武田薬品・長谷川社長 R&Dは「量」「スピード」から「質」を重視へ
公開日時 2009/05/11 23:00
武田薬品の長谷川閑史社長は5月11日に東京本社で開いた08年度決算会見で、
「『質』を重視した研究開発に方向転換しようと、社内で号令をかけていると
ころだ」と強調した。研究開発パイプラインをできるだけ豊富にする「量」と、
できるだけ早期の上市を目指す「スピード」を重視するこれまでの研究開発方
針を見直す考えを示したもの。次期主力品の開発後期段階での開発中止や上市
遅れが相次いでいることに、「事業として非常にまずい結果になっている」と
し、経営トップとして反省の上にたって、「質」重視を明確に打ち出したとい
う。
同社は08年3月、次期主力品のひとつに位置づけていた高脂血症治療薬「TAK-
475」の開発中止を決定。同じく次期主力品の糖尿病治療薬「SYR-322」は米国
で現在、当初計画より承認取得・上市が遅れている。長谷川社長は、「『量』
と『スピード』が必ずしも開発中止や遅れに結びついたとは言えないが、影響
なしとしないというのが率直な判断だ」「開発過程で多少のリスクを承知でも、
これにすがってやっていこうという精神的な部分もいがめない」などと語り、
根拠のない「願望」にすがっていたケースもあったとの認識を示した。
一方、「SYR-322」について長谷川社長は、心血管系リスク評価の追加試験を
実施する考えを改めて示したものの、試験を承認前に必要なのか、承認後で良
いのかなどは不透明な状況と説明した。
なお、同社の09年3月期決算は、薬価改定や円高影響があったものの、主力品
の伸長や米国ミレニアム社などの買収効果もあって、売上高1兆5383億円と1
兆5000億円の大台を超えた。次期は更なる円高影響で2.5%の減収を見込む。
【連結業績(前期比)次期予想(前期比)】
売上高 1兆5383億3600万円(11.9%増) 1兆5000億円(2.5%減)
営業利益 3064億6800万円(27.6%減) 3950億円(28.9%増)
経常利益 3271億9900万円(39.0%減) 4000億円(22.2%増)
当期純利益 2343億8500万円(34.1%減) 2800億円(19.5%増)
【国際戦略4製品(前期比)】
ピオグリタゾン(国内製品名:アクトス) 3870億円(2.3%減)
ランソプラゾール(同:タケプロン) 2714億円(82.5%増)
カンデサルタン(同:ブロプレス) 2303億円(3.3%増)
リュープロレリン(同:リュープリン) 1261億円(1.7%増)
【国内実績(前期比%)、億円】
ブロプレス 1379(0.6)
タケプロン 707(9.1)
リュープリン 663(-0.1)
アクトス 488(17.3)
ベイスン 471(-10.8)
エンブレル 263(39.9)
ベネット 163(-1.7)
セルタッチ 113(-8.4)
グロベニン-I 93(4.7)
リウマトレックス 85(10.6)
乾燥弱毒生麻しん風しん混合ワクチン「タケダ」 84(46.6)
アイソボリン 73(-41.4)
ダーゼン 72(-6.5)
パンスポリン注 72(-14.6)
ファーストシン 59(-7.9)