ネクサバール 日本人HCC患者で従来薬を上回る無病進行生存率
公開日時 2006/11/12 23:00
【チェコ・プラハ=小沼紀子】独バイエルの腎細胞がん治療薬「ネクサバール」
(ソラフェニブ、海外で発売、国内で申請中)の日本人に対する肝細胞がん
(HCC)のフェーズ1試験の結果が11月7日から10日までチェコ・プラハで開
かれた「第18回EORTC-NCI-AACRシンポジウム」で報告された。国立がんセンタ
ー東病院病棟部・古瀬純司医長(肝胆膵内科)が発表したもので、フェーズ1
試験の結果が公表されたのは世界的にも初めて。現在、国内外でHCCのフェー
ズ3試験が進行中のほか、非小細胞肺がんなどで臨床試験が進められている。
試験では海外と同じ用量の1日800mg(400mgを2回)投与で忍容性が示され、
肝硬変から移行した肝細胞がんでも投与可能との結果が得られた。また、肝機
能の良い状態の患者と中等度の患者で効果や安全性の面でも差が見られず、肝
硬変から移行した肝臓がん患者とそうでない肝臓がん患者でも同様の結果が得
られた。
臨床効果を見ると、CR(完全寛解)はゼロ、PR(部分寛解)が4%(1例)、
安定状態(SD)が84%(21例)だった。無病進行生存率(TTP)は4.9ヵ月で従
来薬を上回るような効果が得られたほか、全生存期間の中央値は14.2ヵ月であ
った。古瀬氏は本誌の取材に対し「400mgという推奨用量が肝硬変後でも十分
使えるという結果が出た。効果の面でも増悪までのTTPが4.9ヵ月で、5ヵ月前
後というのは非常にプロミッシングなデータ(従来薬では2~3ヵ月程度)」
と強調した。副作用は200mg投与群の92%、400mg投与群の100%で報告された。
全てグレード3~4で、試験からドロップしたのは手足皮膚反応等を発症した
1例のみ。
試験には27人の肝臓がん患者が登録、200mg投与群(13例)と400mg投与群(14
例)の2群に分けられ、1サイクル28日間で投与された。患者の92%が男性で、
平均年齢は70歳。従来難しいとされていた「Child-Pugh(チャイルドプー)」
という肝機能を評価する指標を用いて、肝障害のマイルドな患者と中等度の患
者を別々に試験に組み入れて、安全性や有効性の面で両者を比較したのも特徴。