【ESCOリポート】JASAPサブ解析 頭蓋内出血発生 収縮期血圧値の変動、拡張期血圧値の高さが影響
公開日時 2011/07/20 04:00
虚血性脳卒中を再発した患者では、平均収縮期血圧値の高さが影響を与えている一方で、頭蓋内出血を発生した患者では収縮期血圧値の変動や拡張期血圧値の高さが影響を与えている可能性が示唆された。ジピリダモールとアスピリンの配合剤(Aggrenox)とアスピリン単独の脳梗塞再発予防効果を検討した「JASAP(The Japanese Aggrenox Stroke Prevention vs. Aspirin Programme)」の受診時血圧に関するサブ解析結果から分かった。5月27日に開かれたセッション「Large clinical trials(RCTs)」で、東京女子医科大学神経内科主任教授の内山真一郎氏が報告した。
冒頭で、内山氏は、3月11日に起きた東日本大震災について触れ、「震災後の被災者の死亡には、地震や津波によるものだけでなく、脳卒中を含む災害関連死が含まれている」ことを説明。「恐怖や不安から、血圧が上昇したり、変動していることが要因として考えられる」と指摘し、高血圧を基盤とした脳卒中発症を抑制することの意義を強調した。
その上で、最近のエビデンスでは、血圧値だけでなく、血圧値の変動と脳卒中発症との関連性が報告されていることを紹介し、同試験の意義を説明した。
非心原性脳梗塞患者を対象に、徐放性ジピリダモール+アスピリンとアスピリン単剤の有効性・安全性を検討した「JASAP」のサブ解析として行われ、収縮期血圧値、拡張期血圧値、個人の血圧値の変動が、虚血性脳卒中の再発、頭蓋内出血(ICH)の発生に与える影響を検討した。平均観察期間は、1.3年間。
対象は、50歳以上で、2つ以上の危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙、BMI≧25、血管疾患の既往、末梢臓器障害、高脂血症)がある非心原性虚血性脳梗塞患者1294例であった。収縮期血圧値≧180mmHg、拡張期血圧値≧120mmHgの患者は除外した。
男性が71.5%を占め、平均年齢は66.1±8.4歳、高血圧患者は88.3%だった。ベースライン時の収縮期血圧値(平均)は140.9±18.1mmHg、拡張期血圧値(平均)は、81.5±11.8mmHgだった。血圧測定は、ベースライン時、0週、1週、その後4週ごとに最大124週まで行った。虚血性脳卒中の再発(77例)、頭蓋内出血の発症(26例)の有無に分け、収縮期血圧値、拡張期血圧値とそれぞれの標準偏差(SD)について検討した。
頭蓋内出血発生患者で
収縮期血圧の変動大きく
その結果、虚血性脳卒中の再発の有無に分けて比較したところ、再発群では収縮期血圧値が140.6mmHgだったのに対し、非再発群では135.4mmHgで、有意に再発群で高い結果となった(P値=0.0024)。
拡張期血圧値は、再発群で79.9mmHgだったのに対し、非再発群では77.8mmHgで、有意差はないものの、再発群で高い傾向がみられた(P値=0.0824)。
収縮期血圧値のSD値は、再発群で10.2に対し、非再発群では9.2、拡張期血圧値のSDは、再発群で6.3に対し、非再発群では5.9で、いずれも有意差はなかった(それぞれ、P値=0.1576、0.4778)。
頭蓋内出血の発生の有無に分けてみると、収縮期血圧値が発生群では137.7mmHgに対し、非発生群では135.7mmHg、拡張期血圧値は、発生群で80.4mmHg、非発生群で77.9mmHgで、いずれも有意差はみられなかった(P値=0.4770、0.2002)。
一方、収縮期血圧値のSDは発生群で12.0、非発生群では9.2で、発生群で有意に大きい結果になった(P値=0.0246)。拡張期血圧値のSDは発生群で7.2、非発生群で5.9で、やはり有意差はなかった(P値=0.1040)。
そのほか、最終診察時の血圧値と虚血性脳卒中との関連性を検討したところ、収縮期血圧値は、再発群で高い傾向がみられたが、有意差はみられなかった(P値=0.0853)。
これに対して、頭蓋内出血との関連性は、収縮期血圧値は、発生群で142.5±17.2mmHg、非発生群で136.3±17.2mmHgで、発生群で高い傾向がみられ(P値=0.0714)、拡張期血圧は発生群で84.0±12.7mmHg、非発生群で78.1±11.6mmHgで、有意に発生群で高い結果となった(P値=0.0119)。
内山氏は、これらの結果から、「抗血小板療法中の患者において、血圧値と、その変動が、虚血性脳卒中の再発と、頭蓋内出血の発生に異なる影響を与える可能性があることを示唆している」と結論付けた。