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【AHAリポート】GRAVITAS 新規血小板機能測定機器で検出されたクロピドグレル低反応性患者への倍量投与は有効性示せず

公開日時 2010/11/19 05:30

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)により薬剤溶出ステント(DES)留置に成功後、VerifyNowにより検出されたクロピドグレル低反応性患者へのクロピドグレル倍量投与は、有効性が示されなかった――。残存血小板反応性の値に基づいたクロピドグレル倍量投与の有効性を検討した多施設大規模無作為化比較試験「GRAVITAS(Gauging Responsiveness with A VerifyNow Assay)」の結果から明らかになった。米・Scripps ClinicのMatthew J.Price氏が、米国・イリノイ州シカゴで開催されている米国心臓協会(AHA)2010年次学術集会で11月16日に開かれた「Late-Breaking Clinical Trials Ⅲ」セッションで報告した。


クロピドグレルの反応性は個人差があることが知られており、効果が十分に得られない低反応性(不応性)患者がいることが知られている。この低反応性を見つけるツールとして用いられているのがVerifyNowだ。VerifyNowを用いて測定した残存血小板反応性が高い(high residual reactivity:HRPR)患者がクロピドグレル低反応性とされている。


最近になって、PCI後に、VerifyNowを用いて測定した残存血小板反応性が高い人(HRPR)では、臨床転帰が不良であることと関連していることが、3000人以上の患者を登録した7つ以上の臨床試験で示されている。


このような中で、残存血小板反応性を測定し、反応性が高い患者に対し、クロピドグレルを倍量投与することで、治療成績向上を目指す“Point-of-care”が重要視されるようになってきた。一方で、高い残存血小板反応性がある患者を対象に、治療戦略をめぐる大規模ランダム化比較試験はこれまで行われていなかった。


◎安定狭心症が6割含まれる患者集団対象に実施


試験は、高い残存血小板反応性(HRPR)の患者に対するPCI後の心血管イベント発症抑制効果は、標準用量のクロピドグレルに比べ、高用量のクロピドグレルの方が高いことを検証する目的で実施された。


対象は、DES留置後12~24時間後にVerifyNowを用いて血小板凝集率(PRU値)を測定した患者5429例。PRU値が230以上だった高い残存血小板反応性の患者2214例を、①高用量群(600mg投与後、150mg/日を6カ月間投与)1109例②標準用量群(75mg/日を6カ月間投与)1105例――の2群に分け、治療効果を比較した。一方、PRU値が230未満だったのは、3215例(59%)だった。主要評価項目は、6カ月後の心血管死+非致死性心筋梗塞+ステント血栓症の発症率。


PRU値は、高用量群で282、標準用量群で283。安定狭心症が高用量群、標準用量群ともに60%含まれているのが特徴となっている。


◎高用量群と標準用量群で出血リスクは同等


その結果、主要評価項目の発症率は、高用量群2.3%、標準用量群2.3%で両群間に有意差はみられなかった(ハザード比:1.01、95%CI:0.58~1.76、P値=0.98)。なお、PRU値は標準用量群、高用量群でPCI直後に有意差はみられなかったものの(P値=0.98)、30日後、60日後にはともに高用量群で有意に抑制されていた(P値<0.001)。


一方、安全性については、GUSTO基準による重度+中等度出血は高用量群で1.4%、標準用量群では2.3%で両群間に有意差はみられなかった(P値=0.10)。なお、重度は、出血合併症が頭蓋内に発生したケースや、治療を要する著明な血行動態の悪化に至ったケース。中等度は、輸血が必要なケース。


そのほか、全ての出血も、高用量群で12.1%、標準用量群では10.3%で両群間に差はみられなかった(P値=0.18)。


◎残存血小板数高い群 少ない群と比較も有意差なし


二次解析として、クロピドグレル標準用量を投与された①残存血小板反応性が高い患者(PRU≧230)1105例②残存血小板反応性が低い患者(PRU<230)586例――の2群に分け、比較した。


その結果、主要評価項目の発症率は、残存血小板反応性が高い群で2.3%、低い群では1.4%で両群間に有意差はみられなかった(ハザード比:1.68、95%CI:0.76~3.72、P値=0.20)。なお、PRU値(平均)は高用量群で283PRU、標準用量群で151PRUだった(P値<0.001)。


これらの結果から、Price氏は「GRAVITASの結果は、PCI後の1回の血小板機能検査で、残存血小板反応性が高かった患者に対する高用量のクロピドグレル投与は支持しない」と結論付けた。

ただし、Price氏は対象患者のリスクが低く、主要評価項目も試験開始時に想定していた5%の半数にしか到達していないことを指摘。試験のパワー不足が今回の結果につながったとの見方を示した。


◎Mega氏 高リスク群では倍量投与有効の可能性も


Discussantとして登壇したBrigham and Women’s HospitalのJessica L.Mega氏は、主要評価項目の発症率が2.3%と低率であったことから、同試験のパワー不足を指摘した。その上で、「この試験は、血小板機能に基づいた抗血小板薬の倍量投与から得るベネフィットを排除するものではない」との見解を表明。安全性や認容性が高用量群と標準用量群で同等であったことから「高リスク群では異なる結果となるかもしれない」と述べた。


また、高い残存血小板反応性については、「あくまでリスクマーカーであって、修正可能な危険因子ではない」とした。そのため、残存血小板反応性を指標としたクロピドグレルの倍量投与は「ベネフィットを得られないかもしれない」との見解を示した。
 

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