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REACH Registry スタチン療法でPAD患者の四肢の転帰悪化を抑制

公開日時 2013/09/05 05:00

末梢動脈疾患(PAD)患者にスタチン療法を行うことで、心血管イベントの抑制に加え、PAD症状の転帰悪化抑制も期待できることが分かった。アテローム性血栓症の高リスク患者を追跡した、大規模観察登録研究「REACH Registry(Reduction of Atherothrombosis for Continued Health Registry)」を解析した結果から分かった。8月31日からオランダ・アムステルダムで開催されている欧州心臓病学会(ESC)2013の9月3日のセッション「Registry Hot Line:Registries on Risks, Therapies and Outcomes」で、米University of Texas Southwestern Medical CenterのDharam Kumbhani氏が報告した。Dharam Kumbhani氏

 

PAD患者は、死亡を含め、全身の心血管イベントの発症リスクが3~5倍と報告されている。これに対し、スタチンの投与により、冠動脈イベント、脳卒中、血行再建術の施行回数の減少が報告されていることから、GLではPAD患者におけるスタチン投与はClassⅠで推奨されている。さらに、進行したPAD患者では下肢の切断が25%とも報告されているが、スタチンは痛みのない歩行距離の延長に寄与することも示されている。

 

そこで、REACH Registryに登録された症候性PAD症例において、4年間のスタチン療法の全身性および四肢の転帰への影響を検討した。主要評価項目は、全身性の転帰を示す複合エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)、四肢の転帰として、PAD症状の悪化(間欠性跛行の悪化および重度の四肢虚血による新しい症状の発現、下肢血行再建術の施行、切断)。

 

解析対象となった5861例のうち、スタチン投与は3643例、非スタチン投与は2218例だった。患者背景として、有意差がみられたのは、平均年齢、性差で、非スタチン群ではスタチン群より有意に、平均年齢が高く(スタチン群:68.2歳、 非スタチン群:70.0歳、p<0.0001)、男性が高率だった(71.4% 、74.6%、p=0.0084)。一方、スタチン群では、糖尿病(44.7% 、 39.6%、p=0.0002)と高コレステロール血症(94.3% 、15.6%、p<0.0001)、高血圧(83.8% 、73.7%、p<0.0001)、肥満(24.8% 、16.7%、p<0.0001)、現喫煙者(53.3% 、47.7%、p<0.0001)、冠動脈疾患(58.2% 、32.7%、p<0.0001)、Polyvascular disease/複数の動脈疾患の合併(67.6% 、44.2%、p<0.0001))が、非スタチン群と比べて有意に高率だった。足関節上腕血圧比(ABI)は、スタチン群0.72、非スタチン群0.70、ABI<0.9は89.4%、91.5%、血行再建術の治療歴は54.0%、50.4%、総コレステロール値は5.1 mmol/L、5.2 mmol/Lだった(p=0.01、0.0042、0.089、0.0076)。

 

全身性の評価項目(心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイント)についてのスタチン投与の寄与は、多変量解析でのハザード比で0.83(95% CI: 0.73 – 0.96、p=0.0094)、時間依存性共変量を用いた解析では0.79(95% CI: 0.67 – 0.93、p=0.0038)、傾向スコア解析で0.85(95% CI: 0.75 – 0.96、p=0.0083)と、スタチンの投与により、心血管リスクは有意に17~21%低下していた。

 

PAD悪化に対するスタチン投与のハザード比は、多変量解析で0.82(95% CI: 0.72 – 0.92、p=0.0013)、時間依存性共変量を用いた解析で0.85(95% CI: 0.75 – 0.97、p=0.018)、傾向スコア解析で0.79(95% CI: 0.71 – 0.89、p<0.0001)で、スタチンの投与によりPADの進行が有意に15~21%抑制されることも示された。
評価項目別に解析した結果、スタチン投与により、非致死性脳卒中(多変量解析:0.73、スタチン使用の時間依存性共変量を用いた解析:0.75、傾向スコア解析:0.73)、間欠性跛行の悪化および重度の四肢虚血による新しい症状の発現(0.82、0.84、0.78)、下肢の切断(0.64、0.60、0.57)について有意なリスク低下が認められた。

 

結果を報告したKumbhani氏は、「スタチンの投与はPAD患者において、ガイドラインではClassⅠで推奨されているにもかかわらず、必要な患者の約2/3しか投与されていなかった」と指摘した。全身性の転帰については、「これまでのランダム化比較試験(RCT)と一貫した結果で、イベントリスクを低下させた」と述べた。その上で、先行研究では、スタチン投与により、痛みのない歩行距離の延長や血行再建術の施行回数の低下が報告されているが、同研究が「初めて四肢の転帰を検証した最大規模の研究だ」と試験の意義を強調。「今後の研究では、PAD患者全体において、スタチン療法に対するコンプラアンスの向上に注力していく必要がある」との見解を示した。

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