GSK・リレット社長「31年までに年平均成長率8%目指す」 オムジャラ錠などオンコロジー注力で成長牽引
公開日時 2024/10/21 04:51
グラクソ・スミスクライン(GSK)のポール・リレット代表取締役社長は10月18日のメディアセミナーで、「日本のアンメットメディカルニーズに応え、2031年までに年平均成長率8%を目指す」と表明した。ワクチン・感染症、呼吸器・免疫に加えて、新たにオンコロジー領域を柱に据える考え。「日本でのビジネスの観点からオンコロジー領域に注力する」と強調した。
リレット社長はオンコロジー領域の中でも、抗体薬物療法やがん免疫療法などの治療法の開発を進めている。疾患領域としては、血液がんや婦人科領域を重点分野に据え、研究開発に注力する方針を示した。同社にとってオンコロジー領域の最初の製品となる骨髄線維症治療薬・オムジャラ錠(一般名:モメロチニブ塩酸塩水和物)を今年8月に販売を開始。同領域におけるJAK阻害薬として10年ぶりの新薬となるため、今後の同剤の市場浸透に強い期待感を示した。また、9月には再発・難治性多発性骨髄腫治療薬・ベランタマブ マホドチンの承認申請を行った。抗PD-1抗体のDostarlimabや抗TIGIT抗体のBelrestotugなどの開発を進める。
リレット社長は、「来年以降も新たなニュースがある。オンコロジーに注力し、日本社会に変化をもたらしていきたい」と強い意欲を示した。また、向井陽美取締役メディカル本部長は、「グローバルに遅れることなく、同時申請、同時承認を目指して取り組んでいく」と意気込んだ。
◎骨髄線維症治療薬・オムジャラ錠 近畿大医学部・松村主任教授「貧血の改善」に期待
同日のセミナーでは、近畿大医学部血液・膠原病内科の松村到主任教授が骨髄線維症治療薬・オムジャラ錠(モメロチニブ塩酸塩水和物)の第3相臨床試験「SIMPLIFY-1」の結果を報告した。SIMPLIFY-1試験は、JAK阻害薬未治療でIPSSリスク分類が「中間-1」、「中間-2」の高リスク患者(血小板数が5万超の症例)を対象に、モメロチニブ投与群(200 mg 1日1回)とルキソリチニブ投与群(20 mg1日2回)を24週投与する二重盲検比較試験。主要評価項目は24週時点での脾臓容積の減少率≥35%。主要副次評価項目は、24週時点の赤血球輸血非依存率、赤血球輸血依存率、赤血球輸血のRateとした。
その結果、主要評価項目である投与後24週の脾臓容積の縮小は、ルキソリチニブ(n=217)の29.0%に対し、モメロチニブ(n=215)は26.5%となり、非劣勢を証明した。一方、症状の改善はルキソリチニブの42.2%に対し、モメロチニブは28.4%だった。さらに輸血の必要性については、輸血非依存率が24週時点でモメロチニブの66.5%に対し、ルキソリチニブは49.3%となり、松村教授は、「モメロチニブの方が若干勝っていた」と強調した。
さらに観察期間中におけるヘモグロビン値と血小板数の平均値の推移をみると、モメロチニブ投与患者の貧血が改善しており、特に重篤な治療関連有害事象(グレード3/4)でみると、貧血はモメロチニブの6.1%に対し、ルキソリチニブは22.7%。すべての治療関連有害事象のうち血小板減少については、モメロチニブの18.7%に対し、ルキソリチニブは29.2%となっていた。
松村主任教授は、「オムジャラ(モメロチニブ)は炎症性サイトカインを減少させ、症状の改善がみられるほか、髄外造血の抑制で脾腫の容積を縮小させた。さらに、ヘプシジンの発現低下により血中の鉄濃度を回復させ、貧血の改善がみられた」と報告。「これら3つの効果があるということで、これまでのJAK阻害薬にない新しい効果を持った薬剤が10年ぶりに登場した。我々専門医も大いに期待している」と述べた。