急性冠症候群(ACS)患者の冠動脈造影と経皮冠動脈インターベンション(PCI)について、橈骨動脈からのアクセスと大腿動脈からのアクセスを比較検討した「RIVAL」試験の結果、安全性と有効性は同等であったが、橈骨動脈アクセスでは局所での血管合併症が有意に低いことが明らかになった。カナダ・McMaster大学Sanjit S. Jolly氏らの研究グループが、 学術誌「THE LANCET」4月23日号で報告した。
PCI施行時に、橈骨動脈からアクセスした方が大腿動脈と比べ、大出血やイベントのリスクが低い可能性が小規模無作為化試験のメタ解析から示唆されている。ただ、個々の試験は小規模で統計的なパワーが不足しており、臨床的イベントでの有意差を導くことが出来ていない。
同研究は、2006年6月~10年11月までに、32カ国、158施設のACS患者7021例を対象に、冠動脈造影とPCIにおいて橈骨動脈からアクセスする被験者群(3507人)と、大腿動脈からアクセスする被験者群(3514人)に無作為に割付け追跡した。主要評価項目は、30日目の死亡+心筋梗塞+脳卒中+非冠動脈バイパスグラフト(CABG)関連の大出血の複合エンドポイントに設定した。
ベースラインの患者特性は両群でバランスが取れており、不安定狭心症は橈骨動脈群が44.3%、大腿動脈群45.7%、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)はそれぞれ27.2%と28.5%、糖蛋白IIb/IIIa阻害薬の使用率が25.3%と24.0%、PCI施行率65.9%と66.8%であった。 両群とも平均年齢は62歳、PCIを施行された被験者の約95%がステントを留置した。
主要評価項目の発生率は、橈骨動脈群が3.7%、大腿動脈群は4.0%で、両群で有意差はなかった(HR 0.92, 95% CI: 0.72-1.17、P値=0.50)。
また副次評価項目である、30日目の死亡+心筋梗塞または脳卒中の発生率(両群とも3.2%。HR 0.98, 95% CI: 0.77-1.28、P値=0.90)と、非CABG関連の大出血の発生率(橈骨動脈群0.7%、大腿動脈群は0.9%。HR 0.73, 95% CI: 0.43-1.23、P値=0.23)でも有意差はなかった。
一方、副次項目のバスキュラーアクセス部位での大きな合併症は、橈骨動脈群で1.4%発生したのに対し大腿動脈群では3.7%と、橈骨動脈群が有意に低く(HR 0.37, 95% CI: 0.27-0.52、P値<0.0001)、また「ACUITY」試験で採用された定義による非CABG関連の大出血も、橈骨動脈群が1.9% に対し大腿動脈群4.5%(HR 0.43, 95% CI: 0.32-0.57、P値<0.0001)と、有意に低いことがわかった(事後解析結果)。
このほか、大血腫と閉鎖が必要な仮性動脈瘤の発生においても、橈骨動脈群が有意に低かった(それぞれP値<0.0001, P値=0.006)。
また、無作為化前に予め特定したサブ群で、主要評価項目に対して解析したところ、橈骨動脈アクセスによるPCIの実施例が多い上位3分の1の施設で治療を受けた患者(橈骨動脈群1.6% vs大腿動脈群3.2%, HR 0.49, 95% CI: 0.28-0.87、P値=0.05)と、STEMI患者(橈骨動脈群3.1% vs大腿動脈群5.2%, HR 0.60, 95% CI: 0.38-0.94、P値=0.26)で、橈骨動脈群に有意なベネフィットが見られた。
これらの結果から研究グループは、橈骨動脈と大腿動脈のどちらのアクセスでも、PCIの安全性と有効性は同等であるが、局所での血管合併症は橈骨動脈群で有意に低いことが、同アプローチを利用する理由になるのではと結論付けている。