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ステント血栓症の発生頻度低下に期待

公開日時 2011/09/09 04:00

第二世代DES登場で変わるインターベンション治療

門田氏 

 

 

 

 

 

 

倉敷中央病院心臓病センター循環器内科主任部長
門田 一繁 氏に聞く

 

エベロリムス溶出性ステント(XIENCE)、バイオリムス溶出性ステント(Nobori)という、いわゆる“第二世代薬物溶出性ステント(DES)”が登場し、変わりつつあるインターベンション治療。さらに次世代の体内で最終的には、消えてしまう“生体吸収性ステント”の臨床試験も国内でスタートするなど、さらにデバイスは進歩を遂げそうだ。インターベンションの治療経験を数多く持つ倉敷中央病院心臓病センター循環器内科主任部長の門田一繁氏に、インターベンション治療の現状と課題を中心に話を聞いた。

 

 

 

 

 

 

――第2世代のDESの登場で臨床現場は変わりましたか?

 

 

門田氏 XIENCEステント、NOBORIステントともに、プラットフォームに特徴があるステントです。分岐部病変や一部左主幹部病変など、より複雑な病変にも対応しやすくなり、初期成績、遠隔期成績が向上するのではないかと期待しています。
 

すでにXIENCEについては、短期・中期の再狭窄率が第一世代DESのシロリムス溶出性ステント(CYPHER)に比べ、低下するとの成績が報告されています。XIENCEとNOBORIの2つのステントの使い分けは、使用成績が明らかになるのを待ちたいと思いますが、プラットフォームの形状から、少なくとも大きな側枝にはNOBORIが、ステントの薄さが特徴のXIENCEは再狭窄病変への治療に期待できるのではないか、と考えています。
 

また、ステント血栓症の発現頻度も半分程度に減少するのではないかと期待しています。当院でのデータによると、CYPHER留置で発生した超遅発性ステント血栓症(VLST、留置から1年以降に発生)は、年間約0.2%でした。頻度は低いですが、1年経過以降も発生している点は重要です。
 

XIENCEを留置した1428例2453病変の治療成績では、遅発性血栓症(LST、留置から30日~1年以内に発生)の発生は1例でしか認めておらず、ステント血栓症の発生頻度がさらに低下することが期待されています。ただ、いったん発症すると、重篤になるケースも少なくありませんから、今後もステント血栓症の発生をいかに防ぐか、は重要な課題です。

 

 

 

 

 

PSSとstent  fractureがステント血栓症発生の危険因子に

 

 

 

――ステント血栓症の発現頻度が高い病態とは。

 

 

門田氏 ステント血栓症の危険因子として、ステントの周囲に造影剤がしみ出している像、いわゆる“PSS(peri-stent contrast staining)”と、ステントが折れてしまう “stent  fracture”があることが分かってきました。
 

PSSは、4種類に大別できるのですが、特に“Segmental irregular-contour”と呼ばれる不規則なPSSでは予後が悪いのではないかと考えています。また、PSSが進行する症例では、ステント血栓症の発生が高く、この進行例がSegmental irregular-contourでは多い傾向を認めています。
 

倉敷中央病院では、PSSの発生率はXIENCE(976病変)で3.3%だったのに対し、CYPHER(2977病変)では2.4%で、XIENCEで少なくない頻度でした。ただ、Segmental irregular-contourは、CYPHERの52.9%に対し、XIENCEでは18.8%で、発生率が大きく異なります。PSSの進行例は、CYPHERの34.4%に対し、XIENCEでは現時点ではみられていません。
 

CYPHERのPSS進行例では、10%程度の頻度で、ステント血栓症を発生していましたが、第2世代のDESでは、PSSの進行例が減少する傾向を認めており、ステント血栓症の発生頻度も減少する可能性があると考えています。
 

現在、より多数例であるj-CYPHERのサブ解析でも、PSSの有無とステント血栓症との関連性の検討が進められており、この結果も待たれるところです。
 

もう1つの危険因子であるstent  fractureは、メカニカルな要素で起こっていることが多く、第2世代のDESでは、CYPHERに比べ、半減すると期待しています。
 

実際、CYPHERでは5.8%だったのに対し、XIENCEでは2.4%、NOBORIとほぼ同じプラットホームのBiomatrix ステントでは2%前後とのデータもあります。
 

ただ、これらの因子は血管造影検査(アンギオグラフィ)をしなければ、分からないという限界がありあます。
 

また、血管造影検査は再狭窄の確認のために、倉敷中央病院では8カ月で約8割で行っていますが、第2世代DESの再狭窄率がさらに低下することが確認されれば、全例に実施する意義があるか今後検討する必要があるかもしれません。

 

 

 

 

 

ハイリスク群では可能な限り抗血小板薬2剤併用を

 

 

 

――抗血小板薬のアスピリンとクロピドグレルの2剤併用(DAPT)の投与期間について、先生のお考えをお聞かせください。

 

 

門田氏門田氏 米国心臓病学会財団(ACCF)と米国心臓協会(AHA)のGLで推奨される“1年間”というのは現時点では妥当だと考えています。
 

ただ、実臨床では1年以降もステント血栓症を起こす患者がいる事実があります。それが左主幹部であれば突然死を引き起こすなど、一度起きれば重篤です。ステント血栓症が発生した患者さんで、DAPTの投与を中止していた症例を少なからず経験しています。
 

特に、ステント血栓症の発生リスクが高いPSSとstent  fractureがみられた症例や、2つ以上のステントを留置した症例では、出血性合併症がなければ、可能な限りDAPTを継続することが望ましいのではないかと思います。
 

DAPTの投与期間をめぐり、国内外で臨床試験が進められていますが、ステント血栓症の発生頻度は低くなっており、ステントも薬剤も進歩する中で、有意差を示すことは難しくなってくるのではないかと思っています。
 

ただ、ハイリスク群で抗血小板療法を継続しなければいけない患者がいることは忘れてはいけないと思います。

 

 

 

 

 

新世代ステントへの期待

 

 

 

――今後の治療への期待をお聞かせください。

 

 

門田氏 7月20日付で、厚労省医薬食品局から各都道府県衛生主管部(局)長宛てに出された「冠動脈ステントに係る使用上の注意の改訂等について」で、急性心筋梗塞(AMI)患者に対するDES留置が禁忌・禁止から慎重に適用するようにとに変更されました。
 

保険診療の適応となるかは各都道府県の判断となりますが、AMIにDESを用いる施設が増えるのではないかと思います。
 

DESでは、遅発性ステント血栓症の頻度が、ベアメタルステント(BMS)と比べて高くなく、再血行再建率が低率であることに期待しています。
 

現在、新世代のステントとして、生体吸収性ステントの開発も進められています。最終的にはメタルステントを血管に留置しなくてもすむ治療が、やはり理想的と考えています。
 

第一世代のDESでは、血管内皮細胞の機能低下が起きることも報告されていますが、新世代のステントの登場により、血管の内皮機能が維持されることにも期待しています。

 

 

 

 

 

 

 

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