科研製薬・堀内社長 25年3月期「研究開発や海外展開で大きな進展のあった1年」 戦略的投資で成果も
公開日時 2025/05/14 04:50

科研製薬の堀内裕之代表取締役社長は5月13日の25年3月期決算説明会で、「研究開発や海外展開で大きな進展のあった1年だった」と当期業績を振り返った。特に研究開発面での製品導出は、「NM26」の知的財産譲渡および販売提携オプション契約に加えて、STAT6阻害剤に関するライセンス契約の締結でマイルストンを受領する権利を取得したと説明。堀内社長は、「グローバルな製薬企業から高く評価され、創薬力の強さを世界に示すことができた」と強調。製品導入も、「戦略的な投資の一環として、新たな製品の導入にも積極的に取り組むことができ、これにより、パイプラインの拡充も着実に進んできた」と強調した。
同社の25年3月期決算は売上高940億3500万円(前年度比30.5%増)。うち医薬品・医療機器‘(国内・海外)の売上高が前年度比31.5%増の915億5300万円となった。増収要因としては、「NM26」の知的財産譲渡に係る契約一時金および、「STAT6プログラム」のライセンス許諾に係る契約一時金等の受領に伴い海外売上の増収が大きく寄与。このほか競合品の終売に伴う関節注射機能改善剤「アルツ」等の売上が伸長し、国内売上も増収した。
一方、国内医療用医薬品については、クレナフィンが数量で伸長したものの、薬価改定の影響を受けて前年度比1.5%減の168億6600万円。セプラフィルムは競合品との競争がある中で、癒着防止材未使用症例の獲得などで前期並みの69億5200万円となった。エクロックは多汗症の疾患啓発活動を通じて患者や医師の理解を深めた結果、市場が拡大し、12.4%増の20億3700万円の増収、ジェネリック医薬品についても、「昨年の選定療養の導入による追い風もあり、また整形外科や皮膚科など注力領域のジェネリック品が堅調に推移した」(堀内社長)と述べ、前年同期比6.3%増の84億9700万円と増収を確保することができた。
◎米アーディ社の完全子会社化「グローバル展開を本格させる上で大きな一歩となる」
堀内社長は当期業績のトピックスの一つとして、米国Aadi Subsidiary, Inc.社(アーディ社)の買収による子会社化に触れ、「この買収は、グローバル展開を本格させる上で大きな一歩となる」と表明。その上で、「アーディ社は希少疾患領域における販売基盤と豊富なノウハウを有しており、現在開発を進めているKP-001の米国市場への展開に大きく貢献することを期待している」と述べた。なお、KP-001は同社が米国自販第1号を目指す自社創薬品で、難治性脈管奇形を予定適応症とする経口剤。第3相臨床試験を実施しており、同社は2026年中の承認取得を目指している。また、米国FDAと第3相臨床試験の実施に向けて相談中。
◎26年3月期連結予想 前年度契約一時金収入の反動とクレナフィン特許満了で減収予測
26年3月期損益計画(連結)について堀内社長は、「完全子会社アーディ社のFYARROの売上連結とマイルストン収入を想定している」と述べながらも、前年度契約一時金収入の反動とクレナフィンの特許期間満了の影響で、前期比93.6%の880億円で減収になると予想した。堀内社長はクレナフィンについて、「潜在的な患者さんはまだ多く存在しており、疾患啓発活動を中心に行うことで、より多くの患者さんを助ける取り組みを引き続き進めたい」と述べた。
【連結業績 (前年同期比)通期予想(前期比)】
売上高 940億3500万円(30.5増)880億円(△6.4%増)
営業利益 210億3400万円(121.1%増)52億円(△75.3%増)
親会社株主帰属純利益 139億4500万円(73.8%増)34億円(△75.6%増)
【国内主要製品売上高(前年同期実績)通期予想、億円】
クレナフィン 169(171)132
アルツ 190(180)185
セプラフィルム 70(70)70
フィブラスト 24(26)23
エクロック 20(18)24
リグロス 9(9)10
ヘルニコア 4(4)4
後発医薬品計 85(80)89