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塩崎元厚労相らの研究会が提言 ゲノム情報二次利用推進へ「JHDSの迅速な構築を」 日本の後れに危機感

公開日時 2024/07/01 05:32
塩崎恭久元厚労相が会長を務めるゲノム医療推進研究会は6月28日、武見敬三厚労相に提言を手渡し、ゲノム情報の二次利用に向けて、日本版のグランドデザイン“JHDS”の迅速な構築を要請した。欧州では「EHDS」構想が実装段階に入っており、4億5000万人の健康医療データを二次利用し、創薬などにつなげる道筋がつけられている。研究会では、JHDS構築を「焦眉の急」として、検討を急ぐ必要性を強調。個人情報保護法の医療分野における特別法を含めた法整備を訴えた。塩崎会長は、「創薬力をつけるための研究開発を進めるには、情報基盤が整っていないといけない」と強調。改正次世代医療基盤法が見直される5年後まで検討が進まず、世界に立ち遅れることに懸念を示した。武見厚労相は「5年を待たずに対応する」と応じたという。塩崎会長は、「武見大臣の任期中に絶対やってほしい」と背中を押したことも明かした。

「世界との格差は広がるばかりで、ゲノム医療自体に加え、そのインフラとなるデジタル関連産業においても大きく遅れをとり、国力にすら影響を与えかねないのではないか」-。提言の背景には、日本が世界に後れることに対する強烈な危機感がある。

◎欧州 4億5000万人のデータ利活用、原則同意不要で可能に

ゲノム情報の二次利用をめぐり、欧州では今年4月に欧州議会で「EHDS(European Health Data Space)」規制案が承認されており、近く成立が見込まれる。一次・二次利用の基盤整備と利活用のルールを示した構想に基づいており、原則同意は不要で、匿名化・仮名化した4億5000万人の医療データの利活用に向けた環境整備が進んでいる。

◎JHDS構築が「焦眉の急」 医療分野における特別法”を含めた必要な法整備を

一方、日本では改正次世代医療基盤法を今年4月に施行した。しかし、すでに課題も顕在化している。提言では、収集するデータの少なさに加え、「個人情報符号に該当するゲノム情報・画像・音声等のデータについては、そもそも仮名加工すらできず、創薬やAI開発等に決定的な支障があるなど、研究者や企業のニーズに全く応えきれていない」と指摘する。

「EHDSのように国全体としては、さらには今後間違いなく進むであろう研究等における国際連携をも先取りしたグランドデザイン(日本版JHDS)を構築し、一次利用・二次利用が格段に進められ、その実現のための“医療分野における特別法”を含めた必要な法整備を早急に整えるよう、体系的な検討を進める」ことが「焦眉の急(きわめて事態が切迫していること)」と表現し、早期対応の必要性を強調した。一方で、厚労省の検討会では、二次利用推進に向けた法整備の必要性は指摘しているものの、改正次世代医療基盤法の施行状況などを踏まえた検討するとされており、見直し期限の5年後まで特別法の制定などは行わないとの懸念も高まっている。塩崎会長は、「日本は二次利用については、全く先が見えない状態になっている。重要なインフラが欠けている」と危機感を露わにし、早期の対応を求めた格好だ。

◎日本のデジタル競争力ランキングは32位に 3年連続下落に危機感も

欧州が新型コロナを契機にデータ基盤整備に取り組む中で、日本では3文書6情報のデータ標準化に議論がとどまっているとの認識を塩崎会長は表明。「3文書6情報は最低限の情報。新しい薬や治療法を開発できるはずがない」と指摘した。「EUが情報のマーケットとして4億5000万人について医療から始めると言っているのに、日本は全くそうなっていない。JHDSを作らないと何も前に進まない。掛け声だけではダメだ」として、実効性を求めた。

塩崎会長は自身が厚労相時代に、データ基盤の整備が進むエストニアは日本に比べて人口が少ないと説明されたことを振り返り、「今や4億5000万人のEUができて、1億2000万余りの日本できないのか。できないわけはない」と指摘。「できない理由を言うのが優秀な官僚だということになっているのではないか。駄目出しをすることが出世の道では、国民、患者のために新しいことをやって、少しでも前進しようということにならないのではないか」と述べ、元厚労相として現役官僚を叱咤激励した。

