薬機法等改正法案 参院厚労委で賛成多数で可決 15項目の附帯決議採択 14日にも成立へ
公開日時 2025/05/14 04:47
参院厚労委は5月13日、薬機法等改正法案を与野党の賛成多数で可決した。自民、公明、立民、維新、国民の各党が賛成。れいわ、共産が反対した。採決の後に、15項目の附帯決議を採択した。附帯決議は、自民、立民、維新、国民、公明の五派共同提案によるもの。質疑で焦点となった条件付き承認制度については、「承認後に行う検証的臨床試験の内容および臨床試験成績に関する資料を提出する期限等を可能な限り具体的に定め、正当な理由なく期限内に検証的臨床試験によって有効性および安全性が確認できなかった場合には承認取り消し権限を適切に行使すること」などが盛り込まれた。薬機法等改正法案は14日にも参院本会議で成立する見通し。
この日の討論でも、共産党の倉林明子議員が「本法案に反対する第一の理由は、医薬品の承認制度を見直し、条件付き承認制度の適用拡大を行うとともに、薬事承認に臨床試験成績を求める規定を削除すること」と指摘。「外国企業の参入障壁解消のための規制緩和となり、患者の利益に反するものと言わざるを得ない」と述べるなど、条件付き承認制度をめぐる意見が出た。
このため、附帯決議では、「条件付き承認制度によって承認された医薬品等については、市販後の安全対策を強化することが必要であり、承認にあたっては強化する市販後安全対策の内容を具体的に定めること」、「検証的臨床試験等を経ていないことや、承認条件を分かりやすく明記するとともに、医療現場や患者に十分な情報提供を行うこと」などが盛り込まれた。
このほか、製造販売業者の役員変更命令をめぐり、「事業者の経営権にも十分に配慮し、事業者が自律的に役員体制の見直しを行えるようにあらかじめ必要な指導を徹底すること」なども盛り込まれている。
【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議】
政府は、本法の施行にあたり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一:製造販売業者等の薬事に関する業務に責任を有する役員の変更命令を発出するにあたっては、事業者の経営権にも十分に配慮し、事業者が自律的に役員体制の見直しを行えるようにあらかじめ必要な指導を徹底すること。また、役員の変更命令を発出する場合の判断の考え方や、手順をあらかじめ公表すること。
二:後発医薬品製造基盤整備基金による支援をはじめとした本法に規定する医薬品の安定供給のための措置の実施状況を踏まえ、医薬品の供給不足が解消されない場合は、後発医薬品の産業構造や薬価の見直しを含め、医薬品の安定供給のための措置を検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。
三:条件付き承認にあたっては、承認後に行う検証的臨床試験の内容および臨床試験成績に関する資料を提出する期限等を可能な限り具体的に定め、正当な理由なく期限内に検証的臨床試験によって有効性および安全性が確認できなかった場合には承認取り消し権限を適切に行使すること。
四:条件付き承認制度によって承認された医薬品等については、市販後の安全対策を強化することが必要であり、承認にあたっては強化する市販後安全対策の内容を具体的に定めること。新型コロナワクチンの安全対策においては、収集した副反応情報の因果関係評価について、α因果関係が否定できないもの、βデータ因果関係が認められないもの、γ因果関係が評価できないもの、の3カテゴリーに分ける基準が採用されていることや、医薬品等に、によっては、収集された副作用等の情報の99%以上が因果関係が評価できないとされている現状を改めるため、評価基準を見直すこと。また、安全対策には、医薬品副作用被害救済制度における情報も生かすこと
五:条件付き承認制度によって承認された医薬品等については、同制度の下で承認された医薬品等であり、検証的臨床試験等を経ていないことや、承認条件を分かりやすく明記するとともに、医療現場や患者に十分な情報提供を行うこと
