科研製薬・堀内社長 10品目導入、パイプライン12品目に拡大も「まだまだ拡充必要」 R&D説明会
公開日時 2025/12/11 04:50

科研製薬の堀内裕之代表取締役社長は12月10日、初めて開催したR&D説明会で、「研究開発型企業として将来を左右するパイプラインの状況を広くお話しできるようになり、大変嬉しく思っている」と述べた。2022年度にスタートした10年間の長期経営計画2031では、免疫系・神経系・感染症の重点創薬3領域を中心に、10年間で8品目を上市するためのパイプラインの拡充などに取り組んでいる。堀内社長は、22年度からこれまでに、「合計10品目の導入を進め、パイプライン数が12品目にまで拡大した」と紹介した。ただ、「当社の独創性のある研究開発や創薬のためには、まだまだパイプラインの拡充は必要」とも強調し、技術基盤の確保や開発品の導入など研究開発への積極的な投資を続ける姿勢をみせた。
長期経営計画2031では、グローバルに展開する創薬企業を目指して、強みとする皮膚科や整形外科領域を中心に、新規に希少疾病領域にも挑戦。重点施策として▽上市確度の向上、▽パイプラインの拡充、▽新規ニーズ・海外展開への対応――などを挙げている。研究開発等投資額として10年間で2600億円と設定している。
◎26年上市予定の初の経口HAE治療薬・セベトラルスタット 「治療の在り方を一変させる可能性」

綿貫充取締役研究開発本部長は、国内推定患者数2500人の遺伝性血管性浮腫(HAE)発作時治療薬・セベトラルスタット(一般名、国内製品名:エクテリー錠)を紹介しながら、「2026年中のセベトラルスタットの上市を皮切りに、順次、新薬の承認取得を計画している。希少疾患や難病を中心に、真に日本の患者さんが必要としている新薬をしっかり届け、まずは短期的な収益基盤を盤石にする」と説明した。そして、「将来の大型候補の(自社創製の)グローバル製品の発売につなげていく」とグローバル展開の道筋を語った。
セベトラルスタットは、ライセンス元のカルビスタ社が国内申請中で、科研製薬が国内の独占販売権を持っている。同剤は11月27日の厚労省の薬事審・医薬品第二部会で承認することが了承されており、年内の正式承認が見込まれる。綿貫氏は、現在のHAE発作時治療薬が注射剤のみと説明した上で、「(セベトラルスタットは)世界初経口HAEオンデマンド(発作時)治療薬として、早期治療を可能とし、患者QOL向上と治療アクセスの改善が期待される」と指摘。「HAE治療の在り方を一変させる可能性がある新薬として期待している」と述べた。
◎投与間隔が3~6カ月のHAE予防薬・ナベニバルトは第3相段階に
また、アストリア社から導入し、現在第3相試験段階にあるHAE予防薬・ナベニバルトにも触れた。ナベニバルトは投与間隔が3~6カ月と投与頻度が少ないメリットが見込めることから、「ナベニバルトによる治療も、HAEの在り方を大きく変える可能性がある。セベトラルスタットとナベニバルトでHAEのアンメットメディカルニーズの解消につなげたい」と強調した。
◎脈管奇形治療薬・KP-001とアタマジラミ症治療薬・KAR 26年度中に申請予定
同社が2026年度に国内申請を予定しているのが、難治性脈管奇形治療薬・KP-001と、既存治療で効果不十分なアタマジラミ症治療薬・KARとなる。いずれも第3相試験のトップラインデータが公表され、主要評価項目を達成した。このうちKP-001について綿貫氏は、「脈管奇形は小児期から生涯にわたる治療に必要とする疾患であり、1日でも早くこの薬剤を患者さんに届けられるように努めていきたい」と思いを述べた。
また、「(KP-001は)自社創薬品であり、国内外での開発をさらに加速させていきたい」とも強調した。KP-001は米国自社販売品の第1号を目指して米国でも開発中で、第3相試験の準備中の段階にある。同社はこれまでに29年度の承認取得・上市を想定していると明かしている。なお、同社によると、米国の脈管奇形の推定患者数は約6万人、市場規模は1800億円と見込んでいる。