塩野義製薬・手代木社長 3事業に計8800億円投資で「経営基盤強化」 30年売上8000億円は上方修正へ
公開日時 2026/04/16 04:52

塩野義製薬の手代木功取締役会長兼社長CEOは4月15日に開いたメディア向けラウンドテーブルで、JTグループの医薬事業買収など3つの大型投資に計8800億円超を投じたことについて、「経営基盤強化の名のもとに実施した」と述べた。塩野義製薬は30年度の連結売上収益8000億円を目標に掲げているが、手代木社長は「社内的には過去の数字」と指摘。「新しい目標をどう達成していくかを考えている」と述べ、27年度を初年度とする新たな中期経営計画の策定にあわせ、30年度目標を上方修正することを示唆した。
◎ロイヤルティ収入支える抗HIV薬 29年頃から特許切れ
手代木社長は、現行の中期経営計画「STS2030」(23年6月に改訂)の主目的のひとつは、29年頃に特許切れを迎える抗HIV薬・ドルテグラビルのパテントクリフ対策であることを説明した。現在、同社の連結売上の大半はHIV領域のロイヤルティ収入が占めており、25年度計画でも売上5000億円に対しHIV領域のロイヤルティ収入は2450億円にのぼる見込みだ。HIV領域のロイヤルティ収入は経口薬のドルテグラビルと注射薬のカボテグラビルで構成されるが、「カボテグラビルも29年、30年よりは(特許が)少し長いが、永久に続くわけではない」(手代木社長)。
このような状況を見越して同社はSTS2030のフェーズ2(23~25年度)の3年間に、総額8800億円規模の戦略投資を計画。結果的に、25年度の1年間に▽HIV領域に特化した英ヴィーブヘルスケア社への追加出資(投資額21.25億米ドル(約3348億円))、▽日本たばこ産業(JT)グループの医薬事業買収(投資額約1600億円)、▽田辺ファーマからエダラボン事業獲得(投資額25億米ドル(約3941億円)――を行った。塩野義製薬は今後、26年度にPPA(取得原価の配分)を行い、買収した資産・負債の精査を完了させた上で、27年度以降の新中期計画に反映させる方針だ。
◎ヴィーブの持分法適用関連会社化「戦略的に極めて重要」 6カ月に1回の注射薬も決め手に
手代木社長はこの日、3つの事業投資の目的などを改めて説明した。
英ヴィーブへの追加出資により、塩野義製薬のヴィーブ株式の持分比率は10.0%から21.7%へと上昇し、ヴィーブを持分法適用関連会社化した。手代木社長は、「最重要領域のHIVフランチャイズでヴィーブの持分を増やすことは、戦略的に極めて重要度が高い。これを具現化できたことは我々にとっていいタイミングだった」と述べ、安定的な収益基盤の更なる強化に自信をみせた。
また、塩野義が創製しヴィーブと共同開発している、6カ月に1回の注射で用いる超長時間作用型インテグラーゼ阻害薬「S-365598」の臨床試験で良好な結果が得られたことも巨額出資を決断した大きな要因だったと振り返った。
◎低分子創薬で世界No.1へ 急性呼吸器感染症薬の国内売上依存度の低減も
JTグループ医薬事業の買収の目的は、自社創薬力の強化と国内販売力の強化だ。手代木社長は改めて、JTグループの低分子の研究者ら約670人とAI・量子コンピュータを使った先端技術プラットフォームを掛け合わせて、グローバルでNo.1の低分子創薬力を有する製薬企業を目指すと宣言。「自社創薬比率60%以上を堅持する」と強調した。
国内販売については、流行に左右されやすい新型コロナやインフルエンザといった急性呼吸器感染症薬の依存を是正する方針。「季節性によらない販売力をつけたい」と述べた。JTグループの鳥居薬品が持つアレルゲン領域の製品や高い参入障壁になり得る舌下免疫療法薬(SLIT)、塩野義が持つ不眠など中枢神経領域の製品を共同販促して、季節性に左右されない国内収益構造を構築する。手代木社長は急性呼吸器感染症薬の国内売上比率を「2割以下にしたい」との考えを示した。
◎米国市場 旧ジェンザイムを含む希少疾患の精鋭140人始動 「成長の重要アディション」
エダラボン事業の獲得により塩野義製薬は、同薬の全権利に加え米国事業基盤を手に入れた。米国において4月1日付で、ALS治療薬・エダラボンなど希少疾病用医薬品の販売・流通や患者ネットワークとのつながり、保険交渉のノウハウを持つ約140人の専門チームをシオノギグループに迎え入れることができた。この中には希少疾病用医薬品を強みとする旧ジェンザイム出身のスタッフも少なくないという。手代木社長は、「我々にとって非常に大きな、今後の成長を考えるうえで非常に重要なアディション(追加価値)が得られた」と高く評価した。
今後、米国市場では、開発中の経口PDE4ネガティブアロステリックモジュレータ「Zatolmilast」(対象疾患:脆弱X症候群、Jordan症候群)や経口GYS1阻害薬「S-606001」(対象疾患:ポンペ病)といった希少疾病用医薬品の上市を目指す。今回獲得した強固な米国事業基盤を活かし、速やかな事業拡大を図る方針だ。