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SINGLE KISS試験 分岐部病変へのシングルステント+FKIは効果的な戦略

公開日時 2010/03/07 01:00

分岐部病変に対する2ステント法の短期成績は良好だが、シングルステントと比較して、慢性期の臨床成績における優位性は示されていない。側枝に対するステントの必然性が問われる中、本幹のみに薬剤溶出ステント(DES)を留置し、最終的にバルーンで本幹と側枝の同時拡張(FKI)を行うことで、良好な臨床成績が得られることがSINGLE KISSトライアルによって明らかになった。6日午前のLate Braking Clinical Trials で、心臓血管研究所附属病院の及川裕二氏が報告した。


現代のPCI技術と薬剤溶出ステント(DES)をもってしても、分岐部病変の再狭窄を完全に防ぐことはできない。2ステント法についても、急性期の成績は良好だが、慢性期臨床成績については、シングルステントと比較して明らかな優位性は示されていない。及川氏によれば「側枝に対するステントの必要性自体が非常にあいまい」で、これまでの報告でも、側枝へのステントの必要性は2.1%であったとするものから、51.2%であったとするものまでさまざまだ。


側枝へのステント留置を行う場合、手技が煩雑になることに加え、本幹自体の成績をわずかながら低下させるため、最近では、分岐部病変であっても可能なかぎりシングルステントとし、分岐部、本幹、側枝すべてに非常に強い狭窄がある(いわゆるtrue bifurcation)などのやむを得ない場合のみ、側枝にも追加的にステントを留置すべきとの考え方が主流になってきているという。経験的に認識されながらも検証されていなかったこの戦略の妥当性が、多施設ランダム化前向き試験「SINGLE KISS」で検討された。


対象はPCIの対象となる分岐部病変で、全国22施設において、2007年6月から2008年12月までに784例、784病変を登録。本幹に対してCypherまたはTAXUSステントを留置してFKIを行った。


一次エンドポイントは1年後の標的病変再血行再建術(TLR)、二次エンドポイントは、死亡、心筋梗塞(MI)、脳血管イベント、9か月後の血管造影上の再狭窄、1年後の標的血管再血行再建術(TVR)である。


対象病変は両群ともに半数以上が左前下行枝(LAD)と対角枝の病変。TAXUS 群の23%、Cypher 群の24%が、もっとも問題となる左主幹部(LMT)病変であった。またTAXUS群57.9%、Cypher群61.9%が側枝に病変を有していた。


結果的に側枝へのステントが避けられなかった症例はTAXUS 群6例(1.5%)対Cypher 群11例(2.8%)と差を認めなかった。従来の報告と比較しても、もっとも低い良好な値だ。


両群の術前の血管造影上所見に差はなかったが、術後の残存狭窄率はTAXUS群の方が低かった(26%対30%)。open cellタイプのTAXUSの方が、closed cellタイプのCypherよりも側枝にかけやすいためだと考えられる。いずれにしても残存狭窄率は両群ともに30%前後と、中等度狭窄に近い値であった。死亡、心血管死、Q-MI、CABG、脳血管障害に差はなかった。虚血によるTLRは、TAXUS 3.8%、Cypher 3.2%。主要脳心イベント(MACCE)にも差はなかった(TAXUS 10.5%対Cypher 8.2%)。及川氏は、「血栓の問題が起こりやすいとされる分岐部病変にもかかわらず、亜急性血栓症(SAT)/遅発性血栓症(LT)がCypher群の1例(3%)のみであったことは注目に値する」としている。


1年後の臨床フォローアップ率はともに98%。MACCE回避率はCypher群93.2%、TAXUS群89.7%、TLR回避率はCypher群96.8%、TAXUS群96.1%、TVR回避率はCypher群93.6%、TAXUS群92.3%といずれも良好で、両群の差もなかった。


及川氏は、これらの結果について、「側枝の残存狭窄は気になるが、臨床的な成績にはあまり影響を与えていないようだ。シングルステント+FKIは、分岐部病変に対する実臨床における実行可能で効果的な戦略であると考えられる」とまとめた。


コメンテータを務めた佐賀大学の挽地裕氏は、二種のDESについて、「CypherはBx-velocityステントに薬剤をコーティングしたのみで、開発の段階で分岐部に対して積極的に治療するタイプのステントではなく、容易に側枝の拡張を得られるが、その反対側のセルが開かない。一方、TAXUS Express2は、Cypherよりも大きく広がるが、広がりすぎると本幹側のストラットの変形をおこしてしまう」とその限界を指摘。SINGLE KISSについては、20%を超える症例でLMT病変が含まれていたにもかかわらず、DESを用いたシンプルな治療で良好な臨床効果が得られることを示したすばらしいデータだと評価した。また残念ながら世界では、すでにこれらのステントは使われていないと、日本の医療システムの遅れにも言及した。

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