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地域包括ケア時代を生きぬく、医療ビッグデータに目を向けてみる

公開日時 2016/01/31 00:00

マルチチャネル3.0研究所
主宰 佐藤 正晃

 

「ビッグデータ」という言葉はIT業界だけではなく、またビジネス以外の場面でも聞くことは日常的になってきている。しかしながらビッグとデータという簡単な言葉を組み合わせただけの言葉ではあるが、本質的な意味に関して議論されている場は少ない。様々なデータはどこで生まれ、どのような使い方をしなければいけないか、そして来るべき医療ビッグデータ時代にどのような準備をしなければならないかに関して述べる事とする。

 

 

ビッグデータとは何か

 

外食産業等一般企業ではビッグデータの活用により経営改善が進んだという言葉が聞かれ始めた、大手回転すし企業あきんどスシローでは顧客に新鮮なネタを提供するため皿1枚毎にICタグをつけて、どのタイミングでどのようなネタが消費されたかを管理し現場にデータを提供しビッグデータサービスを実践している、従来型のPOSシステムでは皿の枚数や売上は解るが、顧客がどのようなネタが好んでいるかを理解し効率よく寿司を提供し原材料の無駄をなくし低価格で新鮮なネタを提供している。

 

2011年外資IT企業が年頭の挨拶で、今年はビッグデータ元年であると発表した事で一般的にはこの年をビッグデータ元年と言われている。ただ、この時はデータを集めて活用するITインフラの整備の考え方に目を向けられており、実際に一般企業でビッグデータ利用活用を掲げて中長期計画に記載されてきたのは2013年頃からである、実際にまだ3年程度に加速的に広まった言葉である。世界的調査会社のガートナー ジャパン株式会社のレポートによるとビッグデータを実際に活用している日本企業は6%という結果になり、取り組みが進まない理由として、48%の企業が「ビッグデータから価値を得る方法が分からない」との発表があった。ビッグデータの特徴としては3Vと言われる、volume(ボリューム)、velocity(速度)、variety(種類)のデータ一部またはすべてがそろったデータを指す(図1)。

 

 

また国内では平成24年総務省「情報通信白書」ではビッグデータを「事業に役立つ知見を導出するためのデータ」と定義しているので、本質的な意味は事業に使える、有益なデータという事である。読者の中には、膨大な量のデータの事を指しているのでは?とこれまで理解してきた方も多いと思う、確かに当初は膨大な量のデータが出現してそれはテラからペタ、エクサと続き…、等と言ったクイズ番組でできてきそうなキーワードで語られることも少なくなかった。現在はビッグデータで何が出来るの?誰が利用できるの?どうやって活用するの?といった実質的な利用イメージの議論が非常に多い。ビッグという言葉から一見「どの位」といった量的な意味に捕らわれてしまうが実際には「何をする」といった質的な意味の方が重視されなければならない。つまり「何を実現したい」を定義し、そのために「どの様なデータ」を収集し、そして「収集する手段」を考える必要がある。また、これからはオープンデータに加えて医療システムからのデータも統合されてゆく、その先に様々なビジネスモデルが進出されると想像される。

 

 

医療オープンデータの活用

 

医療市場において最も差し迫っている問題は情報量の増大と情報活用の強化が不十分である事とであると言える。その事は他の産業と比べてみると非常に顕著な現象であると言える。ヘルスケア市場におけるITの展開はまだ十分とはいえる状況ではなく、今後も政策や経済成長の柱としての期待値を受けると言った様々な外的要因も後押しをして、更には地域連携や遠隔診療といった医療の質の改善に繋がる新たなヘルスケアサービスが生まれてそれに伴いデータ量の爆発な増加が進んでいるのは言うまでもない。

 

筆者はこれまでこの連載では地域包括ケアー時代の今、製薬企業のマーケティング部門やMR諸君は何をしなければいけないかを提言してきた。何かしなくてはしなくていけないが、何から始めるべきであろうか?何から手を付けるべきべきであるか?読者諸君も経営幹部からトップダウンで製薬企業は変わるべきである、変わらなければならないと言われ変革を求められるのに、自分の業務の環境はそれほど変わらない。

