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【ISC速報】WARCEF 心不全患者へのワルファリン投与 アスピリンと有意差みられず

公開日時 2012/02/06 06:32

 正常洞調律の心不全患者において、死亡+虚血性脳卒中+脳出血の発生頻度は、ワルファリンとアスピリンとの間で、有意差がみられないことが分かった。ただし、ワルファリン投与にちより、虚血性脳卒中の発生頻度が有意に低かったほか、4年以降の長期間投与でベネフィットがみられる可能性も示唆された。多施設二重盲検下比較試験「WARCEF(Warfarin vs. Aspirin in Reduced Cardiac Ejection Fraction Trial)」の結果から分かった。Columbia University教授の本間俊一氏とJLP Thompson氏が2月1~3日まで米国・ニューオリンズで開催された国際脳卒中学会(ISC)で、3日に開かれたPlenary Sessionで報告した。(望月英梨)

試験は、正常洞調律で、左室駆出率(LVEF)が35%未満の心不全患者を対象に、死亡+虚血性脳卒中の発生の複合エンドポイントと、脳出血の発生頻度をワルファリンとアスピリンの2剤で比較し、大きな差がないことを示す目的で実施された。

心不全患者は、血栓塞栓症により、死亡と脳卒中のリスクが増大することが知られている。ワルファリンとアスピリンが汎用されているものの、大規模な患者集団を対象に、2剤を比較した試験はこれまで実施されていなかった。


対象は、正常洞調律でLVEF≦35%の心不全患者で、▽心原性の塞栓がない▽心不全の最適な治療を受けている――ことを条件とした。ワルファリン(INR:2~3.5)群、アスピリン325mg群の2群に分け、治療効果を比較した。欧米など11カ国、176施設から2305例を登録した。なお、日本は含まれていない。登録期間は2002年10月~10年1月までで、追跡は2011年7月に終了した。主要評価項目は、死亡+虚血性脳卒中+脳出血の複合エンドポイントとした。

ワルファリン群は1142例(4045患者・年)、アスピリン群は1163例(4033患者・年)が登録され、平均追跡期間は、ワルファリン群で3.54年(1‐6)、アスピリン群は3.47年(1‐6)だった。平均プロトロンビン時間国際標準比(INR)値は、2.5±0.95、INR至適範囲内時間(TTR:Time in Therapeutic Range:2~3.5)は、63%だった。


◎ワルファリン群 虚血性脳卒中の頻度有意に低下も 大出血は有意に増加


主要評価項目の発生率は、ワルファリン群は7.47%/年(302例/4045患者・年)に対し、アスピリン群は7.93%/年(320例/4033患者・年)で、ハザード比は0.93(0.79-1.10)で、両群間に有意差はみられなかった(p=0.40)。


内訳をみると、死亡や脳出血は2群間に有意差はみられないものの(p=0.91、0.35)、虚血性脳卒中の発生率はワルファリン群の0.72%/年(29例/4045患者・年)に対し、アスピリン群は1.36%/年(55例/4033患者・年)で、有意にワルファリン群で低い結果となった(p=0.005)。また、経年経過を追って、イベントの発生率を比較すると、時間が経過するにつれ、ワルファリン群で有意に良好な結果となった(HR:0.894[0.800-0.998]、p=0.046)。

副次評価項目の複合エンドポイント(主要評価項目+心筋梗塞+心不全による入院)は、ワルファリン群で12.70%/年、アスピリン群で12.15%/年で、両群間に大きな差はみられなかった(HR:1.07 [0.93-1.23]、p=0.33)。


大出血は、ワルファリン群で1.78%/年(72例)に対し、アスピリン群で0.87%/年(35例)で、ワルファリン群はアスピリン群の2.05倍で、有意に多い結果となった(p<0.001)。頭蓋内出血、脳出血は両群間で有意差はみられず(p=1.0、0.45)、消化管出血(GI)やその他の出血はワルファリン群で有意に多い結果となった(ともにp=0.01)。
本間氏らはこれらの結果から、主要評価には有意差がみられなかったとした上で、「ワルファリンのベネフィットは、4年目とそれ以降にみられる可能性がある」と指摘した。ただし、試験全体では有意差がなく、ワルファリン投与により、出血リスク上昇が懸念される点を強調。「ワルファリンかアスピリンどちらを選択すべきか強固なエビデンスは現在のところない」と述べた。

その上で、脳卒中予防において、有用性を明らかにし、4年以降のワルファリンのベネフィットを明らかにするためにも、「ワルファリン、アスピリンでベネフィットを得られる患者集団を特定する分析を行うことが必要」との見解も示した。

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