六:医薬品等の有効性および安全性の評価において、最も信頼性の高い方法は比較臨床試験であること。薬事承認申請に際して添付する資料を定めた一般規定である本改正後の医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第3項等の品質、有効性及び安全性に関する資料として厚生労働省令で定める資料は、原則として臨床試験の試験成績に関する資料であることに変わりがないことを改めて確認すること。
七:リアルワールドデータは臨床試験に完全に変わるものではなく、薬事承認におけるリアルワールドデータの利活用には、適合性および品質が適切なレベルで担保されたデータベースの構築とリアルワールドデータの利点と限界を十分に踏まえた基準の確立等が必要であり、引き続きリアルワールドデータの利活用のための適切な基盤の構築に努めていくとともに、リアルワールドデータのみに基づく薬事承認は慎重に検討すること
八:医薬品の製造販売業者に対し、小児用医薬品の開発計画の策定を努力義務として課すにあたっては、欧米において開発が免除または猶予されるケースがあることを踏まえ、当該規定が実効性を欠いたものとならないよう、適切な運用を図ること
九:革新的医薬品等実用化支援基金について、創薬環境の整備に資する事業に対して、適切な支援が透明性をもって行われるよう、対象事業に関する基準の策定、対象事業の認定及び認定取り消し等を適正に行うとともに、基金の執行状況について定期的に公表すること。また、ドラッグ・ラグおよびドラッグ・ロスの解消に向けた取り組みを進めるにあたっては、将来にわたってこうした問題が拡大しないよう、国内における医薬品開発が速やかに行われるための適切な措置を講ずること
十:処方箋なしでの医療用医薬品の販売について、いわゆる零売規制の具体的な運用を定める厚生労働省令やガイドライン等の作成にあたっては、処方箋医薬品以外の医療用医薬品の積極的なOTC化推進および薬剤師との相談を通じて、患者が主体的に医薬品を選択、購入するセルフメディケーション推進の政策方針に逆行することがないよう留意し、処方箋の交付を受けたもの以外のものに対して、医療用医薬品の販売が認められるやむを得ない場合の範囲、運用については、国民の医薬品へのアクセスを阻害しないよう十分に配慮すること。当該運用については、本改正以前より零売を行ってきた薬局等が、国民の医薬品へのアクセスに一定の役割を果たしていることも考慮し、過度な指導や規制により営業継続が困難となることのないよう、必要最小限かつ合理的な規制措置にとどめること
十一:指定乱用防止医薬品の販売規制の具体的な運用を定める厚生労働省令やガイドライン等の策定にあたっては、国民による医薬品の適切な使用を推進する観点から、指定乱用防止医薬品の範囲、販売方法、情報提供のあり方等について、科学的根拠に基づき検討を行うこと。特に若年層における乱用実態や地域、時間帯、使用者によっては、医薬品へのアクセスが容易ではないことを踏まえつつ、医薬品へのアクセスを不当に制限することがないよう、多様な販売形態を考慮し、乱用防止と利便性のバランスに配慮した規制とすること。当該販売規制については、本改正以前より医薬品販売を行ってきた薬局等が、国民のセルフメディケーションにおいて一定の役割を果たしていることも考慮し、過度な販売規制により営業継続が困難となることのないよう、必要最小限かつ合理的な規制措置にとどめること
十二:市販薬の乱用の背景には、生きづらさや孤独、孤立等の社会的不安があると指摘されていることから、その対策を進めるにあたっては、販売規制のみならず、医療、福祉、教育などの分野において関係府省間で対策を進めること
十三:地域における薬局の役割機能をさらに整理、明確化し、国民に分かりやすいものとするとともに、地域に必要な役割機能を持つ薬局に対し、適切に診療報酬上の評価を行うこと
十四:国連女子差別撤廃委員会の勧告を尊重し、緊急避妊薬の全国の薬局での恒久的な販売について、免前服用をはじめ、年齢制限、親の同意、価格などのセクシュアルリプロダクティブヘルスライツ、性と生殖に関する自己決定権に関する諸課題の解決に向けた検討を行うこと。また、検討にあたっては、これまでヒアリングやパブリックコメントでしか意見を聞いてこなかった当事者、とりわけ若い世代の意見を代表するものを検討の場に参画せしめ、具体的運用の決定過程に関与させること
十五:特定要指導医薬品に関する薬剤師による服薬指導および情報提供について研修、受講などの条件が必要な場合には、それを満たすよう、すべての薬剤師が受講できる機会を提供すること