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【日本造血細胞移植学会総会】L-AMB併用時にタクロリムスの血中濃度に影響を与えず安全性を確認

公開日時 2012/04/23 14:00

橋井佳子氏造血幹細胞移植を施行した小児の悪性腫瘍患者 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第34回日本造血細胞移植学会総会
2012年2月24~25日 大阪国際会議場

 

 

大阪大学大学院医学系研究科の橋井佳子氏(小児科学)は、小児への造血幹細胞移植(SCT)時に真菌感染症の発症または発症が疑われた症例に、免疫抑制剤タクロリムス(Tac)と抗真菌薬アムホテリシンBリポソーム製剤(製品名:アムビゾーム、以下L-AMB)を併用した際の安全性について検討した。その結果、Tacの血中濃度に影響を与えず、L-AMBが併用薬として適切な治療選択肢になり得ることが分かったとの報告を2月24~25日に開かれた第34回日本造血細胞移植学会総会(大阪国際会議場)の一般口演で発表した。

 

 

 

 

 

L-AMBについては、深在性真菌症に対する有効性と安全性が確認されているが、造血幹細胞移植時の免疫抑制剤(Tac)との併用時の安全性は明らかではない。そこで、橋井氏らは、TacとL-AMBとの併用による腎機能および肝機能への影響と、Tacの血中濃度への影響をレトロスペクティブに検討した。
 

調査では、L-AMBを単独投与した症例およびL-AMB投与中にTacを併用した症例それぞれで、電解質、腎機能および肝機能における有害事象を調査し、比較検討した。対象患者の基礎疾患は血液腫瘍13例、固形腫瘍5例であった。
 

L-AMB単独投与例およびTacとL-AMB併用投与例において、それぞれのクレアチニン値のベースライン値は0.27±0.06mg/dL、0.28±0.15mg/dL、最高値は0.53±0.28mg/dL、0.50±0.35mg/dL、終了時の値が0.35±0.08mg/dL、0.45±0.40mg/dLで、各ポイントにおいて両群間に差はなかった。また、肝機能(ALT)のベースラインの値はそれぞれ50±29mg/dL、67±93U/L、最高値は167±164U/L、148±136U/Lで、終了時の値は89±93U/L、95±98U/Lで、同様に各ポイントにおいて両群間に差は認められなかった。ただし、腎機能の指標であるシスタチンCについては、ベースラインの値は0.64±0.23、0.71±0.26mg/dL、最高値が0.87±0.32mg/L、1.35±0.80mg/L、終了時の値が0.84±0.21mg/L、1.18±0.52mg/Lとなり、Tac併用例で最高値と終了時において、L-AMB単独投与例に比べて若干高値を示した。これについて橋井氏は「シスタチンCについてはL-AMBの投与終了時に数値はもとに戻るが、注意が必要」とした。

 

 

 

 

 

Tac血中濃度に影響を与えず

 

 

図橋井氏らは、Tac投与中にL-AMBを併用しTacの血中濃度に対する影響を検討した。対象症例はTac投与中にL-AMBを併用投与した血液腫瘍患者6例、固形腫瘍患者2例。Tacの血中濃度を投与量で割ったC/D比(Tac血中濃度/体重換算投与量)を算出し、検討した。投与直前および投与中のTacの濃度変化は認められず、L-AMBはTacの血中濃度に影響を及ぼさないと考えられた()。
 

これらを踏まえ、橋井氏は、「TacとL-AMBを併用した際に腎機能への影響は注意する必要があるが、Tacの血中濃度には影響を与えず、L-AMBはTac投与中の深在性真菌症治療薬の選択肢として適切であると考えられた」と説明した。

 

 


 

 

大阪大学大学院医学系研究科 小児科学 講師
橋井 佳子 氏に聞く

 

 

当院では真菌感染症の予防治療としてキャンディン系抗真菌薬を使いますが、アゾール系抗真菌薬をTacと併用するとTacの血中濃度が上昇します。効果は認められますが、何らかの理由でアゾール系抗真菌薬を投与中止するとTacの血中濃度が急激に下がり、GVHD(Graft Versus Host Disease)を発症、または重症化することがあります。それを抑えるためにステロイドなどの免疫抑制剤を追加する必要がありますが、一方では真菌感染症発症の危険度が増加します。
 

SCT時においてL-AMBは、他の抗真菌薬によってブレークスルーを起こすカンジダやアスペルギルス等の真菌に対しても非常に有効性が高く、それらの真菌感染症の発症を抑制させることが可能です。
 

L-AMB使用時、一時的に腎機能が悪化することもありますが、可逆的と考えています。
 

これらを踏まえると、特に真菌感染症が疑われるときは、標的治療(真菌感染症が明らかなときの治療)としてのみならず、早期の先制攻撃的治療(真菌感染症が疑わしいときの治療)としてL-AMBを使うべきと考えています。
 

 

 

 

 

 

 

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