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財政審建議 薬剤一部自己負担「早急な対応が必要」 産業構造に課題認識「日本企業の競争力強化も」

公開日時 2023/05/30 04:51
財務省の財政制度等審議会(十倉雅和会長)は5月29日に取りまとめた建議で、「薬剤費の一定額までは自己負担」など保険給付範囲について、「早急な対応が必要」と提言した。革新的新薬の創出や後発品の安定供給が課題となる中で、建議では、医薬品の「産業構造」に言及した。内資系企業が革新的新薬を創出し、輸入超過から脱却し、「輸出によって稼げる」産業へと転換を促すため、「日本企業の競争力強化も重視していく必要がある」と盛り込んだ。後発品の安定供給の観点からは、「少量多品目生産」の解消も求めた。

◎薬剤費「先進国の中で極めて高い」 さらに拡大傾向「薬剤使用量や新規保険収載で」

建議では、医薬品をめぐる状況について、「我が国の医薬品費等対GDP比や一人当たり医薬品費等は先進国の中で極めて高い」と指摘した。既存薬価の改定率は例年マイナスとなっているが、「薬剤使用量の増加や新規医薬品の保険収載により、薬剤費総額は拡大傾向にある。さらに、今後の高齢化の進展に伴い、さらなる薬剤費の増加も見込まれる」と指摘した。

今後、高額医薬品の登場も見込まれるなか、建議では、「保険給付がいまのままでは保険料や国庫負担の増大が避けられない。基本的には、公的医療保険の役割は大きなリスクをシェアするということであり、それを前提に考えるべき」として対応の必要性を強調した。そのうえで、「諸外国の動向をみると、高額な医薬品について費用対効果を見て保険対象とするか判断する、医薬品の有用性が低いものは自己負担を増やす、あるいは、薬剤費の一定額までは自己負担とする方向性が考えられ、早急な対応が必要である」と提案した。

◎革新的新薬創出で輸入超過から”輸出で稼ぐ”産業に 内資系企業の「規模」も考慮して産業競争力強化

医薬品の項目では、「医薬品と産業構造等」と題し、産業構造に対する問題意識を示した。新薬創出に向けて、内資系企業の「企業規模」について課題認識を示した。ワクチンをはじめとして医薬品の開発には多額の費用と一定期間が必要になるため、国内市場だけでは採算を取ることは難しく、グローバル市場での競争力が求められる。

一方で、内資系企業の売上高はグローバル大手企業の売上高と比べて「多くの場合1ケタ以上の差がある状況となっている」として、内資系企業の規模の小ささを説明した。こうした影響もあり、医薬品のグローバル市場は、欧米企業の「寡占状態」にあり、輸入超過の状況が続いている。建議では、「グローバル市場における企業規模の問題を考え、日本企業の競争力強化も重視していく必要がある」と指摘。「グローバル市場への輸出によって稼げるよう、産業競争力を獲得することが求められる」とした。なお、骨太方針に向けた議論が進む中で、“創薬力強化”が一つの焦点となっている。

◎後発品安定供給で「少量多品目生産」解消も

後発品の安定供給をめぐっては、「少量多品目生産という産業構造上の課題が指摘されており、その解消が求められる」ことも明記した。

このほか、薬剤費総額と経済成長率との関係についても触れた。「当面、コロナの影響や物価上昇率の推移を見極める必要があるが、中長期的に薬剤費を持続可能、負担可能なものにしていくには、総額自体をわが国の経済規模の推移と整合的なものにしていくことについては一定の合理性がある」とした。新時代戦略研究所(INES)の薬剤費マクロ経済スライドを引き合いに、「関係者において建設的な議論が進展することを期待したい」としている。


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