専業主夫とその妻
公開日時 2010/06/15 04:00
Nさんは数社の面接に落ちたあと、「専業主夫になります」と言って転職活動を休止してしまった…。
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人事・総務職Nさん(33歳)はまとめて十数社に応募したものの、すべて選考落ちという結果になった。有名大出身でキャリアもしっかりしているのだが、一見、遊び人タイプのNさんは、面接で「真剣味が感じられない」とはねつけられることが多かった。
既婚で子供が一人。離職してすでに3ヶ月近くになるので、もっと切迫したところがあってもいいのだが、Nさんはどこまでいってもマイペース(ハッキリ言うならチャンランポラン)。
我々は、Nさんに発破をかけ続けた。
「転職はキャリアだけで決まるものではありませんよ。意欲も大切。相手に訴えるものがなくては」
だが、彼から返ってくるのはいつも気のない返事ばかり。そして、ある日突然、予想外の連絡がやってきた。
「ボク、専業主夫になることに決めました。代わりに妻が仕事で悩んでいるそうなので、聞いてやってください」
こうしてNさんはアッサリ再就職をあきらめてしまったのだった。
一体、あのいい加減男の奥さんはどんな人なのだろうと我々はいぶかっていたのだが、紹介でやってきた事業企画職のYさん(32歳)は、実にスマートなビジネスパーソンだった。
我々がどれほど言っても、大雑把な内容の職務経歴書しか持ってこなかったNさんとは対照的に、Yさんは全ての出来事をきっちり記録していた。自分がかかわったプロジェクトについては、詳細の数字をよく把握しており、将来設計も堅実そのものだった。
Yさんの転職は決まるべくして決まった。ネット配信サービス受託B社は当面の収入は変わらないが、安定度の高い大手商社の関連会社で、仮にそこの事業が行き詰まっても、他への転籍が可能な職場だった。
さて、これだけならありがちな「ダメ夫とガンバル妻」の話なのだが、Yさんの話から漏れ伝わってきたのは、決してそういう構図ではなかった。
我々がYさんに「旦那様、Nさんはどうされてますか?」と、連絡ついでにそれとなく聞いてみたところ、嬉しげな様子で「主夫とし頑張ってくれていますよ」という話があった。
「長いことお世話になっていましたから、エージェントさんも分かっていらっしゃると思いますが、ああいう人です。何をするにつけてもいい加減で、完璧に家事をするタイプではないんですけど、育児に関しては彼の方が向いているんです」
子供の話になると、Yさんの声には罪悪感がこもっていた。
「私は、何でもキッチリやらないと気が済まないんですけど、4歳の子供にそれを求めても無理。分かっているのにいつもイライラしちゃって。彼が働いていたときは、シッターさんにお願いしていたけど、だんだん物心ついてきて、いろいろ要求するようになって、私、パンク寸前だったんです。彼が仕事辞めてくれなかったら、どうなっていたか…」
「そうでしたか」
「男のプライドとか、彼にもあると思うんですけど、そういうこと一切言わないでいてくれて。自慢に聞こえるかもしれませんが、夫は人間的にとても大きな人だと思っています」
我々の目から見ると、どうしても優秀な奥さんとイマイチな旦那さんに見えてしまうのだが、2人の関係においてはむしろ逆なのだとか。
一昔前、賢い女性は「旦那さんを手のひらの上で上手に転がす」と表現されたが、ひょっとすると、NさんとYさん、この2人はその逆なのかもしれない。こんなケースは今後増えていくのだろうかと、改めて考える我々であった。
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