日本セルヴィエ・マレ代表取締役 血液がん領域で「MRの採用活動を続けている」 社員数1.5倍に
公開日時 2025/06/30 04:50

日本セルヴィエのアントニー・マレ代表取締役は6月26日、ティブソボ錠の発売に関するメディセミナーで、「血液がん領域に対応できるMRの採用活動を続けている」と述べた。ティブソボは経口投与のIDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)治療薬として6月2日に発売した。同社にとってはオニバイドやオンキャスパーに続く3剤目の自販製品で、今後も新製品や適応追加の承認取得を計画している。マレ氏は、「ローンチプロダクトチームとして(様々なポジションで)エキスパートを募集している」とし、「適切な上市、新製品の正しいポジショニングのための活動を医師や患者さんのために実行」できる人材を求めていると話した。
マレ氏は、日本セルヴィエについて、▽2026年までの2年間で、6カ月ごとに新たな治療選択肢を提供する、▽希少がんやアンメット・メディカル・ニーズへの貢献を継続し、がん領域における存在感をさらに強化する、▽今後5年間で売上を4~5倍に拡大する、▽3年間で社員数を1.5倍に増員する――ことを目標に事業展開していると紹介した。グローバルのセルヴィエグループの中で「日本は戦略的な拠点」だと言い、「(売上規模は)数年後にはグループ内でトップ3に入る見込み」だとした。
今年4月のミクスなどとのグループインタビューの際にも、この2年間は6カ月おきに1つのペースで承認を取得していく考えを披露し、ティブソボ(3月に承認取得)のほか、▽IDH1又はIDH2遺伝子変異陽性の神経膠腫を対象疾患とする経口IDH阻害薬・ボラシデニブ、▽ティブソボの胆道がんの適応追加、▽オニバイドの膵がん1次治療の適応追加――の取得を目指していることを明らかにした。2年間で4件の承認取得を念頭に、戦略的に組織を拡充するとし、がん領域経験者を中心にサイエンスレベルの高い人材を「大いに募る」と話していた。6月1日時点で157人の社員数は、3年間で200~250人の規模にする計画。
◎日本医科大病院・山口院長 「ティブソボは血液内科医として非常に待ち望んだ薬剤」
ティブソボは、IDH1遺伝子変異陽性AMLに対する国内初の分子標的薬。変異型イソクエン酸脱水素酵素1(変異型IDH1)の酵素活性を阻害することにより、腫瘍細胞におけるがん代謝物の産生を阻害し、腫瘍の形成を抑制する。海外では24年11月時点でIDH1遺伝子変異陽性AMLに対し41カ国で承認済み。一方、日本では、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬として日本血液学会から開発要望が提出され、24年6月に希少疾病用医薬品に指定されていた。
この日のセミナーに登壇した日本医科大学付属病院院長で、日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドライン委員会白血病領域委員長を務める山口博樹氏は、ティブソボがドラッグ・ラグの薬剤のひとつだったとした上で、「ティブソボは、いち血液内科医として、非常に待ち望んだ薬剤」だと強調した。
◎強力な寛解導入療法非適応の高齢AML患者でIDH1変異陽性の場合「ティブソボ+AZAが治療の第一選択に」
そして、高齢(生理的年齢65歳以上)AML患者のうち強力な寛解導入療法が適応とならない患者が半数以上にのぼる現状を指摘しつつ、このような高齢AML患者でIDH1遺伝子変異陽性を確認できた場合は、「ティブソボ+アザシチジン(AZA)併用療法が治療の第一選択になるという時代を迎えた」と解説した。
ティブソボの国内承認の根拠となった国際共同第3相試験(AGILE試験)は、強力な寛解導入療法の適応とならない未治療のIDH1遺伝子変異陽性AML患者を対象に実施した無作為化二重盲検比較試験。被験者をティブソボ+AZA群又はプラセボ+AZA群に1:1の割合で無作為に割り付け、1サイクルを28日間として、疾患進行又は許容できない有害事象が発現しない限り投与は最低6サイクル継続した。
その結果、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS:Event-Free Survival)は、プラセボ+AZA群に対するティブソボ+AZA群のハザード比は0.33(95%信頼区間:0.16~0.69)だった。副次評価項目のひとつの全生存期間(OS)中央値は、プラセボ+AZA群の7.9カ月に対し、ティブソボ+AZA群は29.3カ月で、ハザード比は0.42(95%信頼区間:0.27~0.65)。CR率(寛解率)はティブソボ+AZA群47.2%、プラセボ+AZA群14.9%だった。副作用としては心電図QT延長(16.7%)や分化症候群(11.1%)などが認められた。
山口氏は同試験の結果について、強力な寛解導入療法の適応とならない未治療のIDH1遺伝子変異陽性AML患者に対して、ティブソボ+AZA併用療法はプラセボ+AZA併用療法と比べて、▽EFSを有意に延長、▽CR率は有意に高値、▽OSを有意に延長――し、安全性は「適切な管理下で忍容可能で、これまでの薬剤と比べても、より安全性が高い薬剤」と解説した。
また、ティブソボが経口投与であることにも触れ、「高齢者の入院が長くなると認知機能やADL(日常生活動作)の低下など様々な問題が二次的に発生する。経口剤であることから通院治療ができることは大変魅力的なこと」だと指摘した。一定期間、無菌室病室で強力な化学療法を行うとのAML治療のイメージが、“自宅からの通院治療”に変わることにもなるとし、「ティブソボが新しい時代を切り開くという意味でも、非常に期待の高い薬剤」と述べた。