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小野薬品 がん担当MR増員 消化器がんやNSCLC適応でオプジーボ再成長へ プライマリー担当は減員

公開日時 2025/10/31 04:50
小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは10月30日の2025年度第2四半期決算説明会で、がん免疫療法薬・オプジーボの国内売上予想を期初計画の1250億円から1200億円に下方修正したことを報告した。背景には胃がんの1次治療における競争激化などがある。同社は10月の組織改編で、プライマリー担当MRの一部をがん担当MRに異動させて増員し、胃がんを含む消化器がんや非小細胞肺がん(NSCLC)の活動を強化してオプジーボの再成長を目指す考えだ。プライマリー担当MRの減員は、オプジーボの強化に加え、今後相次ぐ糖尿病領域製品の特許切れも理由の一つになっている。なお、10月以降の各担当MRの人員数は非開示。

主力品オプジーボの国内売上は、共連れ市場拡大再算定や競争激化により、24年度は前年度比17.3%減の1203億円と厳しい状況となった。25年度は期初に3.9%増収の計画を立て、再び成長軌道にのせる方針だった。しかし、25年度上期の国内売上は前年同期比6.5%減の585億円となり、通期予想の下方修正を余儀なくされた。25年度は前年度並みの売上を目指すことになった。

◎胃がん1次治療 ビロイやキイトルーダとの競争激しく

同社の北田浩一営業本部長は、オプジーボの25年度上期の動向について、「特に胃がん1次治療の領域で、当初の想定よりも他剤の浸食を受けた」と述べた。胃がん領域でオプジーボと競合しているのはアステラス製薬のビロイとMSDのキイトルーダで、特に胃がんの4割を占めるとされるClaudin18.2陽性胃がんの適応を持つビロイの影響が大きい。小野薬品は、Claudin18.2陽性の患者群にも、PD-L1陽性(CPS10以上)の患者も混在していることに着目し、患者の背景に応じた使い分けやオプジーボの高い奏効率を訴求していく方針だ。

北田氏は、オプジーボの25年度下期以降の成長戦略について、「胃がん1次治療については競合の浸食を最小限に食い止めるとともに、特に非小細胞肺がん1次治療に注力する」と強調した。さらに、6月に適応追加された肝細胞がん1次治療、8月に追加されたMSI-H大腸がん1次治療を速やかに立ち上げ、「オプジーボの成長基盤を構築する」との考えを示した。

同社広報部は、胃がん領域の活動強化に加え、肝細胞がんや大腸がんの適応追加も相次いだため、10月に消化器がんに係る人員配置を拡充したと説明している。

◎新規処方シェア目標 肝細胞がん1次治療は26年12月に30% MSI-H大腸がん1次治療は27年2月に60%

肝細胞がん1次治療に対しては、オプジーボとヤーボイの併用療法が6月24日に承認された。同社は承認取得から1年半後の26年12月までに新規処方シェア30%の獲得を目指す。この目標達成のため、承認の根拠となったCheckMate-9DW試験の結果などを訴求していく。

MSI-H大腸がん1次治療についても、両剤の併用で8月25日に承認された。こちらは、1年半後の27年2月までに新規処方シェア60%を目指す。化学療法と比較して病勢進行又は死亡のリスクを79%減少させることなどを示したCheckMate-8HW試験の結果を中心に訴求する。

このほか、消化器がん領域では食道がん1次治療の適応も持つ。オプジーボは化学療法との併用、およびヤーボイとの併用の2つのレジメンを持ち、患者ごとに処方提案できるのが強み。新規処方シェアは既に50%を超えており、26年3月に60%を目指す。

◎NSCLC1次治療 PD-L1陰性症例に特化

非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療では、新規処方シェアが緩やかに回復し、25年7月に20%に達した。26年3月には30%を目標に掲げる。

このシェア回復の一因は、これまでのCheckmate-227試験(オプジーボ+ヤーボイ併用、患者群:PD-L1陰性)に加え、6月にCheckmate-9LA試験(オプジーボ+ヤーボイ+化学療法併用、患者群:PD-L1陰性)の6年フォローアップデータが学術誌「ESMO Open」に掲載されたことだ。9LA試験の解析では、他の治療選択肢で予後不良なPD-L1陰性の患者群で、オプジーボ+ヤーボイ+化学療法の併用療法は全体集団で6年生存率が20%という結果が得られた。5年生存できた患者の大部分が6年時点でも生存していることが示された。

