谷川原祐介慶大医学部教授・薬剤部長 PMSはマーケティングの重要戦略
公開日時 2003/01/21 23:00
「リスクの早期発見と適正使用の徹底が、有用な薬剤を市場から脱落させないための最善策。これからはPMSとその情報提供が重要なマーケティング戦略になる」――医法研1月度月例会で、谷川原祐介慶大医学部教授・薬学部長が述べた。谷川原教授は「ブリッジングで新薬承認のタイミングは早くなったが、薬効中心のブリッジングスタディでは安全性の検証が不十分。承認された用法・用量領が日本人に本当に有効かつ安全かなど、多くの課題が市販後に委ねられている」と説明、イレッサの副作用問題にも言及した。メーカーの医薬品情報提供の問題点について、①副作用情報をはじめ、新薬承認データ、PMSデータの中のネガティブ情報を公開したがらない②根拠データを開示せず結論だけを通達③添付文書に盛り込みさえすれば後は医療サイドの責任という発想を指摘した谷川原教授は、今後の情報提供を、①エビデンスの質・量から付加価値・差別化へ、②03年度から始まる特定機能病院での入院包括化導入により「価格に見合う価値」をより明確にすべき、とした。また、谷川原教授は現在、添付文書、インタビューフォーム、製品パンフレット、論文等ばらばらに伝えられている医薬品情報を、医療現場のニーズに応えるものにするには構造化が不可欠だが、紙媒体での情報提供には限界があるとして、添付文書をコアにハイライト化などでメリハリをつけた「e添付文書」を紹介。PC画面をクリックすることにより根拠データを含む副作用情報、承認データから研究論文までが参照できるようになっているe添付文書を、昨年、武田のアクトス錠で作成。今年度はさらに、住友製薬、三共、アストラゼネカ、エーザイなど12社が参加し、各社1品目の作成を予定している。