肺高血圧症に対するシルデナフィルとベラプロストの併用が歩行距離を向上:BEST試験
公開日時 2013/06/09 00:00
肺高血圧症(PAH)患者において、PDE-5阻害薬のシルデナフィルに経口プロスタサイクリン製剤のベラプロストを追加する治療法が、6分間歩行距離(6MWD)を向上し、血行動態の改善に有効的であることがわかった。PAH患者において、これら2剤の併用を検討した試験はこれが初めてという。中国Fu Wai Hospital & National Center for Cardiovascular DiseaseのZhi-Cheng Jing氏が発表した。
試験では、WHO FCがII〜IV度で、シルデナフィルによる治療を3〜6カ月間安定的に受けている症候性PAH患者60例を対象に、ベラプロストを追加する被験者群(30例)と、ベラプロストは追加せずシルデナフィル単剤を継続する被験者群(30例)に無作為に割り付けた。主要評価項目は6MWDのベースラインからの変化とし、副次評価項目にはN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)濃度とWHO FC、血行動態のベースラインからの変化、臨床的悪化(死亡、移植、PAH悪化による入院、追加療法の開始と定義)までの期間を設定した。
患者特性において有意な群間差はなく、年齢は併用群が39歳、単剤群は37歳、WHO-FC II度が併用群で13例、単剤群は14例、III度が両群とも16例だった。6MWDは併用群が377m、単剤群が396m、シルデナフィルの平均投与量は併用群が69mg/日、単剤群は64mg/日だった。
12週目の検査における6MWDは、併用群でより大きな向上が見られたものの、単剤群に対する調整後の差は36.2mで有意差は認められなかった(p=0.072)。しかし、24週目の検査では、調整後の群間差が45.2mに増加し、併用群は単剤群と比べて有意な向上が示された(p=0.042)。
NT-proBNP濃度は、12週目で単剤群がベースラインから300 pg/ml増加したのに対し、併用群は437 pg/ml減少し、24週目では単剤群が46 pg/ml増加、併用群は399 pg/ml減少しており、どちらの時点でも併用群は単剤群と比べて有意に向上していた(どちらもp<0.001)。またWHO FCが1分類以上改善した患者の割合は、単剤群では6.7%だったのに対し、併用群は33.3%で、有意に上回ってた(p=0.01)。
血行動態の項目では、心係数と肺血管抵抗値において、併用群が有意に向上しており、また臨床的悪化までの期間においても併用群は単剤群と比べて有意に長かった(p=0.027)。
一方、併用群ではベラプロスト追加による有害事象の増加が見られ、頭痛、下痢、吐き気、めまい、あごの痛みが、単剤群と比べて有意に多かった。