北田氏は、「PD-L1陰性患者のガイドラインで推奨されている他の治療選択肢で得られる5年生存率は10%を下回っている」と紹介。今回の9LA試験によって「長期生存を目指す上で、改めてオプジーボ+ヤーボイ+化学療法の併用療法の必要性が示された」との見解を示し、「25年度は、確かなエビデンスを持つ『PD-L1陰性』の活動に特化する」と述べた。オプジーボのNSCLC1次治療は、PD-L1陰性患者に焦点をあてた活動を推進していく考えだ。

オプジーボのNSCLCの適応をめぐっては、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が未治療進行・再発NSCLCを対象としたオプジーボ+ヤーボイ+化学療法の併用に係る第3相試験(特定臨床研究)で、治療との因果関係が否定できない死亡が想定を超えて認められたとして、JCOGは23年3月30日に試験を中止した。

JCOGの注意喚起もあってオプジーボのNSCLC1次治療に対する新規処方は大きく減少したが、その後の幅広い安全性の情報提供活動とエビデンスの蓄積により、新規処方シェアは徐々に回復している。

◎フォシーガ 25年度上期売上11.6%増の488億円 通期は後発品参入で10%減収予想

オプジーボと並ぶ主力品のフォシーガは、25年度上期に売上が前年同期比11.6%増の488億円となり、引き続き好調を維持した。慢性腎臓病(CKD)や慢性心不全での使用が拡大した。ただ、12月に2型糖尿病の適応で後発品が追補収載され、同月以降は後発品の参入による影響を受ける見込みだ。25年度通期計画も前年度比10%減の800億円と予想している。

また、2型糖尿病治療薬・グラクティブにも26年度中に後発品が参入する見通しで、小野薬品では糖尿病領域製品の特許切れが相次ぐ状況にある。同社はがん領域の強化を進めていることもあり、プライマリー担当MRの一部をがん担当に異動させた。

◎25年度上期 連結業績は増収増益 米デサイフェラが貢献

25年度上期の連結業績は、売上収益は前年同期比7.0%増の2571億円、コア営業利益は7.2%増の701億円、営業利益は6.7%増の521億円となり、増収増益を達成した。日本国内の売上収益はオプジーボの減収などが影響し1.3%減の1488億円だったものの、24年6月に買収した米デサイフェラ社の売上が大きく寄与し、国内のマイナスを補った。

◎キンロック、ロンビムザ 25年度通期予想を上方修正

デサイフェラの売上や損益は、24年度上期は3カ月分、今期は6カ月分が計上されたことに加え、同社の買収で獲得した製品の売上が想定以上に伸びた。これらの製品は、消化管間質腫瘍(GIST)に対するKIT阻害薬・キンロックと、腱滑膜巨細胞腫(TGCT)に対するCSF-1受容体阻害薬・ロンビムザとなる。

キンロックの25年度上期売上は181億円、ロンビムザは28億円だった。上期の想定以上の好調を受け、通期予想を上方修正し、キンロックは期初計画から20億円増の360億円、ロンビムザは同30億円増の80億円と見込んでいる。

営業利益は、デサイフェラ関連の費用が3カ月分多く計上されたが、好調な製品売上などで費用増加分を上回り、増益となった。

◎滝野社長 ロンビムザのピーク時売上600億円超に自信 「ポジティブな材料がいくつも芽吹き始めた」

滝野社長はロンビムザについて、「米国で極めて順調に市場浸透している」との認識を示した上で、「ピーク時に500億円、600億円、あるいはそれ以上を十分に実現可能と見込んでいる。実際に市場の手応えも十分に感じている」と強調した。ロンビムザの欧州展開や抗てんかん薬セノバメート(ONO-2017)の国内申請などに触れながら、「決算以外でもポジティブな材料がいくつも芽吹き始めた状況で、今後の楽しみが増えてきた」と述べた。

【連結業績 (前年同期比) 25年度予想(前年同期比)】
売上高2571億3600万円(7.0%増) 4900億円(0.6%増)
営業利益520億6900万円(6.7%増) 850億円(42.3%増)
親会社帰属純利益400億8900万円(7.1%増) 670億円(33.9%増)

【国内主要製品売上高(前年同期実績) 25年度予想、億円】
オプジーボ 585(626) 1200←修正前1250 
フォシーガ 488(437) 800
オレンシア 138(135) 280
グラクティブ 69(96) 120
ベレキシブル 60(52) 110 
オンジェンティス 45(38) 90
パーサヒブ 45(42) 90
カイプロリス 40(46) 90
*仕切価ベース

ロイヤルティ・その他 822(770) 1600
*BMSからオプジーボに係るロイヤルティ収入が25年度上期594億円(24年度上期564 億円)――、メルクからキイトルーダに係るロイヤルティ収入が同138億円(128億円)――がそれぞれ含まれる。
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