報告品目・新キット製品14成分22品目を官報告示 12日収載 初のアイリーアBS、アクテムラBSなど
公開日時 2025/11/11 04:51
厚生労働省は11月11日、報告品目・新キット製品14成分22品目の薬価収載を官報告示した。薬価収載は12日の予定。この中には、国内初のバイオシミラー(BS)となる富士製薬のアイリーアBSやセルトリオン・ヘルスケア・ジャパンのアクテムラBSがある。セルトリオンは9月にアクテムラBSで5規格の承認を取得したが、今回収載されるのは点滴静注製剤の3規格(80mg、200mg、400mg)のみで、シリンジ製剤とオートインジェクター製剤は収載されない。
◎高含量のビロイ300mg製剤 100mg製剤の費用対効果評価に基づく薬価下げを反映した価格に
アステラス製薬のCLDN18.2陽性胃がん治療薬・ビロイで、高含量製剤となる300mg製剤が収載される。発売中の100mg製剤は2026年2月1日付で費用対効果評価に基づき薬価を4.3%引き下げることが決まっている。厚労省は、今回収載される300mg製剤の薬価は、100mg製剤の費用対効果評価に基づく薬価引下げを反映した価格で算定されたと説明している。
◎コセルゴ顆粒、ヒフデュラ皮下注シリンジに補正加算
薬価算定にあたり2製品で補正加算が付いた。アレクシオンファーマの神経線維腫症1型における叢状神経線維腫治療薬・コセルゴの顆粒剤が今回収載される。発売中のカプセル剤は3歳以上を対象としているが、顆粒剤は1歳以上に適応が広がることから小児加算(A=5%)が付いた。また、迅速導入加算(A=5%)も付いた。
今回収載されるアルジェニクスジャパンのヒフデュラ配合皮下注のシリンジ製剤は、発売中のバイアル製剤にはない、希少疾病用医薬品に指定されていた効能・効果である「慢性炎症性脱髄性多発根神経炎」を加えて収載希望したため、市場性加算(I)(A=10%)の加算が付いた。
11月12日付で収載される報告品目・新キット製品は以下の通り(カッコ内は一般名、製造販売元)。薬効分類及び投与経路順に掲載。
▽オータイロカプセル160mg(レポトレクチニブ、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)
薬効分類:内429(その他の腫瘍用薬)
効能・効果:ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
薬価:160mg1カプセル 1万2477.10円
補正加算等:なし
現在40mg製剤があり、今回160mg製剤を追加する。用法・用量は「通常、成人にはレポトレクチニブとして1回160mgを1日114日間経口投与する。その後、1回160mgを1日2回経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する」となっており、利便性の向上が期待される。
▽コセルゴ顆粒5mg、同7.5mg(セルメチニブ硫酸塩、アレクシオンファーマ)
薬効分類:内429(その他の腫瘍用薬)
効能・効果:神経線維腫症1型における叢状神経線維腫
薬価:5mg1個 8113.90円
7.5mg1個 1万1975.90円
補正加算等:小児加算(A=5%)、迅速導入加算(A=5%)
現在10mgカプセル、25mgカプセルがある。カプセル剤は低年齢の小児に服用しづらい上、神経線維腫症1型における叢状神経線維腫は3歳未満の乳幼児でも発症することから、服用しやすく、また1歳以上を適応とする顆粒剤が開発された。
厚労省は、「(カプセル剤は)3歳以上での使用になっているが、顆粒剤は1歳からに適応が広がったことから小児加算で評価された」と説明している。
▽レットヴィモ錠40mg、同80mg(セルペルカチニブ、日本イーライリリー)
薬効分類:内429(その他の腫瘍用薬)
効能・効果:RET融合遺伝子陽性の進行・再発の固形腫瘍、RET遺伝子変異陽性の根治切除不能な甲状腺髄様がん
薬価:40mg1錠 4066.20円
80mg1錠 7717.40円
補正加算等:なし
販売中のカプセル剤に今回、錠剤が追加される。
▽スピンラザ髄注28mg、同50mg(ヌシネルセンナトリウム、バイオジェン・ジャパン)
薬効分類:注119(その他の中枢神経系用薬)
効能・効果:脊髄性筋萎縮症
薬価:28mg5mL1瓶 966万1483円
50mg5mL1瓶 977万8481円
補正加算等:なし
