日本維新の会の猪瀬直樹参院議員は12月8日、本誌インタビューに応じ、OTC類似薬の保険適用見直しについて「OTC類似薬を保険適用から除外することで、保険料負担の軽減につなげるべきだ。膨らんでいる無駄を削減することで医療の構造改革につながる」と主張した。OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しをめぐっては、自民党と維新による社会保障制度改革協議体で協議を重ねているが、議論は平行線をたどる。猪瀬氏はリフィル処方箋の義務化導入も求め、「維新は医療費４兆円の削減を有権者に約束している。制度設計の話ばかり議論して、削減効果が見えなくては話にならない」と声高に訴える。（梅澤　平）

猪瀬氏の案では、保険適用見直しの対象範囲を「処方箋医薬品以外の医療用医薬品約7000品目」と定義。処方箋に基づき調剤薬局でOTC医薬品を購入する仕組みとして、自由価格とするよう求める。なお、難病やがんなどの対象疾患患者に対しては引き続き保険適用を継続することとしている。

◎OTC類似薬の保険適用外で「技術料を削減できる」

猪瀬氏が強調するのは、ドラッグストアで購入できるOTC薬と、医療用医薬品であるOTC類似薬との価格差だ。現行の制度では、医療用医薬品を処方された場合、原則として、薬剤費に医療機関や調剤薬局への技術料を加えた総額の３割を負担する仕組みになっている。猪瀬氏は「ドラッグストアのOTC薬は数百円程度でも、医療機関や薬局に行くと総額は数千円になってしまうが、問題はその大半を占める技術料だ。OTC類似薬を保険適用外にすれば、その分の保険料を削減できる」と主張。健康保険組合連合会の試算を引き合いに、OTC類似薬を保険適用外とした場合、「理屈としては１兆円の削減につながる」と指摘する。

◎リフィル処方箋の義務化も要求　「合わせ技で構造改革進める」

あわせて、猪瀬氏はリフィル処方箋や長期処方の義務化導入も求めている。医療機関での毎回の診療にかかる技術料の削減が見込めるためだ。リフィル処方箋は22年度診療報酬改定で導入されたものの、病院・診療所の処方箋料における算定割合は全体のわずか0.07％（NDBデータ集計に基づく24年11月診療分）に留まる。猪瀬氏は「（OTC類似薬の見直しとリフィル処方箋の義務化の）合わせ技で、考え方としては医療機関と調剤薬局の構造改革を進めるということ。保険料に占める一番大きな部分を減らせば、皆さんの負担が減ることになる」と訴える。

協議体での議論に並行して、維新は12月4日、高市早苗首相に対して社会保障制度改革の推進を求める申し入れを実施。OTC類似薬を含む薬剤自己負担の見直しなど「抜本的な改革によって１兆円の医療給付の削減を目指すこと」を念頭に、「まずは総額で数千億円規模の医療給付の削減につながる内容」を求めた。猪瀬氏は「難しい制度設計に終始して、気付いたら『数億円の削減効果しかありません』では話にならない。この論点を抜きにして連立の意味はない」と強調した。

連立与党を組む自民と維新の社会保障制度改革協議体ではOTC類似薬を含む薬剤自己負担について、OTC類似薬の薬剤料を原則全額自己負担とする「保険給付外」と、医療用医薬品の３割負担に加えて特別の料金を徴取する「保険外併用療法」の２案を軸に議論が進む。長期収載品の選定療養のような「保険外併用療養」を念頭に置く自民と、医療費削減の規模にこだわる維新との間で議論がかみ合わず、一致点を見出せない状況が続いている。