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製薬各社で入社式 多様性・患者中心・グローバル展開 変革期の新たな風に期待の声 経営トップが訓示

公開日時 2025/04/02 04:53
「多様性や患者中心で新たな価値を」、「グローバル展開をさらに加速させる」―。新年度を迎えた4月1日、製薬各社では入社式が行われ、新入社員を前に経営トップがメッセージを送った。変革期の真っただ中にある製薬業界で、企業としての理念に立ち返りながら、新たな風への期待の声が相次いだ。

◎武田薬品・ウェバーCEO 「多様な人々の協力で無限の創造力と革新性が解き放たれる」

武田薬品は「DE&I」と「デジタルテクノロジー」をテーマに、東京のグローバル本社で入社式を行った。新卒新入社員28人と、障害者雇用を目的とした特例子会社のエルアイ武田の新入社員7人が参加。組織を超えた繋がりや、一人ひとりの活躍、データ・デジタル&テクノロジーの活用に焦点を当て、新しい価値や体験を創造する会社としてのメッセージが込められた。

クリストフ・ウェバー代表取締役社長CEOはビデオメッセージで、1781年の創業以来培われてきた価値観でもある行動指針として、①患者(Patient)に寄り添い、②人々と信頼関係(Trust)を築き、③社会的評価(Reputation)を向上させ、④事業(Business)を発展させること―を紹介。その上で「誰もがタケダの一員としてお互いをサポートし合い、理想的な働き方を実現しようとしており、ケアリング・リーダーシップが発揮される文化を誇りに思っている。多様な視点と多様な背景を有する人々が共通の目標に向かって協力することで無限の創造力と革新性が解き放たれると信じている」と呼び掛けた。

ジャパンファーマビジネスユニット(JPBU)の宮柱明日香プレジデントは「不易流行」という四字熟語を挙げ、「タケダが240年を超える長い歴史のなかで社会に存在し続けられているのは、タケダの揺るぎない価値観を抱きつつ、何よりも“変化を恐れず、挑戦し続けている”ことだ」と強調した。さらに「データ×デジタル×テクノロジー、AI」を活かしたイノベーションへの挑戦に触れ「急速に進化するこの時代だからこそ、私たちは人間らしさを忘れず、人間にしかできないことを考え、自分の役割、そして輝ける場所を見つけてほしい。企業の競争力の源泉、そして持続可能なビジネスの実現のためには、やはり「ヒト」が財産だ」と呼び掛けた。

◎大塚HD・井上社長 流汗悟道・実証・創造性の「経営の神髄」を披露

大塚ホールディングス(HD)はグループ各社での入社式に先立ち、3月31日に大塚国際美術館(徳島県鳴門市)で入社イベントを開催した。井上眞代表取締役社長兼CEOは「経営の神髄につながる三つの言葉」として、▽流汗悟道(本質は自ら汗を流して実践)▽実証(物事は成し遂げて初めて真理へ)▽創造性(物まねをしない)―を紹介し、「本質を掴むことで唯一無二のアイデアが生まれ、それを実現・実証することでイノベーションが起きる」と訴えた。入社イベントや入社式にはグループ全体で計約600人が参加した。

◎第一三共・奥澤社長 がんの世界トップ10へ「クオリティ・カルチャーは重要な企業文化」 

第一三共の奥澤宏幸代表取締役社長兼CEOは入社式で、「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」とのパーパス(存在意義)に触れ、「パーパスを実現する上で、強みとなるのが『サイエンス&テクノロジー』。これからも薬を待つ一人でも多くの患者さんに、革新的な医薬品という希望を届けていこう」と語り掛けた。 

業績面では、「グローバル製品の急成長に牽引されて、25年度の売上高は当初計画を大幅に上回り、2兆円を超える見通し」と説明。第5期中期経営計画の初年度にあたる21年度は約1兆円だったと振り返り、「わずか5年の間に事業規模が2倍になるという猛烈なスピードで会社が成長している」と述べ、研究開発や設備投資への積極的な姿勢を打ち出した。

同社は30年にもがん領域での世界トップ10入りを見据える。グローバルな成長における拠り所として「One DS Culture」を掲げ、「“クオリティ” にフォーカスをした『クオリティ・カルチャー』は、急激なビジネスの成長とグローバル化の真っただ中にある第一三共グループにとって重要な企業文化。その一員して世界のどこにいても、この企業文化の下で行動してほしい」と求めた。
 