現在の12mg製剤に今回、高用量の剤形(28mgと50mg製剤)と用量が追加された。追加する用法・用量は、「通常、ヌシネルセンとして、初回及び初回投与2週間後に50mgを投与し、以降4カ月の間隔で28mgの投与を行うこととし、いずれの場合も1~3分かけて髄腔内投与すること」。
▽アフリベルセプトBS硝子体内注射液40mg/mL「NIT」、同注射用キット40mg/mL「NIT」(アフリベルセプト(遺伝子組換え)[アフリベルセプト後続2]、富士製薬)
薬効分類:注131(眼科用剤)
効能・効果:中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、病的近視における脈絡膜新生血管
薬価:2mg0.05mL1瓶 7万9738円
2mg0.05mL1筒 6万9894円
補正加算等:なし
アイリーアのバイオシミラー(BS)として2番手で承認されたもの。ただ、1番手で承認されたグローバルレギュラトリーパートナーズ社のアイリーアBSは薬価未収載のため、今回の富士製薬のアイリーアBSが最初に発売される製品となる見通し。
アイリーアBSの薬価は、バイアル製剤は対先発の68%(先発品薬価11万7440円)、キット製剤は63%(同11万484円)となる。BSの薬価は、先行バイオ医薬品の薬価から新薬創出等加算分を引いた額の70%を基本に算定される。
▽アウィクリ注フレックスタッチ総量700単位(インスリン イコデク(遺伝子組換え)、ノボ ノルディスク ファーマ)
薬効分類:注249(その他のホルモン剤(抗ホルモン剤を含む))
効能・効果:インスリン療法が適応となる糖尿病
薬価:700単位1キット 3809円
補正加算等:費用対効果評価(H5)
販売中の総量300単位に今回、総量700単位を追加する。販売名については、医療用医薬品の販売名の取り扱いに関する厚労省通知に従い検討したが、本製剤2規格の有効成分濃度は700単位/mLで同じとなるため、販売名に「総量300単位」及び「総量700単位」を付記して差別化し、適正使用を確保した。
総量300単位は費用対効果評価(H1)のため、総量700単位は費用対効果評価(H5)の対象になる。
▽クリースビータ皮下注10mgシリンジ、同20mgシリンジ、同30mgシリンジ(ブロスマブ(遺伝子組換え)、協和キリン)
薬効分類:注399(他に分類されない代謝性医薬品)
効能・効果:FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症
薬価:
10mg0.33mL1筒 30万5043円
20mg0.67mL1筒 60万8836円
30mg1mL1筒 91万2366円
販売中のバイアル製剤に今回、シリンジ製剤を追加する。在宅自己注射の際、患者や家族が薬剤調製する必要がないため、バイアル製剤に比べ、投与時の負担軽減が期待される。
▽ルミセフ皮下注210mgペン(ブロダルマブ(遺伝子組換え)、協和キリン)
薬効分類:注399(他に分類されない代謝性医薬品)
効能・効果:既存治療で効果不十分な下記疾患。尋常性乾癬、乾癬性関節炎、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、掌蹠膿疱症。
薬価:210mg1.5mL1キット 7万4972円
補正加算等:なし
販売中のシリンジ製剤に今回、オートインジェクター製剤(ペン製剤)を追加する。患者の自己投与における安全性及び利便性の向上を目的に開発された。
▽ビロイ点滴静注用300mg(ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え)、アステラス製薬)
薬効分類:注429(その他の腫瘍用薬)
効能・効果:CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん
薬価:300mg1瓶 18万3554円
補正加算等:費用対効果評価(H5)
販売中の100mg製剤に今回、高含量製剤として300mg製剤を追加する。薬剤投与時の調剤の負担軽減を期待する。
100mg製剤は11月5日の中医協総会で、費用対効果評価に基づき、26年2月1日付で薬価を4.3%引き下げることが決まった。厚労省によると、今回収載する300mg製剤の薬価は、100mg製剤の費用対効果評価に基づく薬価引き下げを反映して算定された。なお、26年2月1日付での薬価引下げは100mg製剤のみ適用される。
▽タクザイロ皮下注300mgペン(ラナデルマブ(遺伝子組換え)、武田薬品)
