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製薬各社で入社式 自律型人材としての成長に期待 経営トップが訓示 メタバースや新研究拠点開催も

公開日時 2023/04/04 04:52
新年度の始まりにあわせて4月3日、製薬各社で入社式が行われた。各社の経営トップは入社式の挨拶で、「常に学び続けてほしい」、「主体的に行動しようとする意識を持ってほしい」と呼びかけ、指示を待つのではなく、自らの意思で考えて能動的に業務を遂行する自律型人材としての成長に期待を寄せる内容が目立った。また、社会が変化するなかでもニーズをつかみ続け、患者の視点に立った幅広いソリューションを提供していく重要性も異口同音に示された。

世界的な経済情勢や高齢化の進展など、製薬ビジネスも激変期を迎えており、産業構造やビジネスモデルに対する変化が求められる時代となった。コロナ禍を経て、各社がDXやデジタル化を進める中で、23年度入社式はメタバースを取り入れたハイブリッド形式での開催や、革新的創薬のイノベーション拠点となるべくライフサイエンスパークを入社式の会場に充てる企業があるなど、特徴的な試みもあった。

◎武田薬品 メタバース活用して従業員約200人参加


武田薬品では今年、リアルと仮想空間のハイブリッド形式の入社式を行った。大阪の研修所から新入社員がリアルに出席する一方で、オンライン会議システム「Teams」 からは経営陣、メタバース空間から全国各地の従業員約200人が参加した。

入社式では、クリストフ・ウェバー社長CEOや古田未来乃ジャパン ファーマ ビジネス ユニット プレジデントがTeamsから訓示。前年度に入社した社員は、メタバース上で歓迎のメッセージをプレゼンテーションした。これに対し新入社員は、研修所からリアルに決意表明を行った。

◎武田薬品・古田JPBUプレジデント 学び続ける力が患者や社会に価値を届ける源泉になる


武田薬品ジャパンファーマビジネスユニットの古田未来乃プレジデントは、「タケダの存在意義は、世界中の人々の健康と、輝かしい未来に革新的な医薬品で患者さんに貢献するということだ」と強調。その実現のために、革新的な医薬品を作るだけではなくしっかり患者に届けるという企業理念や、「誠実:公正、正直、不屈」を掲げたタケダイズムを説明した。

そして、世界中の社員や経営陣は、「このタケダイズムを道しるべとし、『PTRB』を日々の行動指針にしている」とし、PTRBとは▽患者に寄り添い(Patient)、▽人々と信頼関係を築き(Trust)、▽社会的評価を向上させ(Reputation)、▽持続可能な事業を発展させる(Business)――ということだと解説した。吉田プレジデントは、「経営会議でも難しい決断を、このタケダの価値観、行動指針に沿って行っている」と話した。

新入社員に対しては、「『何も変わらない人は、なにも変えることができない』という言葉があるように、常に学び続けるということを意識していただきたい。学びを止めないで、ずっと学び続けていくという前に進む力が、組織の力になり、患者さん、そして社会に価値を届ける源泉となる」と呼びかけた。 

◎第一三共・奥澤社長 高いデジタルリテラシーを持つ皆さんの柔軟な発想に期待」

第一三共の奥澤宏幸社長は、同社のミッション遂行を支える最大の強みは「サイエンス&テクノロジー」だとした上で、最近では抗凝固薬・リクシアナや抗体薬物複合体(ADC)・エンハーツといったブロックバスターを生み出してきたことを紹介した。特にエンハーツは、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2022)の最重要演題が発表されるプレナリーセッションで、HER2低発現乳がんの適応取得の根拠となった臨床試験結果を発表した際、同学会では稀といわれるスタンディングオベーションが送られたエピソードなども披露。「こうした取り組みの中で、当社の売上高は1兆円を超え、日本企業の時価総額ランキングで10位以内に入り、医薬品セクターの中では1位となった」と話した。

そして新入社員に対し、「皆さんも第一三共で、病に苦しむ人を救う一員として、成長していかれることを楽しみにしている」と期待を述べた。

また、「近い将来、『デジタル革新』と『多様な人々の創造力』によって新たな価値が創造される社会が生まれることが予想される」と指摘。第一三共は多様なデータや先進技術を活用して、一人ひとりに寄り添った最適なサービスを提供する社会の実現に向けて「Healthcare as a Service」に取り組んでいくと会社の今後の方向性を示した上で、「高いデジタルリテラシーを持つ皆さんの柔軟な発想に期待している」とも語った。

最後に、社長自身の社会人人生を振り返りながら、「日々悩みながら挑戦を重ねてきた」とし、「失敗は必ず活かしていけるものなので、決して挫けることなく、前を向いて困難を一緒に乗り越えていこう」と呼びかけた。

◎中外製薬・奥田社長 困難を乗り越えるために『患者さんへの想い』が絶対欠かせない

中外製薬グループの入社式は、新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」にて行われた。

中外製薬の奥田修社長CEOは、同社の価値観は「患者一人ひとりの健康と幸せを、何よりも最優先に考えるということ」だとし、「『患者中心』という価値観を心に刻んで、仕事に向かってほしい」と呼びかけた。この価値観は、関東大震災の中で創業者が薬不足で苦しむ患者を憂いたことがきっかけとなって始まった同社に脈々と受け継がれるDNAと言えるとも説明した。

