09年通期業績で増収増益を確保したイーライ・リリーだが、今年中に抗がん剤のジェムザール(一般名:ゲムシタビン)が特許切れを迎えるほか、同社のトップ商品である抗精神病薬ジプレキサの特許失効も2011年に迫り、関係者からは今後の業績動向の不安定さを指摘する声が出ている。
昨年中に大規模な人員削減を行ったリリーは、現在64の新規化合物を抱える研究開発を促進させるため今年中にディベロップメントセンター・オブ・エクセレンスを組織し、ポートフォリオの強化策を推進。また、興和の高脂血症治療薬リバロ(一般名:ピタバスタチン)の共同プロモーション契約、Incyte社から炎症性疾患治療薬のJAK1/JAK2阻害剤「INCB28050の開発と商業化を目的とした全世界独占ライセンス契約を締結するなど、矢継ぎ早のアライアンスを行っているものの、証券アナリストなどからは「迫りくる危機の大きさに比べ、動きが遅く、ダイナミズムに欠ける」と囁かれている。
スタンダード&プアーズのヘルスケア・アナリストであるHerman Saftlas氏はリリーの動向について「来年の特許失効を控えるジプレキサに代わる大型商品は見当たらず、開発パイプラインも半数近くが早期段階のもので偏りがみられる」と厳しい評価を下している。
アナリストらによる将来動向への否定的な見解は、大型化が期待され先ごろ発売された同社の抗血小板薬エフィエント(一般名:プラスグレル)の不振も一因となっている。アメリカの調査会社・Bernstein社のアナリストであるTim Anderson氏は「エフィエントはこの5年間大きな注目浴びながら、その結果は非常に失望するものだった」と評している。
一方、こうした状況下でリリーのジョン・C・レックライターCEOは「エフィエントについては我々が持っている計画を忠実に推進するのみ」と控えめな見解を述べるに留まっている。
(The Pink Sheet 2月1日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから