【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

都医・尾﨑会長 近未来に迫る“東京医療崩壊”危機「自ら考え医療を共に支えて」 国民意識醸成に力

公開日時 2025/06/11 05:30
東京都医師会の尾﨑治夫会長は6月10日の定例会見で、近未来に迫る“東京医療崩壊”の危機として医療課題に焦点を当て、課題解決に向けて「都民の皆さん、自分で色々考えてもらい、我々と一緒に医療を支えてくれませんか」と呼びかけた。少子超高齢社会のなかで、医療財源や医師不足などの課題が目前に迫っているとして、禁煙や救急車の適切な活用など、一人ひとりができる対策の実行を訴えた。対策の一策としてスイッチOTCの活用も掲げた。適正化された医療費について初・再診料や入院基本料などの基本料引上げに活用することで、「本当に必要な人をきちんと診ればやっていけるような診療の体制ができるのではないか」と強調した。東京都医師会は作成した冊子と動画を通じ、都民に啓発を進める考え。

◎少子高齢化で「医療財源の支え手が減ってしまっているということを理解していただきたい」

「東京の医療崩壊は目の前に迫っています。それを防ぐためには皆さんの協力が必要です」-。東京都医師会が作成した絵本形式の冊子「東京医療崩壊?!~あなたと愛する家族のためにできること」は、こう始まっている。

少子超高齢社会のなかで、高齢者の医療費財源を若年者が支えている仕組みとなっていると指摘。尾﨑会長は、「実際に若い方が高齢者を支えているという医療の仕組みについても理解されていない。このままいくと、財源の問題もある。消費税を含めた税金で社会保障にどう対応できるか、不透明だ。保険料で対応するなら保険料を上げないと高齢者の医療が持たない」と指摘。「支え手が減ってしまっているということを若い方も含めて東京に住んでいる方に理解していただきたい」と述べた。

地域医療を支える医師不足や厳しさを増す医療機関経営にも言及した。物価高が続くなかで、他産業並みの賃上げができていない現状にも触れた。24年度診療報酬改定でベースアップ評価料が新設されたものの、「毎年の診療報酬改定はない。来年度まで上げることはできない」と指摘。人件費や医療機器の購入費、薬剤費などもかさみ、病院経営は8割が赤字に陥っているとした。

◎OTC活用で「浮いた医療費で基本料引上げを」 必要な人に医療を提供する診療体制に

これらの課題解決に向け、都民一人ひとりが実行できる7つの対策も示した。課題の一つには、「軽症な場合は薬局のスイッチOTC薬の活用も」をあげた。尾﨑会長は、「“OTC類似薬全てを保険から外して”という維新の会のような発想は全く持っていない」と断ったうえで、風邪を例に出して、「学校、会社を休むことが大事だ。休まないと感染源になってしまう」と指摘。「休むという習慣も付けた方がいいと思うが、2日、3日たって普通の風邪と違うという時は少し様子を見て、のどやせきが出るのであれば最初のうちは風邪薬で様子を見る方がいいのではないかというくらいはやったほうがいいのではないか」と述べた。

日本OTC医薬品協会やメーカーとも対話を深めるなかで、国民自らが考えて薬局薬剤師に相談してOTCを活用するということを強制的に仕組みにするのは「彼らも急速に進めるのは時期尚早であると思っている。それは私も確認した」、「あらゆるOTC類似薬を保険から外してみたいな話は、OTC協会なども全然望んでない」と説明。「(国民に)ヘルスリテラシーをもっと身につけてもらい、現場で説明する薬剤師さんもきちんと対応できる状態を作った上で、まずは風邪薬など段階的に少しずつ進める」必要性を強調した。

尾﨑会長は、「診療報酬のなかで、風邪などの病気を何人も診ないと成り立たないというように医療機関が追い詰められているのも事実」との見方を表明。湿布薬を引き合いに「命に関わらない部分をOTCに徐々に移行する。総医療費が変わらないとすれば、その浮いた部分を初診料や再診料、病院の入院基本料などの基本料を引き上げる。そうすれば、本当に必要な人をきちんと診ればやっていけるような診療の体制ができるのではないかと思っている」と主張した。基本料が引き上げられていないことを強調し、「(OTCの活用により浮いた財源を)基本料を上げる方向にもっていく。医療費どんどん削って、医療機関には何もいいことは起きないというようなことは全然ダメだ」と強調した。

◎少子高齢化で国民皆保険の維持が難しくなる可能性も

啓発に向けた冊子や動画の作成に至った背景について尾﨑会長は、「いつでもどこにでもかかれるという国民皆保険制度は素晴らしいという想いで運営されてきた。支える側が減って高齢者が増える中で、医療が変わらざるを得ない。財源の確保は今でもなかなか難しい状態だ」、「国民皆保険の維持がなかなか難しくなってくる可能性がある」と指摘。こうしたなかで、「救急車の利用を含めて、都民一人ひとりが自分たちの医療を守るためにどうしたらいいか、考えていただきたい」と呼びかけた。早期に医療にアクセスすることで、医療費も適正化され、早く治癒すると指摘した。

尾﨑会長は、「近未来の東京に医療はあるか。今回はすぐ手にとってみられるものにということで絵本形式のものを作った。動画もということで多くの方に見ていただきたい。東京に住んでいる皆さんが色々考えてできることをやっていただくことが東京の医療を守ることにつながる」と訴えた。

冊子では東京都の直面する課題として、①少子・超高齢社会という問題、②高齢者の医療費財源は支援金頼み?!、③東京でも医師が足りない地域が増加?!、④コロナ禍を教訓に医療提供体制の見直しが必要!-。対策として、①禁煙を促進して健康リスクを回避、②多剤服用は避けて適正な使用を!、③かかりつけ医をもとう!フリーアクセスは適正に、④救急車はあなただけのものではない!、⑤軽症な場合は薬局のスイッチOTC薬の活用も、⑥未病対策・フレイル予防で健康寿命を延ばす!、⑦正しい情報を理解してヘルスリテラシーを高めよう!-。

なお、冊子とともに作成された動画は、東京都医師会の特設サイト(https://www.tokyo.med.or.jp/tmairyokaigi-r6)に掲載されている。


プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(6)

1 2 3 4 5
悪い   良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
【MixOnline】関連(推奨)記事
ボタン追加
【MixOnline】記事ログ
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー