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現在の若手ドクターは何を考え、どんな悩みを抱えているのか

公開日時 2015/12/15 05:00

情熱的読書人間
榎戸 誠

 

【ドクターの環境激変】

私のMR時代には、親しくなった若手ドクターたちから、しばしば相談事を持ちかけられたものである。現在はMR活動の環境が変化してきているが、若手ドクターの環境も2004年以降、激変している。『医師・医学部のウラとオモテ――「悩めるドクター」が急増する理由』(中村正志著、朝日新聞出版)は、その激変ぶりと、ドクターがどういう悩みを抱えているのかを、具体的に提示している。

 

【ドクターの悩み】

ドクターたちは、どういう悩みを抱えているのだろうか。「(若手ドクターの)悩みの内容は主に、『将来の選択』『仕事そのものへの自信喪失』に大別できます」。さらに、「将来の選択」の悩みは、「自分は将来、何科の医師になればいいのか?」、「そのためにはどんな研修病院に就職したらいいか?」の2つに集約できるという。

もう一方の「仕事そのものへの自信喪失」に悩んでいるドクターは、たいていはハードな仕事に疲れてしまっているようだ。

「医師の卵が一人前の医師になるまでの流れは、おおよそ次の通りです。6年制の医学部に入学して、卒業見込み以上で毎年2月に実施される医師国家試験を受験、合格すると医師免許証が得られます。その時点で医師になるわけですが、プロとして患者を診るには、病院で実際に患者を診療する『臨床』の経験を重ねる必要があり、次はそのための研修期間に入ります。まずは初期臨床研修を2年間、そこでいくつかの診療科をまわり、基礎的な疾患を診る力をつけます。その後、希望の診療科を決めて後期研修を通常3~5年間受け、自分は〇○科の医師と名乗れる立場になります(内科、外科、精神科など専門の大枠が決まる)。そのまた後はさらに専門を絞り込み、その分野の患者が多い病院に勤務し、内科医なら例えば消化器内科、外科なら心臓外科といった特定の診療分野の専門家として働きます。医学部入学からこうした専門家になるまで10年余り。その間に何度か訪れる『選択』で迷いに迷う医師がとても多いのです」。この原因は、ますます進む専門の細分化と、医師になるまで仕事の具体像を考えていない人が多いことだという。

2004年に始まった新医師臨床研修制度による研修の必修化が悩みをもたらしているのだ。「(新医師臨床研修制度)導入前は出身大学内の診療科ごとの組織である『医局』が主な研修の場だったのですが、2004年度以降は大学、市中病院を問わず、全国の病院の中から自分の研修先を選べるようになったのです。つまり選択肢がいきなり増えたわけです。また、新医師臨床研修制度は、医学生には研修病院が広く選べるという利点と同時に、研修中に自分が専門とする診療科を絞り込まなければならない難題をもたらしました」。

 

【大変な勤務医生活】

勤務医の生活は、どれくらい大変なのだろうか。「一般的に勤務医は、病院の診療が始まる朝の8時前には出勤しています。仕事の流れは、朝はまず病棟回診、外来診察、外部に分析を依頼する検査出し、午後からは再度病棟回診、カンファレンス(症例検討会)の出席、医局会出席という感じになります。これだけでもけっこうやることが多いですが、電子カルテの入力、患者家族への検査や治療についての説明など、診療業務以外に取られる時間もバカになりません。その他に、外科系の先生であれば手術があります。診療科にかかわらず、内視鏡などの検査をしている先生もいます。また大学病院であれば自分の研究をしている場合もありますし、学会に向けて論文を書いている先生もいます。そうした数多くの仕事の中でも、勤務医の大きな負担となっているのは救急対応と病棟管理です。救急対応とは、救急車などで来院した患者にとりいそぎ必要な処置を行うこと。病棟管理とは、自分の受け持ち患者の状況を常に把握し、必要な処置を行うことです。・・・そして、その日にやるべきすべての仕事を終えて帰宅しても、勤務医は自分の受け持ち患者が急変すれば病院に駆けつけます。携帯端末で呼び出されるのです」。

「(勤務医の)研究日とは、例えば市中病院で勤務する先生が週1日は大学で自分の研究をする、教授に指導を請う、大学の外でも最新の医学をキャッチアップする、といった文字通りの医学研究のために設置されている日です。ただ、実際のところ、大部分の先生は研究日を普通の休みと変わらない感覚で捉えています。そして、休みだから何もしないか、というとそうではありません。何をするかといえば、アルバイトに励んでいるのです」。

 

【退局の決断】

「給料が安くて仕事がハードな大学病院ではなく、よりおいしい(=給与が高い)条件の市中病院を就職先にする医師ばかりになったかというと、そんなことはありません。今でも、後期研修以降、市中病院ではなく大学の医局に進む先生も多くいます、そのように医局に進んだ医師のうちのまた多くが、いずれ悩みを抱えるのが『医局の辞めどき』についてです。・・・医局の中での出世は困難だし、関連病院への派遣もいつどこに飛ばされるか分からない。馬車馬のように働いているのだが、その割には給与が安い・・・。そういった不安、不満が高まっていくと、医師は退局を検討し始めます。ただこれがそう簡単な話ではありません」。この後に、円満退局を実現するためのアドヴァイスが列挙されている。

 

【転職の理由】

ドクターは、なぜよく転職するのだろうか。「医師は、医局を辞めることを含め、生涯に3~4回は転職します」。「施設・医局の方針と合わなかった」、「自分が考える理想的な医療を提供したかった」といった転職理由が多く、男女別に見ると、男性では、「スキルアップをしたい」、「高収入を得たい」、「理想の医療を実現したい」が、女性では、「育児」と「勤務時間の短縮希望」が目立つということだ。

 

【若手の開業志向】

なぜ、若手ドクターの間で開業志向が増えてきたのだろうか。「大きな流れとしていえるのは、2004年度に臨床研修が必修化されて以降、ジェネラル志向の医師のキャリアが開けてきたことです。一昔前まで、若手医師は大学医局で5~10年の下積みをするのが常識でした。そこで自分に専門性をつけることを一番の目的としていました。その点は今も基本的に同じですが、臨床研修が必修化されてからは、複数の診療科をまたぎ、基礎的な疾患を診る研修を受けることが義務づけられました。開業医が診療所を開く場合に欠かせないプライマリ・ケア(患者の身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療)の知識、技能、態度を、免許取りたての医師たちが通常のプログラムとして学べるようになったのです」。これに続いて、開業するまでに必要なこと、開業医として成功するためのアドヴァイスが示されている。

現在の生身のドクターがどのような生活を送り、どんなことを考えてキャリアを形成していくのか、また、どのような悩みを抱えているのか――を知るのに、恰好な一冊である。

 

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