世界のデジタル競争力ランキング(IMD調べ)では日本は32位で、順位は3年間連続で下落している状況にある。「日本が“やります”と言っても、そんなに遅いことやっても我々はもっと先行きます、と世界は言っている」と危機感を露わにし、決断・対応に時間がないことも強調した。

◎第一三共・安中氏 時系列の情報連結で「世界で最高のゲノム基盤になる可能性ある」

日本製薬工業協会(製薬協)の立場からも参画する第一三共の安中良輔氏は、「創薬力強化の観点だけでなく、何よりも患者さんのためであると思っている。第一三共のみならず、業界あるいは全ての方が望んでる姿だと思う」とJHDS構想の検討の必要性を強調した。

創薬などにデータを活用するには、ゲノム情報と臨床情報などを連結することも必要になるが、「製薬企業の立場から重要なポイントは、やはり時系列の臨床情報をしっかり収集していただくこと」と話し、一時点の臨床情報だけでなく、臨床経過を含めた情報の必要性を強調した。実際、NDBデータではこうした時系列の情報は得られないとしたうえで、「残念ながらイギリスに遅れたが、臨床情報をしっかり収集すれば、まだ日本にも世界で最高のゲノム基盤になる可能性はあると大臣に申し上げた」と話した。情報入力の手間などがあることから、電子カルテや病院システム、検査会社などを直接ネットワークで結ぶなどの取組みの必要性も指摘。「武見大臣の非常に強いリーダーシップで進められている医療DXも横睨みして両輪で進めていただく必要がある」との見解を示した。

◎不当な差別防止へ「罰則含めた法整備の早期実現を」 「一刻たりとも時間的猶予はない」

提言では、医療情報の二次利用などに際し、「ゲノム情報による就業や保険契約などの不当な差別を防止するための罰則を含めた法整備を25年度中の事業実施組織発足までに早急に実現するべきであり、一刻たりとも時間的猶予はない」ことも指摘した。これにより、ゲノム情報を利活用に際し、国民が安心できる体制を整えることが必要とした。

◎事業実施組織「厚労省100%出資などの株式会社(特殊会社)とすべき」

全ゲノム解析の事業実施組織についても言及。英国では、Genomics Englandが10万ゲノム構想で大きな役割を果たした。日本でも25年度に事業実施組織が発足することとなっているが、いまだ具体的な事業計画が示されていない状況にある。提言では、国家の研究機関だけに閉じるのではなく、民間の力を含めたあらゆる資源を結集させる必要性を指摘。厚労省が司令塔となり、「厚労省100%出資などの株式会社(特殊会社)とすべき」と主張した。東京医科歯科大の宮野悟M&Dデータ科学センター長は、「実施組織が私には机上の空論のように見えて仕方がない」と現状の議論に懸念を表明し、実効性のある組織の必要性を強調した。

◎治療法未確立段階での「先進医療C(仮称)」の創設を提案

遺伝子パネル検査のあり方についても言及した。23年に承認、収載された「遺伝性網膜ジストロフィー(IRD)対象の特定の遺伝子パネル検査」でも、薬事承認済の治療法が確立している患者に活用が限られていると指摘。「保険外併用療養費制度の中で、治療方法が確立していなくとも、かかる全ゲノム解析検査だけを保険対象とする新たなカテゴリーとして、“先進医療C(仮称)”」の導入を提案した。

慶応義塾大臨床遺伝学センターの小崎健次郎教授は、「指定難病に含まれないような遺伝性疾患の患者さんもかなりいる。その方々について極めて有用な解析診断の方法があって、しかも痛みは伴わず、結果は2、3ヶ月で戻ってくる」と話し、保険診療を見据えて医療実装を進める必要性を強調した。検査の広がりに伴ってコストが低減する可能性にも触れた。

研究会は、武田薬品や第一三共、アステラス製薬、中外製薬など25社が参画。今回の提言が第3弾となる。

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