薬効分類:注449(その他のアレルギー用薬)
効能・効果:遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制
薬価:300mg2mL1キット 128万8729円
補正加算等:なし
販売中のシリンジ製剤に今回、ペン製剤が追加される。ペン製剤により、手技の簡便さを求める声などシリンジ製剤では満たされていなかったニーズに対応できるようになり、HAE患者の個々のニーズへの貢献が期待される。
▽デュピクセント皮下注200mgペン(デュピルマブ(遺伝子組換え)、サノフィ)
薬効分類:注449(その他のアレルギー用薬)
効能・効果:既存治療で効果不十分な下記皮膚疾患。アトピー性皮膚炎注、特発性の慢性蕁麻疹
薬価:200mg1.14mL1キット 3万9706円
補正加算等:なし
300mg製剤ではシリンジ製剤とペン製剤が販売されているが、200mg製剤はシリンジ製剤しかなかった。ペン製剤は注入ボタンがなく、皮膚に押しあてることで注射が可能。
▽トシリズマブBS点滴静注80mg「CT」、同200mg「CT」、同400mg「CT」(トシリズマブ(遺伝子組換え)[トシリズマブ後続1]、セルトリオン・ヘルスケア・ジャパン)
薬効分類:注639(その他の生物学的製剤)
効能・効果:○既存治療で効果不十分な下記疾患。関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)、多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎、全身型若年性特発性関節炎 ○キャッスルマン病に伴う諸症状及び検査所見(C反応性タンパク高値、フィブリノーゲン高値、赤血球沈降速度亢進、ヘモグロビン低値、アルブミン低値、全身倦怠感)の改善。ただし、リンパ節の摘除が適応とならない患者に限る。○悪性腫瘍治療に伴うサイトカイン放出症候群。
薬価:
80mg4mL1瓶 6687円
200mg10mL1瓶 1万6717円
400mg20mL1瓶 3万3434円
補正加算等:なし
アクテムラで初めてのバイオシミラー(BS)。アクテムラBSの薬価は、80mg製剤は対先発品の65%、200mg製剤は同70%、400mg製剤は同65%――。BSの薬価は、先行バイオ医薬品の薬価から新薬創出等加算分を引いた額の70%を基本に算定されるため。
セルトリオンは9月19日にアクテムラBSとして5規格の承認を取得したが、今回収載されるのは点滴静注製剤の3規格(80mg、200mg、400mg)のみで、シリンジ製剤とオートインジェクター製剤は収載されない。
▽ヒフデュラ配合皮下注シリンジ(エフガルチギモドアルファ(遺伝子組換え)/ボルヒアルロニダーゼアルファ(遺伝子組換え)、アルジェニクスジャパン)
薬効分類:注639(その他の生物学的製剤)
効能・効果:全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎
薬価:5mL1筒 66万5026円
補正加算等:市場性加算(I)(A=10%)
販売中のバイアル製剤に今回、プレフィルドシリンジ製剤を追加する。薬液調製手順の簡略化により、在宅での自己注射や医療機関での投与の利便性向上が期待される。シリンジ製剤の薬価はバイアル製剤(60万4569円)に比べ10%高く算定された。
厚労省は、市場性加算(I)(A=10%)が付いた理由について、「シリンジ製剤の収載希望の際に、バイアル製剤にはない、さらにオーファン指定を受けた効能を追加した収載希望だった。オーファン指定の効能を持っているということで市場性加算(I)(A=10%)の適用を受けた」と説明している。オーファン指定の効能・効果は慢性炎症性脱髄性多発根神経炎となる。
▽リスティーゴ皮下注420mg(ロザノリキシズマブ(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン)
薬効分類:注639(その他の生物学的製剤)
効能・効果:全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)
薬価:420mg3mL1瓶 53万4588円
補正加算等:なし
全ての体重区分の投与をバイアル単位で完了できるようにするため、既に上市済みの2mLバイアル製剤に加えて3mLバイアル製剤を開発した。販売中のものは、リスティーゴ皮下注280mg2mL。