薬価研・長野委員長 新薬価制度案、大手に有利発言に懸念の声も
公開日時 2008/10/26 23:00
日本製薬団体連合会保険薬価研究委員会の長野明委員長が10月23日、医薬品産
業労働組合連盟の招きで行った講演で、薬価が市場加重平均より下がらなかっ
た特許期間中の新薬の薬価は維持するという特例を盛り込んだ業界の新薬価制
度案について、「ひょっとしたらメガファーマが一番(恩恵に預かる)可能性
が強いのかもしれない」と発言した。以前から中堅企業から「大手に有利」と
の不満の声はあったが、それを認めたかのような発言に対し、疑問や今後の議
論への影響を懸念する声が業界から出ている。
新制度案について長野氏は「製薬企業にとって過酷な提案」と強調。いつも競
争の激しい分野への新薬を出すところは薬価維持特例の恩恵に十分に浴すこと
は難しいとし、「継続的に革新的新薬を創出できる企業のみが(十分な)恩恵
に預かれる」ことを理由に挙げた。そのため新制度案によって「結果として恩
恵に預かれる企業とそうでない企業が出てしまう」とし、自ら所属する第一三
共についても、個人的意見と断った上で「よっぽど頑張らないと恩恵に預かれ
るものは出せないと感じている」と述べた。
そうやって過酷さを強調する中で「ひょっとしたら、薬価研委員長として述べ
るのはまずいかもしれないが、メガファーマの皆様が一番(恩恵に預かる)可
能性が強いのかもしれない」と話した。ただ一方で「しかし、自前の強い領域
を見定めて、企業規模の身の丈にあった成長できる研究開発戦略、企業経営戦
略があれば、企業の規模にかかわらず、(薬価維持特例の)対象となる製品を
創出できると思う」ともフォローした。
この発言について薬価研や製薬協の幹部からは「業界が自らに厳しい提案をし
ていることを強調したかったのが意図」との解説もある一方で、薬価研OBから
は「薬価基準制度はニュートラルであることが原則」とし、「企業規模の大小
で有利不利を言うのではなく、社会的に医療的に有用な薬を出し続けられると
ころが恩恵に預かるということを強調すべきだったのでは」との意見も出てい
る。
また、別のOBは「革新的新薬を出し続けるのには一定の規模が必要なことは確
かだが、企業規模の大小が問題ではないはず」と指摘。さらに「雇用確保を問
題にする労組で、厳しさを強調するにも、どうしてあんな発言をしたのだろう」
と、提案に反対意見が顕在化することを懸念する声もある。