中医協薬価専門部会 新メンバーで初会合
公開日時 2009/11/05 04:02
中医協薬価専門部会は11月4日、新メンバーとなって初の会合を開き、10年4月に予定する薬価改定と薬価制度改革の議論を再開した。この日は、同一成分にもかかわらず異なる効能効果のために薬価で数倍~100倍もの開きが発生する「同一成分の既収載品がある新薬」の薬価算定について議論。部会には、現行ルールを変えずにケースバイケースで対応する方向が議論のたたき台として提示されたが、新任の安達秀樹委員(京都府医師会副会長)や白川修二委員(健保連常務理事)らの意見によって新ルールを策定する方針が決まった。
同一成分の既収載品がある新薬には、例えば、成分名でゾニサミドやメトトレキサートがある。ゾニサミドは、抗てんかん薬として20年以上前に製品名「エクセグラン錠」として上市される一方、今年3月にはパーキンソン病薬「トレリーフ錠」として上市された。1日薬価はそれぞれ154.00円と1084.90円。含量(mg)単位薬価では0.4円と43.4円で、100倍以上の差がついた。
メトトレキサートは、悪性リンパ腫用薬「メソトレキセート」と抗リウマチ薬「リウマトレックス」があり、リウマトレックスが上市された00年時点の薬価は、メソトレキセート50.6円、リウマトレックス431.5円――だった。更に09年にはリウマトレックスの後発品が上市され、この後発品の薬価は200円前後。対してメソトレキセートの09年の薬価は45.9円で、同一成分の後発品の方が4倍以上高い薬価となった。
複数のメーカー関係者によると、メーカーが銘柄を変えて開発・上市するのは、取り違い防止など適正使用の側面や、用法・用量が異なることが背景にある。現行ルールは銘柄別収載されるため、トレリーフの場合は既存のパーキンソン病薬が比較薬となり、結果、エクセグランに比べて高薬価となった。
安達委員は部会で、トレリーフやリウマトレックスなどを例に挙げながら、「こんな高価格設定になるのならば、(適応外使用に関する)55年通知をいかして治療にあたった方が良い。負担も少なくてすむ」と指摘し、新ルールの策定を強く求めた。白川委員も「安達委員の意見に賛成。要するに患者の視点が抜けている」とし、「効能拡大に類するものは何らかの新ルールを作る必要がある」と述べた。他の委員も同様の考えを示し、新ルールを策定することで一致した。
厚労省保険局の磯部総一郎薬剤管理官は部会後の会見で、「効能追加にそれほどお金がかかっていないのではないかとの疑念の中で、薬価だけ上がっていることが理解できないということだろう」と解説。「基本はコストをはっきりさせてくれということと理解している」と述べ、新ルールは、新効能の新薬の研究開発コストなどを踏まえて算定する仕組みになるとの方向を示唆した。
●後発品のある先発品 特例引下げで更なる深堀を 健保連・白川委員
一方、厚労省はこの日の部会に、後発品のある先発品(長期収載品)の特許切れ後の価格推移を日英仏独の4か国で比較したデータを示した。これまで日本市場では、長期収載品の価格は高止まりしていると指摘されていたが、データでは、特許切れ直後から英仏以上に価格が下がっていた。これは特例引き下げによる影響が大きいが、特例引き下げの影響を除外しても日本は、英仏と同程度かそれ以上の価格の下げ幅となっていた。参照価格制度を採用するドイツでは価格が大きく下落していた。
各国の後発品と長期収載品との価格差までは明らかにはなっていないが、白川委員は、4か国の長期収載品の価格推移と後発品の使用状況から、「(長期収載品の)価格の下落と後発品使用との相関関係は、ゼロとは言わないが、かなり低いのではないか」と指摘し、医療費抑制のため長期収載品の特例引下げのさらなる深堀を求めた。
そのほか磯部管理官は会見で、業界が求める薬価維持特例について、「次回以降どこかで議論し、年末までに結論を出す必要がある。引き続き検討、ダメ、やる、の一定程度の結論を出さないといけない」と話した。