◎中外製薬・奥田社長 イノベーションを届け「健康と幸せの実現」に存在意義

創業100年を迎えた中外製薬の奥田修代表取締役社長CEOは、創業の歴史に触れながら受け継がれてきた「患者中心」の価値観を紹介した。「すべての革新は患者さんのために」という事業哲学に触れ、「私たちが生み出すイノベーションを患者さんに届けることで、患者さん一人ひとりの健康と幸せを実現することが、中外製薬の存在意義。一緒に、患者さんのためにイノベーションを創造し、患者さんに届けていこう。世界のヘルスケア産業の未来を共に築いていこう」と述べた。

中外製薬グループの新入社員は253人。中外製薬単体ではMR23人を含む164人を採用した。入社式では新入社員と役員によるパネルディスカッションも行われた。

◎エーザイ・内藤CEO 「患者との『共同化』からイノベーションへつながる」 

エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは25年1月に逝去した経営学者の野中郁次郎・一橋大名誉教授の指導に触れ、「患者様と共に時間を過ごす『共同化』を通して、喜怒哀楽の理解に努めるという知識創造を実践してきた」と紹介。その上で「イノベーションはトップが理念を掲げるだけでは生まれない。『共同化』を通じた全従業員の気付き・経験が基になり、それが集合の知となることでイノベーションへつながる」と強調した。同時に「ビジネスの成就には『運』(セレンディピティ)も重要」として「日々の業務や苦労の中で考え続けた人に『幸運』が訪れる可能性がある」と語り掛けた。

◎小野薬品・滝野社長COO グローバルスペシャリティファーマへ「未来を一緒に築こう」 

新たに65人の新入社員を迎えた小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは、グローバルスペシャリティファーマの旗印を掲げて、24年に行った米国のバイオベンチャー・Decipheraの買収など「グローバル展開をさらに加速させていこうと、総力をあげて取り組んでいる」と強調。大切にすべきこととして「仕事において常に軸を持つ」「好奇心、向上心をもって学び続ける」「仲間、社会との信頼関係を築く」―の3点を挙げ、「小野薬品の強みの一つはチームワーク。協力が下手な一人の天才よりも、仲間と一緒に仕事ができる人になってほしい。グローバルスペシャリティファーマという新たなステージへ向かう今、ぜひ未来を一緒に築いていこう」と呼び掛けた。

◎田辺三菱製薬・辻村社長 「株主変更でも会社の方向性、やるべきことは変わらない」

田辺三菱製薬の辻村明広代表取締役社長は入社式にあたるキャリアキックオフセッションに臨み、三菱ケミカルグループからベインキャピタルへの売却について「新たなオーナーとなるベインキャピタルは、豊富な資金力とネットワーク、そしてヘルスケアに関する専門知識を有している会社。株主が変更となっても、会社のめざす方向性、皆さんのやるべきことは変わらない」と説明した。

さらに今後の成長に向けて「我々が飛躍を遂げるためには、国内の事業基盤を維持・強化しながら、更なる成長が見込める海外市場での拡大をめざしていく必要がある」と強調。パイプラインの強化と、グローバルと日本での製品価値最大化を「直近で解決すべき課題」として掲げ、「2025年度は皆さんの社会人としての門出であると共に、MTPCグループも新たな世界に飛び出す非常に重要な年だ」と力を込めた。

◎塩野義製薬・手代木社長 創業来の本社移転控え「グローバル本社へ生まれ変わる」

塩野義製薬の手代木功代表取締役会長兼社長CEOは企業としての変革に触れ、「SHIONOGIは2025年夏以降に創業来の本社をグラングリーン大阪の地に移す。日本以外からも社員を受け入れ、グローバル本社として大きく変わろうとしている。皆さんがSHIONOGIを次の世代にバトンタッチしていくために、社内では批判するだけでなく、何が大切か考えて積極的に提案を行うように心がけてほしい」とメッセージを送った。

入社式には新卒社員103人、キャリア入社22人の計125人の新入社員が参加。新入社員を代表して、田中佑弥さんは「多様化するヘルスケアニーズに対して迅速かつ柔軟にソリューションを提供することで患者様に最大限貢献したいと考え、入社を決意した。いち早く患者さんにヘルスケアソリューションを届けられるように頑張りたい」と決意を込めた。