 

しかも地域全体の医療マーケットで何が起こっているか等簡単に知ることはできないと思っている読者も多いと思うが、実際には様々な地域医療データはインターネット経由で閲覧することが出来る。

 

例えば厚生労働省のページではDPC病院のデータを診療報酬調査専門組織(DPC評価分科会)の「DPC導入の影響評価に関する調査」で公開している。病院毎に在院日数の状況や他院よりの紹介状況を気軽に見ることができる、自分が担当している医療機関が現在どのような状況にあるのを理解してみる事でこれまで気づかなかった顧客の状況が解るのである。しかもこのような情報はインターネットを検索すれば手軽に入手することが出来る、これを利用しない手はない。

 

また疾患毎の各病院における患者数や手術件も見ることもこのデータから見る事が出来る。実際厚生労働省DPCは加工前の生データであるために少しだけエクセル技術が必要になるが既にWeb上無料で公開しているサービスのサイトもあるので活用してみるのも一つである、また最近では製薬企業向けに地域医療連携を支援するデータ活用のサービスを始めている企業も現れてきている、もし病院院長や事務長クラス向けの経営コンサルの内容をMR活動に生かすことが出来ると、医師との会話の幅が広がるのは間違いない。医師に対する効果的なコミュニケーションメッセージ内容を医療計画や地域医療という一段大きな視点でとらえるために、ここで紹介したオープンデータ活用は今後ますますニーズが広がると考えている。

 

 

政府の医療ビッグデータの活用の計画

 

現在政府では医療情報基盤の利用拡大のための計画している(図2)。その課題としては現状の課題として既存の次の4点①医療保健データベースの連結に関し、医療・健康分野の既存のデータベースについては、現在、十分な連結がなされていない。②生涯を通じた健康・疾病管理に関し、がん登録制度におけるコホート研究や、予防接種データ、検診データ、治療データ、介護関係データ等を一連のものとした、縦断的な蓄積・分析は現状では進んでいない。③臨床専門領域のデータベースの整備に関し、各専門領域で構築されるデータベース等について、十分な整備が進んでいない。④情報基盤の整備についての課題に関し、医療情報の収集・利活用の前提となる電子カルテの標準化がすすんでいないこと、匿名化した個人情報取得のための患者同意の取り方、セキュリティ面での課題がある。と分類したうえで既存、新規の保健医療データベースの拡充、連結と医療情報連携の基盤整備のスケジュール計画している。これを見てもわかる通りデータの連携、蓄積、分析、拡充と医療データの活用が中心となっている(図3)。

 

  

 

2020年までに日本の医療ICTの基盤が整理されてゆくこの過程で様々な地域で医療ICTを活用した実証実験が始まってくる、このことは製薬企業にとっても他人事ではない。昨年12月国内製薬企業を中心に16社と有識者から構成される「医療ビッグデータ・コンソーシアム」が「政策提言2015」のプレスリリースを行った。

 

政策提言は医療ビッグデータの利活用で「つなぐ」、「活かす」、「変える」の3つのパートから構成される、これまでは製薬企業から医療データの活用に関して政府に提言するような活動は殆ど行われてこなかったと記憶している。それほど製薬企業にとっても医療データを活用する、そこから新薬開発やマーケティングに対する新たなに知見を得て有効活用する事は企業の生き残りをかける重要なテーマであると認識されているのである。

 


マルチチャネル3.0研究所とは:(MC3.0研究所)
「地域医療における製薬会社の役割の定義と活動スタイルを定義することを目的にして、製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめとする医療関係者へのタッチポイント増大に向けたMRを中心とするマルチチャネル活用の検討と実践を行う研究機関」である。設立2015年4月主宰 佐藤正晃(一般社団法人医療産業イノベーション機構 主任研究員)

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