということ。これは何も後発品だけではない。再三申し上げるが、局方品ならびに輸液などを含む。

私が申し上げたいポイントは5点ある。1つ目は最低薬価の問題。3分の1が原価割れ。最低薬価を引き上げる2つ目は、同一成分においてマーケットシェア、例えば責任を持って30%以上同一成分で出す、あるいは一社で100%出している、あるいは今後これぐらい製造することを約束する後発品企業に対し、特別に銘柄別収載を認める。それを薬価内で手当する。また3つ目は急激な原価上昇において、そういった銘柄別収載されたような品目に関して特例で薬価を引き上げる。暫定的にイギリスのような制度を導入する。4つ目は流通コストを明確にするということ。その上で5つ目は、いまの安定確保医薬品の最後の成分の線引き何を必須医薬品とするのかという線引きの議論を早急に行うことが賢明ではないかと思う。

時間もうだいぶ超過しているので、もう一つの問題である日本薬局方について触れる。日本独自規格が原料調達の課題になっている。緊急時は日本薬局法を世界で共通になっている米国薬局方や欧州薬局方を一時的に許可するという措置を取っていただくことを最後の私の提案とさせていただく。

お時間を超過して大変申し訳ございませんでした。以上で私の話を終わらせていただきますご清聴どうもありがとうございました。

遠藤座長:貴重なご報告ありがとうございました。十分ご説明できなかったところは、ディスカッション中で場合によってはまたご説明可能かもしれませんのでよろしくお願い致します。
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