一塩基変異多型に基づくリスクスコアが、冠動脈性心疾患リスクと関連
公開日時 2010/11/04 03:30
一塩基変異多型(SNP)が冠動脈性心疾患(CHD)のリスクと関連するかどうかを、フィンランドとスウェーデンのケースコントロール試験と前向きコホート試験とで分析した結果、13個のSNPを基にした遺伝子リスクスコアが、初発のCHDイベントと関連することが明らかになった。フィンランドHelsinki大のSamuli Ripatti氏らの研究グループが、学術誌「THE LANCET」のオンライン版に10月23日、発表した。
解析では、最近CHDとの関連性が発見された13のSNPから、多座位遺伝子リスクスコアをモデル化し、CHDの被験者3829人とCHDではない被験者4万8897人を対象としたケースコントロール試験②心血管疾患ではない被験者3万725人を対象に実施した前向きコホート試験――の2試験から、CHDとの関連性を検討した。また、遺伝子リスクスコアのリスク予測における潜在価値を評価するため、受信者動作特性(ROC)カーブを用いて、遺伝子リスクスコアと従来のリスク因子を使ったモデルと、従来のリスク因子だけを使用したモデルとを比較すると共に、純再分類改善(NRI)と統合判別改善(IDI)とでも評価した。
コホート試験の追跡期間は10.7年(中間値)で、1264人(4%)にCHDが発生。分析の結果、遺伝子リスクスコアで最も高い五分位に分類された被験者は、最も低い被験者と比べ、年齢や性別、典型的な心血管リスクを調整した後のハザード比が、CHDで1.66(95%CI:1.35-2.04)、心血管疾患は1.50(95%CI:1.29-1.75)、心筋梗塞は1.46(95%CI:1.15-1.86)と推定され、遺伝子リスクスコアはCHDと心血管疾患、心筋梗塞の発生と強い関連性があることが認められた。これらの結果は、遺伝子リスクスコアを三分位した場合でも類似していた。
またケースコントロール解析でも同様に、遺伝子リスクスコア5分位の最上位と最下位を比較し、オッズ比を評価したところ、CHDが1.63(95%CI:1.24-2.15)、心血管疾患1.30(95%CI:1.15-1.47)、心筋梗塞1.56(95%CI:1.38-1.76)となった。
しかしながら、ROCのC統計を用いて同モデルのリスク予測価値を評価した結果、遺伝子リスクスコアを使ったモデルは使わないモデルと比べて、リスクの識別力は向上しておらず、NRIによる評価でも優位性は見られなかった。IDIによる評価では、若干の向上が見られた。
これらの結果から研究グループは、「同遺伝子リスクスコアを用いることにより、冠動脈心疾患イベントの初発リスクが約70%高くなっている、ヨーロッパ系の20%に当る人々を特定することが出来る」とした上で、臨床的な潜在利用価値については今後明確にする必要があるとまとめている。