患者に想いを馳せることや仕事の支えとして、「これまでの人生の中で、誰しも自分自身や、家族や友人など大切な人が病気にかかった経験があるのではないか。大変つらく胸が締め付けられるような経験だと思う」と述べ、病気を通じて自身が感じたつらい経験を思い出して仕事にあたってほしいとした。そして、「革新的な医薬品・サービスというイノベーションを生み出す道のりで待ち受ける多くの困難を乗り越えるためには、『患者さんへの想い』が絶対に欠かせない」と強調した。

◎エーザイ・内藤代表執行役CEO 「新たな社会善の実現に向けた幕開けを」

エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは、世界に先駆けてアルツハイマー病治療薬を開発・発売した企業としての価値観を語った。世界的に注目を集めている早期アルツハイマー病治療薬・レカネマブについて、「社会的インパクトを定量的に評価し、パブリックとプライベートへの価値の配分を定めたうえで価格を設定している」と強調した。「世界に先駆けてアルツハイマー病治療薬を発売して以来25年間、認知症の当事者や家族からは“次の薬はいつ出ますか”と問われ続け、その真剣な表情と光る眼差しを一時も忘れたことはない」と述べながら、「新たなアルツハイマー病治療薬について、日本をはじめとするグローバルでの承認取得とアクセス実現に全力を尽くすとともに、認知症当事者とご家族の皆様が安心・安全に暮らせるコミュニティづくりに産官学とともに努めていきたい」と強調した。

一方でエーザイの企業理念にも触れ、17年ぶりに改定した定款で、「人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正という社会善を効率的に実現することを社の使命として定義した」と報告。続けて「我々は社会善を実現する企業体として、患者様とご家族、生活者の皆様、介護者、医療従事者、支払者、政府といったパブリックと、株主、従業員からなるプライベートのステークホルダーズのそれぞれに価値を提供し、社会的インパクトをもたらしていかなければいけない」と述べ、「新たな社会善の実現に向けた幕開けを、新入社員の皆様と共に邁進していきたいと思う」と意欲を示した。

◎小野薬品・相良社長 誠実、挑戦、患者にとってどうかという判断基準を「肝に銘じて」

小野薬品の相良暁社長は、創業から300余年となる同社の一員として、▽法令、規則、約束を守り誠実であること、▽夢を描き、その夢に向かって挑戦を繰り返し、それを楽しむこと、▽患者さんにとってどうかという判断基準を持つこと―の3つの原則を「肝に銘じてもらいたい」と強調した。

企業理念である「病気と苦痛に対する人間の闘いのために」、「熱き挑戦者たちであれ」を引き合いに、「(当社が)目指す姿を胸に、共に革新的な新薬を提供するという使命を果たしていこう」と呼びかけた。

◎塩野義製薬・手代木会長兼社長 ニーズをつかみ続けるには従業員が学び続けるしかない

塩野義製薬の手代木功代会長兼社長CEO
は、コロナ禍が3年余りにわたって社会・経済に大きな影響を与えたことに触れながら、「SHIONOGIグループは異次元のスピードで研究開発・生産・販売体制の構築を進め、国産初の経口治療薬ゾコーバを患者様にお届けできたことは、SHIONOGIが『社会から必要とされる会社』であることが実証できた事例だと認識している」と述べた。ただ、ゾコーバの育薬やグローバル展開、新型コロナワクチンの承認取得など、「まだ取り組むべきことは山積している」との認識も示した。

社会から必要とされる会社になるためには、顧客、社会、投資家、従業員の4つのステークホルダーズと共に成長していくことが「大切」だとした。このためには、「ステークホルダーの『ニーズ』を的確にとらえ、それに応えていくことが必要」だとし、「変化し続ける世界において、『ニーズ』を掴み続けていくには、SHIONOGIグループの従業員一人ひとりが学び続けるしかない」 と強調した。

学び続けるために、▽自分の頭で考え、判断すること、▽多様性を心から信じ、楽しむ心構えをもつこと、▽コンプライアンスの順守が最も重要であること―を念頭において行動するよう呼びかけた。そして、「SHIONOGIの目的である常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供するという基本方針をグローバルに実現してくれることを期待したい」とエールを送った。

◎日本新薬・中井社長 ペイシェント・セントリシティの考え方を常に意識して行動を

日本新薬の中井亨社長は、「今日から新入社員の皆さんも将来に向けた新たな価値を創造するための大切な仲間だ」と迎え入れた。

同社社員としての心構えとして、「一人ひとりが『患者や患者を支えるすべての人のために何をすべきか』というペイシェント・セントリシティの考え方を常に意識して、各自の目標や行動に落とし込んでほしい」と強調した。また、「日本新薬は今、世界に向けて大きく羽ばたこうとするなかで若い皆さんのエネルギーが会社のさらなる成長の原動力になること、これまで以上に独自性を発揮して存在意義のある会社となるために、私たちとともに汗をかいてくれることを期待する」と訓示した。

◎沢井製薬・澤井社長 「出来ない理由ではなく、どうすれば出来るのかを考える」

沢井製薬の澤井健造社長
は、今年度の社長方針は「出来ない理由ではなく、どうすれば出来るかを考える」にしたと紹介した。この心は、「足下の厳しい環境下で、人は困難に直面した時、できない理由を探して納得してしまいがちだが、いくら理由を並べても、その先には何も生まれない」ということだとし、新入社員に前向きに考えることを求めた。

そして、考えるときには、「『なによりも患者さんのために』という企業理念を思い出してほしい。常に患者さんのために何ができるのか、出来ないことはないのか?を考えてほしい」と呼びかけ、「これから皆さんとともに、患者さんに喜ばれ、役に立つ事を喜びとして働けることを楽しみにしている。ともに頑張っていこう」とエールを送った。
 
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