◎住友ファーマ・木村社長 責任範囲や前例にとらわれず「『力強い会社』への変革へ」 

住友ファーマの木村徹代表取締役社長は、大日本製薬と住友製薬の合併から20周年という節目に触れ「この20年の歩みの中で、私たちは多くの成功と同時に、困難にも直面してきた」と切り出した。抗精神病薬・ラツーダの成功により、グローバル企業として成長したが、“ラツーダクリフ”で一転して「創業以来最大の経営危機を迎えた」と振り返った。苦境の中でも24年度は「大規模な組織改革を断行し、全社を挙げてコスト削減と収益改善に取り組んだ結果、予想を上回る速度で業績の回復を果たした」として、24年度はコア営業利益・最終利益ともに黒字化の見通しを示した。

こうした経営環境の中で、入社した新入社員10人に対し「まさに皆さんは、当社が再成長への歩みを始める年に入社された事になる」とし、「今、私たちには『力強い会社』への変革が求められている。そのためには、一人一人が自らの責任範囲にとらわれず、主体的に業務に取り組み、前例にとらわれず、新たな業務の進め方を考えていくことが必要だ。業務の効率性や費用対効果を強く意識しながら、自分たちの役割を全うしていってほしい」と呼び掛けた。新しい働き方の促進へ24年末から変革プロジェクト「V2X(Voice to Transformation)」を立ち上げ、「自由闊達な議論を通じて「当たり前」を変えていく活動を推進している」と紹介した。

◎沢井製薬・木村社長 会社は「学んだ知識を智恵に変え社会的責任を果たす場」

沢井製薬の木村元彦代表取締役社長は新入社員208人を前に新社会人としての心構えを訓示。メッセージでは「会社は学んだ知識を智恵に変え社会的責任を果たす場」として、活動の判断基準となる企業理念「使命、挑戦、願い」に触れ「しっかり頭に刻み込み、暗記するだけではなくその内容を理解することで、自分自身の行動の基準にしてほしい」と訴えた。さらに積極性や責任感、忍耐力、粘り強さを求め「これからの沢井製薬の成長は、皆さんの成長とともにある。皆さんが沢井製薬とともに大きく成長されることを祈念している」と呼び掛けた。

◎東和薬品・吉田社長 「『作業』ではなく、見て判断する『仕事』をして」

東和薬品の吉田逸郎代表取締役社長
は、安定供給体制確立に向けて生産能力の増強などの設備導入に触れ、「できる限りの増産体制を進めている」と紹介。国際化や健康関連事業への取り組みも紹介した。

その上で、新入社員に求める心構えとして「『作業』ではなく『仕事』をするようにしてほしい」と呼び掛け、「“データを作る”など機械やシステムができる作業ではなく、“データを見て判断する”仕事をしてもらいたい」と求めた。

◎ツムラ・加藤社長 「個の能力を最大限引き出し『漢方薬的組織』目指す」

ツムラの加藤照和代表取締役社長CEOは神奈川県小田原市で行った入社式であいさつし、「伝統とは革新の連続により生み出され、受け継がれていくもの。現状維持は「衰退」に他ならない。変化に順応できる、しなやかな企業であるためには、企業の基盤である私たち“人”一人ひとりが、自らを革新する覚悟を持たなければならない」と訴えた。

その上で中国や米国などの海外事業展開に触れ、「伝統を受け継ぐと同時に社会の動きや新しい技術の進展に敏感になり、変化を想像し、これまでとは違う次元で考え、革新により新たな伝統を築き上げる覚悟を持って仕事に取り組んでほしい」とエールを送った。

また、漢方は複数の生薬から構成され、その生薬一つひとつに優れた薬効があるとして「同じ生薬が、ある時は主役になり、ある時には脇役になりながら、治療薬として漢方薬というチーム力を最大限に発揮している」と説明。企業としても「漢方薬的組織」を目指す上で「個々の能力を最大限高める努力を続けるとともに、最高のチームを目指してチームビルディングを行い、大きな成果を生み出すことを大切にしている」と強調した。

◎日本新薬・中井社長 「互いに尊重して議論交わし切磋琢磨を」

日本新薬の中井亨代表取締役社長は「『患者さんや患者さんを支えるすべての人のために何をすべきなのか』、そして『日本新薬の特長ある製品を、一刻も早く、一人でも多くの人に届ける』ことを常に意識して、一人ひとりがお互いを尊重して助け合い、時には熱い議論を交わしながら切磋琢磨してほしい」と述べた。

同社は35年のありたい姿として、「京都のグローバルヘルスケアカンパニーとして、一人ひとりの新しい生きるを世界に届ける会社」を掲げる。68人の新入社員に向けて「ありたい姿を実現するため、私たちとともに汗をかいてくれることを皆さんに期待している」とメッセージを送った。
 
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