
日本医薬品卸売業連合会(卸連)の宮田浩美会長は3月26日の定例会見で、流通改善の取組みについて、「今年は本当に正念場。(流通改善が)療養担当規則にも書かれた。我々としてもしっかり進めたい」と強調し、会員企業への周知を徹底する考えを示した。3月4日付で流通改善ガイドラインが改訂され、2026年度診療報酬・調剤報酬改定で新設される「地域支援・医薬品供給対応体制加算」の施設基準に流通改善への取組みが盛り込まれたことを受け、業界を挙げた対応の加速を求めた格好だ。
◎イラン情勢に伴う原油高騰・供給不安 「価格転嫁できない我々としては非常に厳しい」
緊迫化するイラン情勢に伴うエネルギー供給の不安定化については、原油高騰が配送費や、包装材やパレットなどの資材コストを押し上げるなどと指摘。「今の状況が続くと、価格転嫁できない我々としては非常に厳しい」と述べた。また、「物流については、共同化が今後のテーマになると思う」との見通しも示した。
◎流通改善GLの実効性向上、医薬品卸の存在意義の広報などに引き続き注力
卸連はこの日の理事会で26年度事業計画を了承した。宮田会長は、「事業計画はどれも重要で優劣があるわけでない」とした上で、23年の会長就任以来の一丁目一番地(最優先事項)に位置付けている「流通改善GLの実効性の向上」や、「医薬品卸の存在意義の広報」に引き続き注力する考えを示した。
このうち流通改善に関しては、25年12月の中医協に示された医療機関・薬局向けアンケートの結果として、流通改善GLを「知らない」との回答が5割にのぼったことを紹介しながら、「(流通改善は)まだ道半ば」との認識を示した。そして、「厚労省の協力をいただいて、流通改善GL改訂版に具体的に詳細に書き込んでいただいた。実行する我々が(流通改善を)できないとなれば、今後様々な支援をいただけない可能性もある」と話した。さらに、26年度改定で新設される「地域支援・医薬品供給対応体制加算」において、施設基準に流通改善GLを踏まえた安定供給への取組みが盛り込まれたことに触れながら、会員各社への実務的な周知と理解促進を徹底していく構えをみせた。
◎骨太方針に「安定供給問題改善への支援に向けた方向性が盛り込まれるよう取り組む」
卸連の26年度事業計画は大きく7項目で構成し、(1)コンプライアンスの徹底、(2)流通改善GL改訂版への取組み、(3)持続的な安定供給に向けた流通体制の構築、(4)医薬流通産業の形成とデジタルの活用、(5)セルフメディケーションの推進、(6)広報及び教育研修等、(7)事務局の機能強化等――となる。
このうちコンプライアンスの徹底では、事業活動の前提である法令や社会的規範を遵守する意識を高めるため、独占禁止法研修会などを継続的に開催する。
流通改善GL改訂版への取組みでは、同GLの趣旨に沿った取引が実践できるよう、会員対象の説明会の開催や小冊子を作成する。また、「古い商慣習から脱却し、適正な価格形成が行われる市場環境の整備につなげる」ため、厚労省の流改懇で進められている▽総価交渉の解消、▽薬価差偏在の解消、▽一社流通における情報提供、▽頻回な価格交渉の是正、▽流通コスト負担の公平性――などの議論について、「流通関係者の理解を得つつ、協調して実行できるよう取り組む」とした。
持続的な安定供給に向けた流通体制の構築では、政府が6月頃に閣議決定する「骨太の方針」への対応を進め、「医薬品卸の置かれた状況を踏まえ、引き続き、医薬品の安定供給問題改善への支援に向けた方向性が盛り込まれるよう取り組む」とした。骨太の方針2025では、医薬品流通に関する文言が初めて盛り込まれ、25年度補正予算では医薬品卸業者を対象とした補助金が初めて措置されるなど、医薬品卸の役割の重要性が認知された。26年度は、これを一過性のものにならないよう、引き続き医薬品卸の役割を定着させるべく働きかけを強める構えだ。
◎中間年改定は「持続的な安定供給の阻害要因のひとつ」 廃止求める
また、中医協の業界意見陳述などを通じて、27年度を含む中間年の薬価改定の廃止を求める方針も盛り込んだ。中間年改定は「持続的な安定供給の阻害要因のひとつ」と指摘した。大規模災害への対応では、その流通体制を平時から整備するほか、地域の卸組合(協会)が効果的に訓練に参加できるよう支援する。災害時情報共有システム構築に向けた検討・検証も進める。
医薬流通産業の形成とデジタルの活用では、急速に進展するAI等の活用も通じて、経済社会ニーズの変化に対応した社会的価値の創出などに取り組む。25年度から整備してきた「中抜け等返品事例データベース」は、26年度から本格的に運用を開始。収集したデータを蓄積し、保健衛生上の観点から活用できるデータについては会員で共有し返品受入点検の精度向上が図られるよう努める。
◎初のサステナビリティ基本方針を公表 「安定供給を果たすことが最大の使命」
卸連はこの日、初のサステナビリティに対する基本方針「サステナビリティの推進に向けて」を策定・公表した。国民の健康と医療を支える社会インフラとして、「平時・有事を問わず医薬品の安定供給を果たすことが最大の使命」と定義。「政府方針にも沿った持続可能な流通の仕組みを実現するため、医薬品流通産業全体でサステナビリティに配慮した事業活動の推進に努める」と表明した。今後、ガイドラインの策定も進める。
基本方針では、「私たちの約束」として、(1)医薬品流通のサステナビリティの維持・確保、(2)人権の尊重と働きがいのある職場環境の構築、(3)資源の有効活用と環境保全――の3つを掲げた。具体的には、医薬品の安定供給に全力を尽くすことや、災害時にも機能する強靭な流通体制の構築、品質管理の徹底を明記した。従業員が心身ともに健康で能力を発揮できる職場環境を整え、次世代を担う人材にとって魅力ある医薬流通産業へ進化させる方針を示した。
環境面では、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けたエネルギー効率向上や再生可能エネルギーの活用を促進。さらに医薬品配送の効率化を図り、流通の最適化により環境負荷を軽減するほか、資源の有効活用を推進し廃棄物の削減やリサイクルの促進にも取り組む。